黒幕! ハロー!

「生体強化……解除?」


 検査項目の一覧が真っ白な文字で羅列されてあるのだが、その赤文字の一列だけが否応無く目に入ってしまう。



〈生体強化〉

 クレアの場合、探索者候補生の段階では他の候補生同様生体強化は受けてはいなかったのだが、その後探索部を去り情報部に入った段階で本人の承諾を得た上で生体強化を施された。


 人類は生まれて直ぐに探索者となりうる可能性がある双子以外の者は漏れなく「生体強化処置」が施される。

 これは全身を構成している全細胞内のDNAに免疫力や治癒力、さらにDNA自体の異常に対する復元力の劇的な向上と強化を目的とした追加情報を組み込み、病気や怪我になりにくい、またなったとしても耐久力や回復が早いといった作用が働くように個々の身体的特性を考慮の上、改変されてあった。


 この処置は一部を除く全てのDNAを書き換えることにより、新陳代謝による細胞分裂の際にも新しく作られるDNAにも同じ様に受け継がれ、一生涯その効力を失うことはない。


 但し注意点として、生体強化は個人に合わせて調整して改変される特性上、基本的には一代限りの改変で終わる様、設計されているので卵子や精子等、子孫を残す重要な細胞にだけは手を加えることはせず、その部分だけは生まれたままの状態で残すのが決まりであった。


 さらに諸事情により、生体強化は改変前の状態、つまり生まれ出でた状態に戻すことは考慮されてはおらず、その技術も存在はしてはいなかった。


 この程度の事は学校の授業でも教えられており、老若男女問わず自らのDNAが改変されていることは誰でも知っていることなのだ。


 勿論、自分達は対象外なのだが予備知識としてここにいる探索者達も一般市民同様に教えられていた。


 なので「解除」との表記の意味する事が直ぐには理解出来なかった。


 因みに何故探索者に対し生体強化が行われないのか? なのだが、表向きには探索艦と繋がりリンクが出来なくなるから禁止、とされていたが、本当のところはとある「贄」研究の段階で、DNAを改変した者はエネルギースポットで「力」を蓄えることが出来ず適正者としての資格を満たせないことが判明していた。


 また洗脳など精神支配を受けている者はさらに状況が悪化し、適正事態が失われることなどがかなり初期の段階で判明していたからだ。



「こんなことあり得るんだ! ならクレアの今の状態って我々と同じってこと?」

「そう……なるわね」

「…………」


「なる程……そういう事か……あと、脳内チップにも手が加えられた痕跡が見受けられますね」


 自前のモニターを細めた目で読み込むアリス。相変わらず目まぐるしい視線の動きだ。


「改造ってことよね」

「多分……ただこれ以上の詳細はここの設備ではなんとも……」

「それならノアが改造とミアが若干プログラム弄ってるかもしれない」

「あの二人がですか?」

「そう。あっ、あと……天探女主任も」

「彼女が何を?」

「さっき医療バイオロイドが君とクレアにしたことと同じことを以前クレアに」


「……なるほど。という事は……なるほど」


 先程から一人納得しまくるアリス。


「なにが「なるほど」なの?」

「え? いえいえ何でもありません。ふふふ」

「…………」


 なんやこいつ、という眼差しを向けた。


「いえね、各々おのおの何を目的に動いているのかが見えてきたもので」


「目的?」

「はい。サラ主任、天探女さん、レベッカ、赤髪の姉妹情報部のお嬢さん方、最後に椿さん。あと各政府機関もですが。皆それぞれ動機はバラバラのようですが最終目標は多分、だと思いますよ?」

「同じ……」

「ホントこちらの世界は大変ですよね。関係者が一堂に会してみんな本音で話し合えばこんなゴタゴタや時間を掛けずに済むと思うんですけどね〜」


 やれやれといった言い方だが少しだけ楽しそうにも見えた。


「それが出来ないから大変なのよ」


 菜緒がポツリと呟く。


「そうですね。まあ皆さんには不謹慎に聞こえるかもしれませんがこちらに来て200年、やっと面白くなってきました……ってとこかな?」

「君はホント他人事よね」

「私ですか? 私は基本的には傍観者余所者だし、こちら側に来る前から覚悟は出来ていますから。それにここまで事態が動いてきたらどちらにどう転ぼうとも姉に再会出来るのは間違いないし、それももう目前だし。皆さんの頑張り次第で感動の再会が更に早まるというものです♪」


