元執事・香登ヒスイの再興~また今日もいちにち~
ゆきうさ
第1話 朝
月曜日。今日も開店から入り夕方までのシフト。
とりあえず朝のトレーニングを消化してから、葵さまの様子を確認しにいこう。
そう考えながら軽く肩を回してから腕立て伏せを30回3セット分を始める。
いつものことだけど、こうして毎日筋トレをしているとどうして学生の時分はあんなに動けたのだろうかと思ってしまう。回数をこれにしてからしばらくするというのに、以前より腕は見た目良くなったと自分なりに感じていても、トレーニング自体は楽になった気がしない。
心持ち慣れがきているからなのかも知れないけど。
呼吸と筋肉を意識しながら頭の内で回数を数えて、淡々と朝の分を終えて立ち上がる。
「さて、」
いざ行かんとテキトウなことを考えながら、襖を開ける。
「おはようございます、葵さま。」
部屋に入るといつもの光景と変わることなく、もこもこのパジャマ姿でモニターに対面して格闘している御主がいた。
ヘッドセットからの微かな銃声が聞こえてくる。
「スイ、しっ」
キーボードから手を一瞬話して静かにとジェスチャをして、すぐさまプレイと戻る。
特殊部隊訓練FPSゲームが映っていて、まもなくして対戦が終了した。画面中央にWINの表示。
満足な表情をしながらヘッドセットをデスクに掛けてこちらを向き、
「おはよう、スイ。今日の朝ごはんは?」
「まだ考えてないですけど、時間があるから多少は作れますよ。」
「ならベーコンパンケーキがいい。」
「承知しました。」
再び戦場へと向かったのを見てから部屋を出て台所に立つ。
注文通りにパンケーキを作るためにミックス粉や卵などを用意して混ぜ、フライパンで焼いていく。
せっかくなので自分の分も焼いておいて、
「葵さま、朝食の準備できましたよ。」
テーブルに皿を置きながら襖に声をかけるとすぐに食を求めて姿を現す。
「はい、お言葉の通りのベーコンパンケーキです。それとハチミツです。」
「ありがとう。」
葵さまはハチミツの入ったボトルを受け取ってパンケーキにどばどばと掛けてからフォークを指す。
「うん、甘いものは最高だ。」
まま慣れている光景ではあっても、果たしてそんなに掛けていて良いのかと考えるぐらいのハチミツで胃が重くなるような気がしてくる。
「牛乳も飲んでくださいね。」
食べる姿を見ながら片手間に入れた牛乳のコップをパンケーキの皿の横に置く。
「どうして牛乳なんだ……。ほかにあるだろう。」
「朝ぐらいガマンして飲んでください。もうすこし大きくなって頂きたいですからね。」
「スイ、諦めるのも肝心だと思うよ……。」
私はまだ葵さまの身長が伸びるのを諦めてはいない。
「それで調子はどうなんですか。」
「ほとんど変わらないよ。勝って敗けてであまりレートが上がらない。
わたしが五人いれば勝てるのに。」
「まぁ、チームゲームですから。」
そんなゲームプレイの状況の話を聞きながらふたりで朝食を済ませる。
そのあとに同じ回数のトレーニングをしてからアルバイトの準備をして家を出る。
「よし、今日も三十分で。」
バッグパックを背負って店まで走り始める。
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