第392話 戦争2
「ククルカン頼む、俺を下ろしてくれ!」
フィーデスの人達の一大事だ、早く何とかしないと!
あの防衛網がもし突破でもされたら、収集がつかなく……。
『落ち着け。主が行ったところで、人の身であれが何とか出来るものでもあるまい』
「……くっ!」
確かに。正直なところ、どれだけ強い相手を前にするより大勢相手の方が分が悪い。
しかも相手の多くは巨体な上、周囲にはほとんど障害物も遮蔽物もない。
集団相手には地形的にも不利なのだ。
俺も人である以上、当然視野は限られる。
軍勢相手に、取り囲まれながら大立ち回りをし、すべてを退治する……。
そんなのは、物語の登場人物だから出来る芸当であって、現実では到底不可能なのだ。
それに抜刀術は尚更、集団戦には向かない──。
「だからと言って……。そうだ、灯心なら!?」
『王族種を倒した一撃か? 威力は十分だろう……。しかしあの程度の範囲では、倒せたとしても精々百がやっとではないか? それともあれは、そう何度も振るえるものなのか?』
「それは……」
今まで以上に魔力を注ぎ込めばリーチは多少なり伸びはする。
しかし、一度に全部どころか倒せるのは四分の一にも充たないだろう。
回数制限は、二、三度が限度。
しかも一発は、先程レクスオクトパスに使っていて、今は魔力も全快していない……。
「で、でも、あの人達を見捨てる事は出来ないだろ!」
『──わっぱ!! 目的を忘れたわけではあるまい……』
ククルカンの怒りももっともだった。
考えるまでもなく、あの中に飛び込めば無事では済まないだろう。
それは同時に、自分の大切な人を助けに行けないことを意味する。
「で、でも……」
あの町には聖母様もいる。何も出来なければ、ハーモニーに顔向けが出来ない。
それにトゥナだって、町の人を助けず自分だけが助けられたら何て思うか……。
そんな時だ。俺が頭を悩ませていると、頭上から歯軋りのような音が聞こえた──。
『……見てはおれぬな』
ククルカンが、何に対して何に対して
俺に対してなのか……。又は別の理由なのか。
ただ閉じている彼の口からは、時折深紅の炎が顔を覗かせ始めた。
そして漏れ出す量は次第に増え、轟々と音を上げ、数メートルは離れているだろう俺の肌をも、チリチリと焼く……。
「ク、ククルカン!? 何をする気なんだ!!」
しかし、彼は俺の問いに答える事は無かった……。
『目障りだ、焦土と化す! ──安らかに眠るがよい!!』
その言葉を皮切りに、ククルカンの口からはブレスが吐かれる。
一瞬、目を開けれないほどの眩しい閃光が周囲を埋め尽くした。
そして……。
──ドオォォォーンッ!!
っと音を立て、熱を帯びた強い風が俺を含め周囲の万物を襲った……。
「…………っ」
俺はその後、少しの時間を置き目を開く。
「こ、これは……!?」
ククルカンの口から放たれたブレスは、想像を絶するものであった。
直撃したであろう川の部分は水が干上がっており、変わりに巨大なクレーターが存在していたのだ。
上流から流れてきた水は、今しがた出来たばかりの穴に流れ、巨大な水溜まりを作っていく。
余りの出来事に、俺は一瞬言葉を失ってしまったのだった……。
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