「そう言えばお姉さんの居場所は分からないの?」

「さあどこでしょうかね。生きているのは間違いないので、私はあまり心配はしていませんけどね」

「そう……」

「でもやっぱりもう一回検査しておいて良かったです。嬉しい話も聞けたし、クレアさん姉妹の体調不良の原因も判明したから♪」

「へ? 分かったの?」

「はい♡」

「原因? 一体なんなの?」


「今回の黒幕は天探女さんですね」


「彼女とは知り合い? 素性は知ってるの?」


 エマの問い対し急に真面目な顔つきに変わった。


「……逆にお聞きします。何故彼女の素性を知りたいのですか?」


「え?」


「何故知りたいのですか? 知ってどうするんです?」


「…………」言葉に詰まるエマ


 アリスはエマから菜緒達に向き直り話しを続けた。


「菜緒さんと菜奈さんにお聞きします。貴方達は自分の上司の素性を知ったら、彼女への見方は変わってしまうものなのですか?」


「分からないけど……あの人の場合は多分変わらない」

「というか……驚かない」


「エマさん、今のサラ主任は貴方にとってどんな存在なんですか?」


「…………」


「誰にでも過去は必ず存在します。そしてその過去によって今の自分が成り立っている筈。


 貴方は過去に何があったかによって今の人格まで否定するような方なのですか?


 貴方は、今の彼女たちは尊敬に値しない人物に見えますか?


 サラ主任がとてつもない過去の持ち主だったとして、その過去を知ってしまった時、今まで培ってきた彼女への信頼は無くなってしまうのですか?」


「ううん。そんなことないと思う」


「ならサラ主任ではなく天探女さんなら?」


「…………」


「確かに彼女達はその性格上、貴方達に自らの事を多くは語りたがらないでしょう。その事が逆に皆さんが不安や疑心暗鬼を抱く原因になってしまっているのは悲しい事なのかもしれません。でも口には出しませんが彼女達の思いは結果的には今でも変わらず「貴方達を助けたい」の一点に絞られています。ですから今、貴方達の目の前にいる彼女達を信じてあげて下さい」


「……私達を守る?」


「はい。別世界人の私が言うのは可笑しいでしょうが彼女達は能力だけでなく、人としてとても素晴らしい方々です。もし彼女達に「贄」としての適正が備わっていたのならば、躊躇わずこちらの世界の代表として「贄」になっていたでしょう」


「サラもそうだけど天探女主任が何故?私達の為に?」


「その問いに答える前に彼女達のことを信じてあげることは出来ますか?決して興味本位で聞いてきたとかそういう訳では有りませんよね?」


 エマ、菜緒、菜奈、クレアが頷く。


 それを見てアリスも頷いた。


「天探女さんは……貴方達を生み出す実験の責任者だった人」


「「「「!」」」」四人が固まる


「彼女はレベッカの研究所にいち研究者として潜入していた情報部所属の研究者の一人。その時に「ある者の情報」に偶然触れてしまったことにより、彼女の運命が大きく変わってしまうことに」

「情報?」

「はい。「その者の為」に己の信条を曲げてまで貴方達を生み出す実験を決意し研究を開始、僅か数年で目標を達成するに至りました。でも成功するという事は、同時に過去の失敗の修正を何の責任も無い貴方達に託すと言う事に他ならない。こんな重荷を何も知らない、何の責任も無い子供達に背をわせなければならない。万が一、失敗して貴方達が不幸にでもなったら何と言っても詫びれば良いのか、とずっと悩んでいたそうです。結果、元々純粋で優しすぎる性格が災いし終いには自責の念に押し潰されて人格が崩壊し、結果を見ずにあの研究所から逃げ出すに至ってしまいましたね」

