第33話 天敵?


 三十分前となりクレアを連れて更衣室へ。

 着くとノアとシャーリーとランの三人が着替えていた。

 クレアには私のブースに案内し、脱衣所とシャワーの使い方を簡潔に教える。

 棚にはアルテミスに作成を依頼しておいたクレアの宇宙服も既に届いていた。

 因みにクレアに宇宙服を着せるのは「保険」のためだ。


 今後何が起こるか分からないし、私達と一緒にいればクレア自身も巻き込まれる可能性は充分にある。

 その時に探索部特製の宇宙服を着ていれば生存確率が跳ね上がる。


「宇宙服の着方は分かる?」

「エマが着替えてるところを見たから多分大丈夫」


 ん? あの時は途中から顔を背けてなかったっけ?


 探索者用宇宙服に初めて触れたらしく、目を輝かせながら畳んであった宇宙服を広げてみせる。


「シャワー終えてから着てね〜」


 そのまま隣のエリーのブースへと移動し自分も着替える。

 隣からは、どんな顔して着替えているのかが容易に想像がつく「呟き声」が聞こえてきた。

 その声を聞き先程のアルテミスとのやり取りを思い出す。


 彼女の頭の中にあるのは私達と同じ「特別」なチップ。


 人類は産まれた時に漏れなくマイクロチップを脳内に埋め込む処置を受ける。

 そのチップがどの時期に「特別なチップ」と入れ替えられるのかは私は知らないが、遅くとも候補生になる前までには入れ替えが終わっていないと訓練にならない。


 そのチップは必須アイテムであり、探索艦同様に厳格に管理されている。

 どこまで厳格か、一つの例を挙げると探索艦に乗らない・乗れなくなった、所謂「引退」した時点でサラを含めた探索部職員達や一般市民と同じ「通常のチップ」に強制入れ替えさせられるほどに。

 これは候補生や元候補生であっても、例え探索部に残る選択をしたとしても拒否は叶わない。

 これらのことに「例外」はないそうだ。


 今のクレアの様子から、候補生の段階で探索者への夢を諦めざるを得なかった何かが起きたのではないかとおもわれさが、諦めたのなら遅延なく頭のチップは回収されていた筈。

 さらに探索部を去るなら記憶操作を受け、機密に関する部分は消去されると聞いている。


 情報部員であるクレアがそれらの制約を受けずに何で「この場」にいられるのか……


 情報部とはクレア以外の接点が無く、さらに情報部と探索部の関係を知らない私からしてみればこの現状は謎だらけ。

 ただサラの「情報部も味な真似を」との発言から我々には何かしらのメリットを考慮しての事ではないかと思われる。


 そして「コイツは信用できる」との発言。

 まだ疑問は残るがサラを信じて私も前向きに考えてみようと思う。





 宇宙服に着替えて奥にあるドレッサーエリアへ行き髪を結き直す。

 そうこうしているうちに皆が来て隣に座り髪や顔の手入れを始めた。



 ──ん? なんか足んない? ……あ、クレアか。まだ着替え終わってないのね。



 全員が準備を終えてもまだブースから出てこない。

 心配になり皆で覗きに行くと着替え終えていたのだが……その姿と仕草に目が釘付けとなる。


 な、な、なんてこった!


 後ろで「キャッ」とか「うわ〜」とかの声が聞こえる。

 そこには宇宙服を着たクレアが先日のプールと同じく、体をモジモジさせながら恥ずかしがっていた。

 暫くその光景に我を忘れて見入ってしまう。


 やばい! ヤバイ! 間違えた! 宇宙服の色!

 クレアに着せたら訳の分からん色気が半端無い!

 だがこれが不思議とイヤらしい感じがしない、むしろ癒し感さえある。

 同性である私でさえ魅入ってしまった。

 こんな事始めてだわさ!


