第66話 ゾッとした話

 家事審判の理不尽さに徹底抗戦していた翌年の春の話。その頃には、もう親戚も知る事態になっていた。

 叔母が結婚から五年も経って教えてくれた話。結婚式場で、相手方の親戚の一人から言われたそうだ。

「今、結婚をやめられたら、傷がつかずに済むのですが…」

 これを親から口伝えに聞いた時、心の底からゾッとした。

 家庭での様子、裁判での嘘まみれの申立書、すべての謎が解けた気がした。よくできたホラー映画のようだ。

 向こうの親戚は、彼女がどういう人間か十分に分かっていたし、彼女は成長過程で演技を身につけただけで、幼少期には親戚に分かるほど精神的に壊れた姿をさらしていたのだろう。

 叔母は「お祝いの席で何を言ってるんだろう」と意味が分かず、うちに伝えることはなかった。

 これが見抜けないぐらい、裁判官も調査官も素人だった。

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