「…………」

「ただ逃亡後はちゃっかりと情報部に戻っていたみたいで、後に探索部施設で偶然見かけた時には性格がガラリと変わっていましたね」

「変わったと言うのは、今の状態? 昔は違うと?」


 アリスに食いつく菜緒。


「彼女が幹部候補生時代に会ったのが最後なので、今の状態? との問いには答えられませんね。ですがあの時は誰かまでは分かりませんでしたが直ぐそばに「想い人」がいたようで、その人にかなりな様子でした。多分その方の影響で性格が変われたのでしょう。あの引っ込み思案だった性格をそこまで変えさせた人。一体どんな方なんですかね」


「…………」


 思い人に心当たりがある四人が再度固まる。


「その主任がね、ミアとノアとの関係、教えてくれたんだけど……」

「どの様な事ですか?」


「……、だって」


「「…………」」

「ん? どしたの二人とも?」

「知ってる」

「へ?」

「昔一緒に……暮らしていたから」

「あ、そう」


「そんな事までエマさんに話していましたか……確かに彼女の遺伝子を分け与えているので「子」には違いありませんね」

「遺伝子……そう言うことか」

「そのミアさんとノアさんも貴方達への懺悔の念から生み出された贈り物プレゼント

贈り物プレゼント?」

「はい。貴方達だけでは運命に抗うだけの力が足りないから。天探女さんはあなた達を生み出した技術を使い、自分の分身となる子を生み出し、その子に己の能力を引き継がせ、研究所に蓄積されていたデーターを元に英才教育を施した上で貴方達の未来を託した、というところですかね」

「未来……」

「彼女達は覚醒者にはなれませんでしたが、流石天探女さんが生み出したこちらの世界での最高傑作だけあって探索者にはなれましたね」

「そう……だったの」


 淡々と語るアリス。


 逆に話しが進むにつれ、元気が無くなる菜緒。


「因みにクレアさん。情報部所属でもある貴方は今の話、上層部からどこまで聞かされていました?」


 菜奈、菜緒、エマの順にクレアに視線が向けられた。


「…………」


 俯いて黙り込むクレア。


「貴方もエマさんや菜緒さん達と同様、生まれた時からこの運命の流れの本流にいます。そして今日の出来事は天探女さんも、そして情報部の人達も当然折り込み済みな筈。その証拠に貴方はエマさん姉妹に続き、まさに今「覚醒」を成し遂げるに至りました。傍観者余所者である私から貴方に言えることは殆ど有りませんが、ここからは誰彼の指示や思惑に流されるのではなく貴方の中に存在している「思い」に従って行動することをお勧めします。それが「贄」として己の力を高める……」