 本人は私達が抱いた感想とは違うようで宇宙服を着れた嬉しさと、密着したライン丸出しの慣れない恥ずかしさの狭間で戸惑っている様子だった。


 考えてみたら「Bエリアの探索者」で出るとこ出て、引っ込んでるところは引っ込んでいる、ここまでバランスが取れたスタイルの良い者はいない。

 いや、最高峰の持ち主もいるにはいるが、アイツは探索者ではないので宇宙服は着ないので対象外。

 それ以外で近いのは隣にいるマキ姉妹だが、クビレの部分はどう足掻いてもクレアには及ばない。


 このままだと集中出来ずに作戦に支障が出かねないので、有無を言わせず脱がせて紫色へと変えさせた。

 今度はクールな大人って感じになり、妙な色気もしなくなる。


「魔性の女」てのは本当にいたのね……

 やっぱり服は適当に決めたら駄目だ!


 クレアは宇宙服の基本的な扱いは直ぐに覚えた。

 出発前のドック内で反重力シューズの操作の練習も行う。

 初めはアルテミスに補助をさせたが、直ぐに曲芸まで出来る様になった。

 それと脳内に残っているナノマイクロチップを改造出来ないか、後でノアに聞いてみよう。

 もし再使用可なら彼女の立ち位置がかなり変わるかもしれない。


 クレアの搭乗位置だが、球体内コックピットを楕円形に細長くし、私から見て下方にシートを用意、座って貰おうと準備したのに「いらない」と断られた。

 ならどうしたい? と聞いてみたら私と同じで浮いているのがいいって。

 考えてみたら、球体内コックピットでただ「浮いている」のは私達姉妹だけかもしれない。

 みんな何かしらに座っているか体を固定しているかも。

 まあ暫くは様子見ということで。



 ──そうだ! 機会が有ったら模様替えしてみよう!





 出発準備を終えた四艦は横並びで待機中。


「ノア、準備出来た?」

『……おう。行く、ぞ』

「ちょっと待って! これをアルテミスに渡して」


 クレアが小さなメモリーチップを渡してくる。


「これは最優先任務の指令書が入っているの。有人惑星に着いた時にそこの情報部に渡して欲しいの。一応、情報部全体でエマの護衛任務の件は共有されている筈だけど、いつ何処に現れるかまでは分からないでしょ?」


 そりゃそうね。


「……アルテミスに入れる前にこっちに送って、ちょ。一応、ウイルス確認する、ぞ?」

「そうして。私も渡されただけで中は見ていないから」


 エマが受け取り、アルテミスに渡す。

 アルテミスは読み込み専用の防疫隔離エリアを作成。

 読み込む前に予め数億に及ぶワクチンを展開してから防疫隔離にて読み込みを開始。接続したアシ2号に読み込んだプログラムをランダムで送信。

 同様のワクチンを展開してして待ち構えていたアシ2号は送られてきたデータを更に分解し、ランダム配列に切り替えてから解析を開始。

 チェックを終えたものから一度組み直し「元のデータ」と照合をしてゆく。


 この時点でウイルスチェックに引っ掛かったプログラムは隔離エリアへと送られミア特製の「功性」プログラム達に攻撃されツッコまれ「丸裸」にされる。

 この時点で「差」が見られなかったモノからアルテミスに戻し、さらに身も心も丸裸にされたプログラムも送られて統合されて終了となる。


 アルテミスはデータが戻るまでは独立した隔離エリアでの読み込みのみ。なので読み込みの時点で感染しても即破棄可能なので損害は限定的。


 一方、アシ2号は解析と分析担当なのでウイルスに感染する確率が非常に高い。一応ミアが「神対策」を立てているとはいえ、彼女が出会ったことの無い未知のウイルスが混入していないとも限らない。

 感染した場合の最終抵抗手段として、傍で見守るアルテミスがアシ2号の隔離エリアの「物理破壊命令」を下して損害を最小限に抑える役割を帯びている。


 因みに「物理破壊」とは隔離エリアの「自爆」を指す。


 尚、この作業はあくまでもウイルス検出と消去が目的なので、記録されている「内容」に関しては調べてはいない。なので解析したからと言って「何が記録されているのか」はまではチェックしていない。


