添い寝フレンド

奥田啓

第1話

文化祭が近くなると、夜中まで作業していいというイレギュラーが発生する。これは文化祭を準備する人たちにとっての助け舟となるかというと疑問だ。

この夜の雰囲気にテンションがあがって、結局作業よりも遊んでしまう。本当に作業を進めるなら限られた時間にきっちりと作業を積み重ねればいい。夜の校舎で作業など、ただのイベントだ。

だからまわりはしっかりとそのイベントを楽

しむ連中ばかりだ。夜なんて楽しくないおれは、彼らにとってイレギュラーだ。作業が滞りなく続けている。そして彼らはあそんでるだけでなにもしてないのに眠りだす。十分だ。夜が楽しくないおれにはこの作業がおにあいだ。

教室のところにおく、店看板に色を塗っている。

このイベントもたぶんおれは楽しまないの。

眠ってる奴らが楽しむのだろう。

なんだか損だな。でも気が紛れるからいい

淡々と作業するおれに同じクラスの女子

ほのかがはなしかけてくる

「ずっと作業しててえらいね。」

「べつに。ほかにやることないし」

「みきたかくんはねくないの?」

「ねむくない」

「ええ?もう1時過ぎてるよ?」

「ねむくない」

「なんで?」

「うるさいな」

「えーつめたい」

「つめたくない」

そんなにはなしたこともない女子とこんなにはなして、うるさいと言い放ちつめたい対応をする

普段全然喋らないはずなのに、イレギュラーだ。この夜に、まわりの静かさに、まさかおれも舞い上がっているのか。

「じゃあみきたかくんがねるまでわたしもおきてる」

たやすく落ちてしまいそうな愛くるしい笑顔でいう。

なんのつもりでいってるのかこいつは。

こうやって気を持たせるようなこといいやがって。

おれがねるまで起きてるだって?

笑わせるな。

おとこをたぶらかそうとするバカ女につきつけてやる

「おれはここ数年感寝たことないぞ」

「重度の不眠症でな」

「ずっと寝ないぞ」

「おまえさっきおれがねるまで起きるとかいってたな」

「それまで起きてられるのか?」



苛立ちなのか、不眠症だなんてだれにもいったことないのに。

なんでこんなよくわかんない普段話さないおんなにはなしてしまったのか。まさかやっぱり舞い上がってるのか。

まあいい。こんな言い方したら離れていくに違いない

都合がいい。さあむかつくだろう。どっかいけ。

ぽかんとしていたほのかが急ににっこりと笑う。

そして正座をして、スカートからでている膝をポンポンと叩く。

「なに?」

おれは聞かざるを得なかった。

「ひざまくら」

どういうこと?

わからなすぎて疑問を口に出せなかった。

「わたしねー結構ねかせるのうまいんだよ」

「え、だからなに?」

「もーだからひざまくら!」

「ひざまくらでなにをするの」

「ここに寝て」

またほのかはひざをポンポンとたたく

今日ほとんどはじめてはなした女子にひざまくらしてもらうって

最近の女子って距離のつめかたこんな感じなの?おかしくないか?

「さっはやく」

こうちょくしているおれをむりくり頭を引っ張って自分の膝に乗せた。

いやいやいや

寝れないって言ってんのに

こんなのしたら余計ドキドキして寝れないだろ。

女子の柔らかいふとももの上で寝るって

不眠症のおれじゃなくても寝られないとおもうけど。

ほのかはご機嫌そうによしよしとしてくる

ラッキーよりも恥ずかしさの方が勝っている。

「目閉じてねてみて」

「い、いやだからおれは」

「いいから」

「は、はい」

この状況はもう上下関係がよくわからない。

もう彼女の手のひらの上だ。

もう従うしかない。

目を閉じるとあたまをやさしくなでられる。

それがくすぐったくて。

そして肩の方を一定間隔でやさしくポンポンとタッチするようにたたく。

不思議となんだか懐かしかった。

なんだか心地よいものにつつまれた。

意識が遠のく。

ハッと気がつくと、布団に寝ていて、朝日が差していた。

おれの隣にはほのかが横になってこちらをみてほほえむ。

「うわあ!!!」

「そんなにおどろかなくても」

「いやっえっいや…」

「いやーそれにしても不眠症とか強がっちゃってーみきたかくんも眠かったんだね。あんなにきもちよさそうにねるひとはじめてみた。かわいかったなあ」

おれが、寝た?

何年も寝てなかったおれが寝たのか。

うそだろ。

今日はイレギュラーが多すぎる。




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添い寝フレンド 奥田啓 @iiniku70

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