「え? ……今覚醒って?」

「……はい、言いましたが?」

「クレアが……覚醒⁇」

「はい」

「ど、どうして⁇ どういうこと?」

「どうしてって? 元々適性があったからこそ候補生にまで……」

「そうじゃなくていつ?」

「つい先程、ですね」

「え? え?」

「多分ですが、椿さんが生体強化解除されたこのタイミングを見計らって覚醒をさせたのでしょう」

「ウソ……でしょ? 何で分かったの?」

「椿さんとクレアさんは……ってエマさんには覚醒したかどうかの見分けが付かないのですか?」

「え? 見分けって⁇ どうやって?」

「容姿も含め雰囲気オーラが変わっていたからかなり期待しちゃいましたけど……まだ力が安定していない様ですね、というかエマさん、もっと力を高めないと、この先……」


「……あっ!」


「ど、どうしたのクレア⁈」

「思い出した……」

「何を?」

「気を失っている時……誰かに呼ばれてた」

「誰?」

「分からない。ただ「起きて」って言ってた。だから私はずっとエマが呼んでくれていたのかって思ってたけど」

「それって椿? たったそれだけで覚醒しちゃうものなの?」

「そんなものですよ。私なんかある朝突然……」


「私達にも可能性が?」


 菜緒が話に割り込んできた。


「なりたいのですか?」

「…………」

「素晴らしい心意気です。でも残念ですが今の段階では無理だと思います」

「理由は?」

「理由? 有り体に言えば「覚醒」するための「条件が足りていない」から」

「……足りない?」

「はい。裏技で強引に貴方達姉妹を覚醒させることも出来るのですが、今の私には力はありませんので……」

「そ……う」


 複雑な表情の菜緒。


「ただ椿さんはその「足りない条件」の穴を埋める事が出来る妙案の開発に成功したみたいですけど」


「妙案?」


「はい。でも詳細までは。最近は彼女から距離を置いていたので。でもレベッカから聞いた話では比較的簡単で口からの摂取、としか」


「接種? 食べるってこと? ……そうだ、一つ重要な事を確認しときたいんだけど」

「はい、何でしょうか?」

「アルかレベッカかどちらかは分からないんだけど、君がこちらの世界に来た直後の記憶記録を見たことがあってね」

「……はい」

「その時の容姿が今とどうしても違うんだな」

「……成長した、という事にしておきましょうね〜」

「それでは説明がつかない」

「お色気レベルが上がった‼︎」

「そこは全く変化なし」

「ううう……気のせいです」

「何で違うの?」


「うう〜今回は粘りますね~。仕方ない、ここだけの秘密に出来ますか?」


 三人に目配せをし確認を取ると、皆頷いた。


「これは向こう側の技術で、私しか知らないし使えるのは私だけなんです」


 顔は笑ってはいるが目は真剣だ。


「もう一度だけ確認をします。絶対に他言無用ですよ?もし話したらレベル5権限行使して、あんなことやこんなこと、しちゃいますよ?」


 全員頷く。若干二名は顔を赤らめながら。


「ではお見せしますね」


 と言うと和かに笑った。


「…………」


 変わらず和かな笑みを振り撒くアリス。


「…………?」


 何の変化も無く躊躇い始める四人。


 ふとエマ達四人の肩が同時に後ろから叩かれたので一斉に振り向くと、薄暗い背後に服装は皆違うが今まで話していたアリスがそこに立っていたのだ。


「もしかして分身体バイオロイド⁈」


 菜緒が一番初めに声を上げた。


「ある意味正解です」


 皆、各々のそばにいるアリスと座っているアリスとを見比べるが服装以外に些細な違いすらも見つけられなかった。


 つまり見た目は全く同じに見えた。


「どれが本物に見えますぅ〜?」

 エマの後ろのアリスが惚け顔で問い掛けた。


「皆さんに見分けがつきますかね?」

 クレアの後ろのアリスが軽い挑発をしてきた。


「因みに私が本人なんですよ!」

 菜緒の後ろのアリスが元気よく手を上げた。


「みんな偽物♪ 私が本物です♡」

 菜奈の後ろのアリスが微笑んだ。


「どう言うこと?」困惑し出すエマ

「菜奈、分かる?」

「全員AIが無い? ……分からない」

「何となくだけど、全員本物?」


「素晴らしい! クレアさん正解です!」


 クレアに対し拍手喝采を送るアリス。


「私もそこにいる私達も全員「私」です♪」


「「「「?」」」」

「探索者の皆さんは「繋がり」の事は当然ですがご存知ですよ〜ね?」

「…………」

「返事がありませんね〜知らないなら一から先生が教えて……」

「知ってる」


「返事は早くしましょうね〜。では次の質問。「繋がり」は誰が出来る能力ですか〜」


 菜奈が手を上げた。


「はい、菜奈君、どうぞ」

「双子の……探索者」


「素晴らしい、正解! それでは「繋がり」とはどの様なものでしょうか?」


 再度菜奈が手を上げた。


「はい、またまた菜奈君!」

「テレパシーみたいな……特殊能力? 的な?」


「大正解‼︎ 菜奈君すごいですね〜。他の生徒君は目を開けたまま居眠りでもしているんですかね〜?それでは最後の質問で〜す。レベッカは〜どの様な方法で〜探索艦のAIに〜干渉しているのでしょ〜か⁈」