 今回は十秒も掛からず全工程は終了。特に問題なく終わったようだ。


「……アシ2号、よ。破壊されなくてよかった、の〜」

「ウウウ……先生……怖カッタデス……」


 AIが泣いている。


「アハハ……それで向こうに着いたら真っ先に「情報部宛」に送ってね。繋がったら私が交渉するから」

「了解。他になければ出発するぞ」

『……いいよ〜ん』

『こちらはいつでもOKです!』

『お姉様、暫しのお別れですね!』


 三人共良さそうだ。あとクレアは……私を見て頷いている。

 因みにクレアは私の腕に立派な山脈を押し付けてしがみついている状態。



 ──怖いならシート出すけど本人がいいって言ってるしな……



 自分にはない感触を楽しみつつクレアに笑顔で頷き安心させる。それから最後に留守番役を見る。


「マキ、あとはよろしくね。ここ数日はあの不明艦は来てないけど、もし来たら防衛は基地AIが勝手にやってくれるからのんびりしてていいぞ」

『おう、大丈夫やから早よ行き』


 笑顔で手を振っている。何であんなに嬉しそうなんだろう?


「それじゃ今日もいいことあります様に……GO‼︎」





「はい、三件目到着。アル早速探査開始」

「了解です」


 0.5光秒の距離を保った二つの光がアイススケートのペアダンスを彷彿させる動きで星系内を華麗に、そして縦横無尽に動き回る。

 探査中は基本的に探索者はやる事が無い。なので三人は休憩タイムに入った。

 クレアもだいぶ慣れたようで、今では一緒に紅茶を飲みながら寛ぐくらいの余裕を見せている。これならもう気を使わなくていいだろう。

 紅茶は惑星ラングで買った「アッサム茶」を私はストレートで、クレアはミルクティーにして飲む。

 そしてノアもお土産で渡した煎茶を楽しんでいた。


 そのお茶だが、ノアに渡した夜に突然呼び出しがあった。

 パジャマ姿のノアに「どした?」と聞くと、渡した茶葉はとても貴重な「地球産」だったらしく入手困難な品との事。しかも品質をチェックしている第三者機関の証明書まで付属していたそうだ。

 その証明書を見せて貰うと、品質は和紙で「大和皇」の見事な「印」まで押されてあった。


「大和皇」とは誰もが知る「世界最古の元皇族」で、緑茶の鑑定・品評も行なっていることで有名。

 今では家臣や領土は持たないが、それこそ紅茶の「ロイヤルファミリー」と並び、教科書にも載るくらいに由緒正しい伝統ある「元王族」なのだ。


 その証明書だけでも相当な価値があるらしく、オークションに出せばたったの一枚で庭付きプールが変えるくらいの高値が付くらしいく、余程嬉しかったからか帰り際には「……素晴らしいプレゼントありがとう、だな!」と頬にキスまでされた。


 私としては喜んで貰えて何よりだ。



 さて、無人領域の探査は終了。次の目標は……

 モニターには本日三箇所目となる二重惑星が映っている。


 ……あれ? データと違うぜよ?

 何で人が住んでるの?

 座標は……間違えていないね。

 かなり昔に調査を終えている惑星だから入植しても何の問題もないんだろうけど……基地のデータ古いんじゃない?


