第327話 落ちてるカナ!

 コントロールバーを押して、体から離す──少しでも飛距離を伸ばさないと!


「な、何とか浜まで届きそうだ!!」


 破れた穴は、何とか広がらずに持ちこたえている。

 普通なら穴が広がりそうなものだけど、大きくなった様子は無い。まったく、ルーム様々だよ!!


 何とか砂辺の上空には辿り着いた! 


 後は無事着地をしないと、島から抜け出せなくなる。

 地面との距離は、目前まで迫っている……。


 3、2、1──


「止まれぇぇぇぇ~!!」


 ハンググライダーを起こす様に抱えたまま、大股で一歩、二歩と砂浜に足を着ける。

 すごい衝撃だ──着く足を着く足が地面にめり込み、その度に足を取られそうになる。


「ぐへぇ!?」


 随分速度が落ち着いた所で、結局俺はそのまま前のめりに転倒してしまった……。


 いたたた……グライダーは? ハンググライダーは無事なのか!?


 慌ててハーネスを取り、機体をぐっと一周見渡した──。


「良かった……フレームはどこも折れていない。最低限の破損で済んだみたいだ」


 防寒着を脱ぎ、甚平に入った砂を払う。

 ズボンの中にまで入ってるよ……気持ち悪い。


「あ~……それにしても死ぬかと思ったよ。ミコ、なんとか陸地に着いたぞ。出てこい」


 無銘から飛び出すミコも、どう言った訳かフラフラになりがら空を浮いていた。


「す、凄かったカナ……流石のボクも、チビりそうになったシ」


「精霊様がチビるとか言わない、これ以上イメージを怖さないでくれよ」


 まぁ、俺もやばかったけどな?

 並外れた身体能力が無かったら、死んでいたかもしれない。

 本当、空を飛ぶとろくなことが無いな……。


 さてと──。


「直す方法はあとで考えるか。一先ず、これを片付けよう」


 組み立て手順と逆の順番で収納していく。


 すると、ミコは退屈したのだろう「ボク、ちょっとフラフラしてくるカナ!」っと、お出掛け前の報告を入れたのだ。


「あまり遠くに行くなよ? 俺が見える範囲で頼む。後、落ちてるものは拾わないこと! 間違えても食べるなよ?」


「──カナではボクを何だと思ってるのカナ! プンプンだシ!!」


 どうやら、少し怒らせてしまったようだ。

 そう言えば、ミコの方がお姉さんだったな……子ども扱いするのは良くないな、うん。 


 それにしても、幸先が悪いな……。

 こんな調子でミスリル鉱石を手に入れて、無事に村に戻ることが出来るのだろうか──って、弱気になってどうする!


 自分を奮い立たせる様に、俺は作業に勤しんだ──。



「ふぅ……組み立てよりは早く片付いたな」


 不思議なものだ。

 出すときは綺麗に畳まれていたのに、片づけると入れ物に収まらない……。

 ま、まぁ、マジックバックの中に入れば問題ない!


 しばらくすると、収納を終えたのを見てたのか? ミコが俺の元へと戻ってきた。


「おかえりミコ、どうだった?」


「ただいまカナ! あのねあのね、あそこ何かにあるシ」


 ミコが「あっちあっち!」っと指さす方には、砂浜に埋もれた何かがみえる。

 近くによると、確かに光を反射するツルツルしたものがあった


「ん? 本当だ、何かの石? って言うよりは金属のような……」


 俺は、その謎の物体に近づくと不意に手を伸ばす──。


「あーカナデさっき『落ちてるものは拾わないこと!』って言ってたカナ!?」


 しまった……。

 ミコの奴、自分から見つけておいて!


「お、俺は良いんだよ。鑑定もあるから危険もないしな?」


 俺に対し、ジト目向けるミコ……。

 それならむしろ、反論してもらった方がましだ。


「な、なんだよその目は‼ 嘘じゃないぞ。ほら、今から鑑定するからな?」


 完全にしてやられた気分だ。

 ミコの奴! ため息つきやがって……。


 敗北感を感じながらも、謎の物体に近づいた。


「鑑定──!」

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