 完全に調子に乗ってしまったようだ


 最後の質問に四人が顔を寄せ合い小声で相談を始めた。


「……そういえば」

「どうやってるの? 繋がりリンク?でも探索者ではないよ?」

「確か全ての艦に干渉、とか言ってたような」

「実は全艦に姉妹が……隠れている?」


「ふぁいなるあんさー?」余裕の表情のアリス


「でもアルテミスにしか現れていないわよ?」

「本当はアルちゃんに本人がコッソリ隠れてたりして!」

「いやいやそれ怖いから‼︎」

「球体モニターから……ニョキッと顔だけ出したりして」



「「「「ハローハジメマシテー」」」」



 背後のアリスが四人同時に肩越しから覗き込んできた。


「「「「いやーーーーーー‼︎」」」」大絶叫の嵐


「えーーと……みなさん?」戸惑うアリス


「で、答えは?」真顔に戻し冷静に聞き返すエマ


「へ? ……あーー答えですね? 答えは……また来週!」


 決めポーズをした。


「「「「…………」」」」ジト目で固まる四人


「…………」決めポーズのまま汗を垂らし始めたアリス


「もしかして……ショウワな人?」


「ううう……私だけ仲間外れ……」


「で、結局どーゆーこと?」

「はぁ〜〜」大きな溜息をついた

「なには〜〜って! アリスのクセにチョー生意気!」

「何、子供みたいな事いってるんだか……」

「212歳と比べたらどうせ子供ですよーだ!」

「ムムム、本当は心も体もピチピチの14歳ですぅーー! 体だけ大人の泣き虫なお子ちゃまに言われたくありませんよーーだ!」

「う、うるさい‼︎ このぺったんこが‼︎」

「なっ! エマさんだってぺったんこじゃないですか‼︎」

「なにを‼︎」

「なんです⁉︎」


「「ふん!」」


「まあまあ……二人とも」菜緒が止めに入った



「「デカイ奴らは黙らっしゃい!」」



「「「…………」」」言い返せない三人


「お姉様……起きてらっしゃったのですか?」

「寝ないの? なの?」


 喧しく騒いでいたせいか、ランとソニアが眠たそうな顔で目を擦りながら寝室から出てきた。


 因みに寝室の扉だが、開けたのは勿論あのメイドさんだ。


「答えは宿題とします」


 アリスが取り敢えずこの話はお終い、といった風に打ち切った。


 お陰で冷静さを取り戻しラン達を見たついでに周りを見回すと、後ろにいた筈の四人のアリスはいつの間にか消えており、残っているのは最初からいた執事さんとメイドさん達のみとなっていた。


「アリス達」を探す挙動不審なエマにランとソニアが近づいて行く。

 エマは二人にクレアとレイアの生体強化解除の件を簡単に説明し、今日はもう寝る事とした。


「そうでしたか! クレアさんもやっと仲間になれましたね!」

「でも何んで今なの?」

「アリスさんは……知っている?」

「ふふふ、ポジティブに行きましょう!」

「レイアの体にも私と同じ事が起きてるのかな?」

「はい、それは間違いなく。彼女はクレアさんの脳内チップから生体強化解除の命令を受け取ったのでしょう」

「私が原因?」

「いえ。原因とかではなく、その様に仕組まれていた、と考えて下さい」

天探女主任うちの上司に?」

「はい」

「帰ったら……お仕置き……だべ〜」

「「「ははは、似てる!」」」


 大笑いのエマ、クレア、菜緒。


 一体何に?


「皆さん仲が良いのですね」


 ポツリと呟くアリス。


「仲間だからね」

「仲間……ですか?」

「……何顔で言ってるんだ君は?」

「はい?」

「君も仲間でしょ?」

「そうなのでしょうか?」

「全く……こりゃ分からせる必要があるかね?」


 エマはニヤケながら全員に目配せをする。


「?」


「それ、皆のもの、生意気な小娘に己の立場を分からせるのじゃーー!」


「「「「「おーー!」」」」」


「へ? あ、待っ、何を……いや〜〜〜〜ん♡」


「…………」


「はぁはぁ……散々泣かしてくれたお礼よ!」


「えへえへ……お願いだからもっと♡」


 幸せそうに涎を垂らしながらエマ達に手を伸ばし懇願していた。


「しまった!こいつは真性だったんだ!」


 どうやら今回は「思い」を菜緒達には使わず、一人で楽しんだようだ……

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