 基地の基本データは情報部から探索部本部へ月一で送られ、その後に私達の手元に届く。

 今、手元にあるデータはDエリアから貰ったもの。なので最新の情報の筈。

 という事は本部に届く前の段階で誰かが情報収集をサボっていたのか、それとも「意図的」なものか。


 その辺りのご意見を現役情報部員にお聞きしたところ……私以上に「素」で驚いていた。

 彼女曰く、多分後者だろうと。

 何故ならこの星にもちゃんと情報部と星系AIが存在しているからだ。


 開発が進んでいる方の惑星は総人口がまだ五万人程度と少なく、陸地と海の割合が半々でさらに陸地の半分は未だに荒野。

 その荒野も所々で緑地化改良が始まっているので、この調子でいけば数年内には緑の惑星に生まれ変わるだろう。


 もう一方の惑星は分厚い雲に覆い尽くされており、自然環境はかなり厳しそう。

 この辺りの方針は中央政府に「任命」された地方行政府である「行政担当官」に決定権がある。

 つまりは厳しい環境は行政担当官が「決めた事」であり、中央政府もこの状態を「承知」している事になる。

 手元のデータでは穏やかな水惑星となっているので、何かしらの目的があってのことだろう。

 それこそ先程の「意図的」と関係があるのかもしれない。


 予想外の事態ではあったが探査は無事終了。結果は「シロ」で何も見付けられずに空振りに終わる。

 特段この星系に用事がある訳ではないので次の目標に移動しようとしたところにタイミングよく、地上の情報部から「クレア宛」に通信が入った。

 ここで「クレアの存在」をどうやって知ったのかだが、差異が気になったので情報を得ようとした際、星系AIではなく「情報部」のネットワークに接続した。それに関してクレア自らが「特務部少尉権限」を行使したので現地の情報部にクレアの存在が伝わったからだろう。


 通信の内容だが「調べて欲しいことがある」とのこと。

 しかも可能であれば、というか是非エマ達探索者にも同行願いたいとのご要望だった。


 三人で検討した結果、ちょっと早いが昼食を兼ねて惑星に降りることにした。

 人口五万人とはいえ、首都となる場所はしっかりと整備されているが、惑星全体で見ればまだ開発初期段階らしく衛星軌道上には宇宙港の姿も無く、会うには地上の空港に直接降りるしかない。

 仕方なし、と艦を一般的な輸送艦に偽装を施してから指示通りに地上の空港へと降りた。


 指定の空港は将来を見越してかかなり豪勢に作られてあったが、なにぶん人口が少ないので利用者はおらず、いるのは清掃とメンテナンスを行っているアンドロイドだけだった。


 着陸後、着替えてからロビーに向かうと広い空間に情報部の制服を着た女性が一人で立っていた。

 自己紹介によると彼女はこの星系担当のルーシー准尉と言い、ここに赴任して半年に満たないらしい。

 星系担当責任者となる情報部員は人口が十万人を超えたら自動的に少尉に昇進するとのことで、脇で聞いていたクレアもウンウンと頷いていた。


 出会った頃のクレアを彷彿させる「軽さ」で自己紹介を終えた後、昼食のために街に移動を願い出たが准尉に止められ、空港内のレストランへと誘導される。

 その際に、星系担当のルーシーにもエマに関する任務の通達は届いているので護衛するのは構わないが、この惑星の人口はまだ少なく駐留している情報部員は自分を含めて八名しか居らず、さらについ最近別の問題が発生したらしく、そちらに少ない人員を取られていて、警護に人手を回せないから可能な限り空港ここから外へは出ないで欲しいと言われた。


 クレアがその別の問題についてルーシーに尋ねたところ「果報は寝て待て」との返事が。


「それは情報部本部からの返答?」

「はい」

「ということは探索者絡み?」

「その通りです」

「だから引き留めたのね」

「お忙しい所申し訳ありません」


 クレアは納得したようだが私とノアには何が何だかサッパリ。

 説明を求めて情報部の二人に無言の視線を向けるとルーシーが説明をしてくれた。

 要約すれば以下の通り。


 <つい先日、主星の周りを正体不明の「物体」が高速で周回を開始。手が出せずに対処に困っていた>



 この様な案件が発生した場合、まず現状認識の為に情報部本部から調査部に「調査依頼」を出すが、今回は何故だか調査部は動かなかったらしい。

 その代わりに調査部から情報部に「ある返答」があったらしく、その返答の内容を検討した結果、情報部本部が下した決断は「」というもの。


 当然だが、ルーシー達現場には「上同士」の経緯やり取りの詳細は伝えられる訳もなく、飛び回っている物体を不安を抱えながら見守るしか無かったのだ。


 もし、万が一、あの物体が主星にちょっかいでも出して、主星が暴れ出す様なことにでもなれば、この星、いやこの星系は瞬く間も無く焦土と化してしまうだろう。



 ここでクレアが脳内通話でこっそり教えてくれたのだが、中央政府には正体不明な物への対処を専門とする「特殊な部署」があることはあるのだが、その部署がの為に動くことはまず無いと教えてくれた。

