第375話 デート2
しまった、この話はティアから聞かされていなったのか!?
そもそも女性とデート中に他の女性の話題。俺って馬鹿か……。
「あ、あぁ。えっと……でもあの時はリハビリをかねてであって、別にデートとかではなくてだな」
結局俺はハーモニーに当時のことを追究され、その時の出来事を鮮明に説明するハメになった。
握られている手に先程より力は入っているものの、これといって彼女に怒った様子は見られなかった。
むしろ、トゥナが俺に行為を抱いて居るのを知っているハーモニーは「デート……先を越されてました」っと、肩を落としたのだ。
「──いや、あの時はデートだって考えもしなかったし。意識してこうしてるのは、ハーモニーが初めてだから!!」
つい言い訳じみたことを口にした。
それは自分を守るものでは無く、純粋にうつむいてしまった彼女を元気づけるものであって──いや、本当は好きな相手が目の前で落ち込んでいる。その姿に罪悪感を感じているだけかもしれない。
「カナデさん、そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫ですよ~。その分今日は、特別な日にしてくれるんですよね?」
ハーモニーは、無理をするかのように微笑みかけてきた。
気持ちが顔に出ていたか? どうやら変な気を使わせてしまったみたいだ。
彼女の気持ちに少しでも答えれるよう、頑張らないとな……。
「それにしてもそれ、抜け駆けですよね~ずるいです! 今回のデートで、トゥナさんの分は差し引きゼロで無しですね!」
握っている手を離し、ハーモニーが腕にしがみついてきた。
はにかみながらも顔を桜色に染めたかと思うと、今度は一変、その表情は少しばかり険しいものへと変わる。
「それにしてもティアさんはともかく、トゥナさんまでカナデさんを好きになるとは思いませんでした……」
「それは同感だ。トゥナの奴、色恋とかに興味なさそうだったしな」
少しの間、沈黙が流れる……。
それに耐えかねたのか、腕を組んだままのハーモニーが悪戯な笑みを浮かべた。
「私も好いておいてなんですが、カナデさんのどこが良いんですかね?」
「っておい、ひどい言われようだな……」
強く否定は出来ないが、好いてる女性に言われると中々キツイな。
肩を落とし俯いていると、俺の頬に彼女の手が当てられた。
顔を起こすと、突然口に柔らかい何かが触れたのだ──。
そして目の前には、背伸びをしながら俺を覗き込む少女の姿が。
い、今のって、キス……だよな?
今回は隔てるもののない、本当の……。
思いがけない状況に、心臓が飛び出るのではないかと思う程高鳴る。
そして照れくささを隠すためか、逃げる様にハーモニーは距離をとった──。
「嘘ですよ、全部が良いんです~! 優しい所も、意地悪な所も、そして頑張っている所も。優柔不断普段だったり、頼りないときもありますが、本当は頼りになって……それを含めて全部──全部好きなんです!!」
俺は、目の前の小さな少女から目が離せなくなっていた。
彼女の気持ちに、何か答えなければならない……そんな事を考えていた時だ。
ハーモニーはゆっくりと手を上げ、前方に向かい指をさした──。
「あっ、カナデさん。話してる間に、お肉屋さんが見えましたよ~?」
「あ、あぁ……」
まったく……こんなに動揺してるのは俺だけなのか?
彼女に負けじと、特別な日にしてやらないといけないな。
そんなことに頭を悩ましていると、ハーモニーが目的の店へと走り出す。
俺は頭を抱えながらも、ハーモニーの後をゆっくりと追いかけたのだった。
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