第18話 本当に娘が可愛かったの?

 娘の入浴と食事の世話は、私の日課だった。

 夜、私が娘の食事を済ませてから、仕事に出かけることもあったが、そういう日は、妻が入浴と寝かしつけをする。そのたびに、妻は「大変や」と愚痴を言い、妻の実家から母親を呼んで手伝ってもらうことも多かった。


 私の両親が買ってくれたチャイルドシートは、妻が自分で使い勝手を見て選んだはずなのに、なぜか気に入らなかったようだ。

 娘を車から降ろす時、妻はシートを回転させようとして、「これは使いにくいわ!」と愚痴りながら、何度も前後に叩きつけるようにしてシートを動かす。そのたびに、シートの衝撃を受けながら、娘の体も前後に大きく揺れた。

 見ていてあまりに娘がかわいそうで、妻と代わった。つまみをしっかりとつかんで、座面を後ろに押しやると、チャイルドシートは簡単に回転した。


 私が二階の寝室で娘を寝かせようとしていた時、娘が転がってベッドから落ちた。

 泣き出した娘を抱っこすると、すぐに下から妻が駆け上がってきた。

「何してるのっ!」

 ものすごい剣幕で、私に怒鳴り声を上げた。

 娘は泣き止み、叱責されている私以上に、怖がって体を固くして私にしがみついていた。


 色鉛筆やクレヨンで遊んで、娘が床や壁に少しでも色をつけると、妻は「こんなところに書いたらダメよ」と注意して、すぐに娘の手の届かないところに隠した。

 ちょっとぐらいの汚れなんて気にすることもないし、きれいに拭けば済むことだし、楽しく遊んでいる娘の表情を見られるのは、汚れなんか気にならないくらい最高の体験だったけど、妻にとっては自分が娘と遊んでやることより、遊び道具を隠すほうが楽だったんだろうな。


 ねえ、それって、本当に娘が可愛かったの?

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