第379話 決意
トゥナの母との面会を終え、俺はハーモニー達の待つ馬車へと戻った。
当然、彼女達にはトゥナの事を聞かれた。
ただ俺が何も言わずに首を横に振ると、それ以上の追究はない。
黙りこくる俺の雰囲気を察してだろう、その後の開拓村への帰り道もほとんど会話はなく、今後の身の振り方を考え続けたのだ。
そして数日が経ち、俺達は開拓村の、自分達の家へとたどり着いていた──。
◇ ◇ ◇
「──いらっしゃいませ、シュピーレンのギルドへようこそ」
「シュピーレン? ここの名前、決まったんですね~」
「ハーモニー様──皆様も!?」
突然の帰宅に、ティアは驚いた様子だ。
そういえば考え込んでいて、伝鳥を送るのを忘れていたな。
「驚きました、事前連絡してくださいよ……。それで、フォルトゥナ様は!?」
「それが……あの~……」
ティアにとって、トゥナは特別な人だ。その質問は、第一に来ることは分かっていた──。
「すまないティア、連れて来ることが出来なかった……」
──そして、こうして落ち込まれることも容易に想像できていた。
そして、今から更に落ち込ませることも……。
「突然だが、その事で皆に話したいことがある」
俺は、極秘とされている魔王の復活をハーモニー、ティア、ルーム、キサラギさんの前で話した。
彼女達は少なからず、皆が関係している。聞く権利があるはずだから……。
「そ、そんな、魔王が復活なんて……。それで帰り道、カナデさんの様子がおかしかったんですね」
「その魔王を……フォルトゥナ様が討伐に向かわれた? そんな……」
「ティア!!」
「ティアさん!!」
ショックの余り、倒れそうになったティアを俺は抱き抱えた。
無理もない……ティアにとって、彼女は恩人であり、心の支えであり、愛する相手でもあるのだから。
「行かないと……私も助けに行かないと……」
「落ち着けティア、話を最後まで聞いてくれ」
この話を聞いたとき、俺もすぐさま飛び出したかった。
しかし、事はそう簡単なことでは無い。
「トゥナがリベラティオを出発したのは、天候がおかしくなってすぐの事らしい。星読みの巫女って人の占いを聞き、出発したって聞いた。だからもう、一月近く前なんだ……。すでにグローリア大陸に到着してると思われる」
陸路を移動し、海を渡る。
それには多大な時間がかっかってしまう……。
そしてこんな時に、わざわざグローリアに向かう船など出ては居ないだろう。
「そんなの関係ありません!! フォルトゥナ様が危険を冒そうとしてるのです、私が止めに行かないと──」
「だから落ち着けって!! ティア一人が行ってどうなる……相手はその魔王だけじゃない、魔物の大群も待ち構えているんだぞ!」
ティアは顔を手で覆い隠し、その場に座り込んでしまった。
彼女も分かっているのだろう。自分が向かった所で、何も変わらないと。
それでも、居ても立っても居られない……気持ちは十分に分かる。
「カナデさん……トゥナさんも心配ですが、マザーや子供達は大丈夫何でしょうか~?」
「詳しい事は分からない。ただ難民の話によると、グローリア大陸を出た時には、フィーデス、イードル港はまだ大丈夫だったらしいけど……」
相変わらず、ハッキリとした情報は手に入ってはいないみたいだ。
「それでカナデよ。口ではそんな事言っとるるが、主はどうするつもりじゃ?」
「俺は……」
今回の相手は、過去に国を相手だって戦った化け物だ。
本来ならそんな相手、一切の関わりを持ちたくない。
ずっと悩みつづけて出した答えを、口にした──。
「俺は、一人でグローリアへ向かおうと思う!!」
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