 何せ星は腐るほどある。ましてやまだ開発が始まったばかりの、一般人の入植者が殆どいない惑星に「価値」を見出すことは無いのでは? とのことだった。

 この「特殊な部署」は少尉以上にならないと存在を教えられないそうだ。



 <果報は寝て待て>


 本部の通達通り、やって来たのが探索者。

 主星のそばということもあり、下手な艦では一瞬で蒸発してしまう。なので探索者、というよりも探索艦が目当てなのは言うまでもない。

 情報部は探索艦について「恒星に突っ込んでも無傷でいられる」くらいは知っているそうで、この不明物体の対処にはもってこいとルーシーは判断し、厚かましいとは思いつつも縋る思いで話をした、という訳だ。


 レストランでその正体不明の物体の話を聞き、駐機しているアルテミスにその場からの観測を指示。映像と各種データをレストラン内にある大画面モニターに表示させる。

 そこに映し出されたのは……漆黒色の完全な

 そう、どこからどう見ても「探索艦」だ。

 恒星の表面あたりをかなりの速度で周回している。

 球体型でいることから、自艦の推進力で移動している訳ではなく、引力と遠心力によって移動しているようだ。


「え? これがそうなんですか? 実は探索艦を見るのは今日が初めてなんです」


 確かにここにある観測機器では、あの隠蔽迷彩中の艦の詳細識別は無理だろう。ましてや隠蔽中の艦を見た事もないのだから仕方ない。


 しかしあの艦は何故光学迷彩をしていないのだろう……

 光学迷彩さえしていればここの情報部程度なら簡単に隠れることができるのに。


 もしかしたら、例の所属不明艦? それとも行方不明の仲間の誰かか?


「ノア、あれどう思う? 個人的にはがするんだけど」

「……あんな意味不明な行動をするのは多分、、だ」


「奴? 奴って?」


クレアが首を傾げる。


「……エマの天敵、だ」

「…………さ、次に行こうかね」

「……うん。次に行こう、ね」


 二人は阿吽の呼吸でサッサと帰る方向で話を纏めると立ち上がった。


「え⁈ え〜? 行っちゃうの⁇」


 クレアがビックリした表情で聞いてきた。彼女としては相談に乗ると思っていたようだ。


「うん♡」


「ち、ち、ちょーとお待ち下さい! 一体どういうことですか⁇」


 やりとりを見ていたルーシーが慌てて引き止めにかかる。


「大丈夫よ、あれは貴方達何もしない。こちらから何もしなければ、ね」

「……そう、絶対に「ギリBカップで安産型の女性を近づけない」ように心掛けて、ね」

「そうそう、私みたいな体型…………さあ、行こか」


 二人は足取り軽く店の出口へと向かう。

 そんな二人を見たクレアは選択の余地なしと慌ててついていく。

 残されたルーシーは放心状態で眺めていたが、直ぐに我に返り慌てて三人を引き止めに掛かる。


「お、お願いします! あれを何とかして下さい! あれは「探索艦」なんですよね? みなさんの仲間なんですよね?」


「仲間」という単語に二人は反応、歩みを止めた。


「その「仲間」って言葉には今は逆らえないな〜。どうするノア?」

「……確認だけはしてみる、か? 奴でない可能性も万が一ある、し」

「ちっ、仕方ない……」

「え? エマ今「ちっ」て……」

「……そんだけエマにとって嫌な奴ってこと、だぞ」

「そうなの? そんなにヤバイ奴なの?」

「……私やクレアには何の害もない、ぞ。むしろ私達から見ればいい奴、だ。だが……」


 と言い掛けたところで私の身体に悪寒が走り雄叫びを上げてしまう。


「や、やめてーー! やっぱり帰る‼︎」


 奴を思い出し両手で胸を隠すようにクロスさせて震え出す。


「……仕方ない、な。私が行ってくる、ぜ。エマはこの惑星の軌道上で待機だ、よ。クレア、後を頼む、ね」


 とそこに新たな叫び声が脳内に響き渡った。



(先生ーエマ様ー大変デーーーース!)


(……どうした? アシ2号、や?)


(トナリノ惑星カラ突然「遺跡」ノ反応ガ現レマシタデーーーース!)



 なななななんですと!

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