第136話 浮気調査2─ハーモニー視点─

 目の前の山からは、朝日が太陽が顔を覗かせる。朝の凛とした空気が顔を撫でていきます。

 そんな中私は、爽やかとは程遠いカナデさんの浮気調査(仮)の為に、敵の本拠地……鍛冶屋に向かっているのです!


「まったく~! あの人は何でいつも女の人と縁ばかり作るんですか! しかも、毎回毎回可愛い女の子ばかり! クランをハーレムを作る場と勘違いしてるんじゃないでしょうか~?」


 込み上げてくる怒りを胸に抱いたまま、町のメイン通りを山に向かい走っていきます……。──日中はあんなに賑わっているのに、早朝だとこんなに人が少ないとか、走りやすくて結構な事ですね~!


「さて、分かれ道ですね。どちらに向かったら良いものでしょうか~?」


 煙突を遠目に見ながら、町の正門と思われる方に向かいました。すると、何やら門の前に立て札が立っているじゃないですか?


「あれは、立て札でしょうか?」


 息を切らし、呼吸を整えるよう肩で息をしながらその看板を覗き見たのです~。──何々……?


【ここを左に行ったら、あの伝説の鍛冶屋が作りし工房があるんや! 見な損やで! 是非来てな~!】


 こ、これはうわきあいてが書いた文面でしょうか? 見るからに軽そうな感じがしますね。とても嫌な予感がします~。

 カナデさんは、個性的な女性をはべらかす習性がありますからね~。──これは、急いだ方が良さそうです!


 息も整わぬまま、立て札の指示に従い高台の方角に走り出しました。

 急斜面ではないものの、この緩い坂はこたえますね~……。


 本来であれば、そこから見られる風景は足を止めてしまうほど美しい景色だったのだと思うのですが。

 しかしながら──今は私のカナデさんを一刻も早く問い詰めないといけないのです~!


「はぁはぁ、おえっ! み、見えて……きました……あ、あれですね~?」


 目の前にそびえ立つ二本の煙突が、存在感を主張するかのようにそびえ立っています~。

 しかし、その根本にある鍛冶屋と思われる建物は、取り分け大きくもなくアンバランスに感じますね、あそこが悪の本拠地……。


 建物の近くまでたどり着きました。なんか、見れば見るほど違和感のある建物です……。


「あれ? どこが入り口なのでしょうか」


 ドアノブが見当たりませんね? あの二枚の大きな鉄の部分が怪しいのですが~……。


 ──その時です! 建物の上の方の窓らしきものが、何か擦れる音と共につきだして来たじゃありませんか~。


 そうだ、いきなり敵のところに乗り込んで、カナデさんをしょっぴくのも、無粋ですね。どうせなら、現行犯で捕まえましょうか~?


 そう思い立ち、私は空いた窓から中を覗き込もうと挑戦しました。

 しかし、残念ながら私の身長では紙一重で届かなかったのです。

 大事なことなのでもう一度言います。で! 届かなかったのです~。──くぅ~……ちょっと泣きそうです。後で事の発端であるカナデさんに、八つ当たりしてやりますよ~!


 あきらめて、入り口を探そうとした その時です──!


「──初め…で…が本日…、よろ……お願いし…す」


 この聞き覚えのある、何となくホッとするような声は……カナデさんの声でしょうか?


 覗くのは少々ハードルが高いので、聞き耳を立てることにしましょうか~。エルフの長耳の聴力、侮ることなかれです~!


「あらあら? 初めてなのかしら……? 大丈夫ですよ? 心配しなくても……私達に任せて欲しいかしら?」


 ちょっと! 任せるってどういう意味なんですか~! それに私達って……敵は、実は一人じゃないって事ですか~?


「そうやで? 兄さん。あんま力入れはると、直ぐにバテてんで? 力抜き~や」


 この口調はあの看板の! やはり一人じゃないようですね~。それにしても……何をする気なんでしょうか……。カ、カ、カ……カナデさんに限って……ま、まさかね~……。


「あらかた準備わ終わってるかしら……。カナデさん? それでは早速ここに触れてもらっていいかしら?」


「こ……こうですか?」


「あかんあかん! もっと優しくしな。なんでも初めが大事なんやで? そうそう……兄さん上手やで……その調子や……」


 はわぁぁぁぁ! カナデさん何をやってるんですか! いったい、何に触れてるんですか!


「ど……どうですか? これぐらいで……」


「もう……慌てないのかしら。ほら……ここがまだかしら?」


「す、すみません!」


 何を謝ってるんですか、カナデさん! あうぅ~……想像したら……なんか体が熱くなってきました……。


「兄さんこっちもやで……忘れたらあかんよ? しっかり奥まで……そうや! 上手やないか~」


 二人同時何ですか! カナデさん最低です……。

 

 下を見て控えめな、発展途上! の胸を両手で触れる……。──私もまだ耳しか……やはり大きい方が好きなのですか~?


「それじゃ~次は温めるかしら……? カナデさんの手で、一番奥までいれて欲しいかしら?」


「ん……開くのはこんな感じで……? うわ……こんなに熱くなるんですね……? なんかドキドキしてきました……」


 わ、わわわ、私もドキドキですよ! もう訳がわからないです……。どこがどう、熱くなってるんですか!


「さぁ、奥に入れるかしら……?」


「は、はい……」


 カ、カナデさん……? あれ? 急に静かになってしまいました……何があったんでしょうか!


 きっと……あんなことやこんなことをしているんですよ~!


「凄い……こんなにもトロトロになるんですね……」


 ほら見たことか~! これは許されないですよ! 許すまじです~!


「そうやで~?……まぁ、もうそろそろいいんちゃうか?」


 もうそろそろって……。まさか……。


 ──っは! まじまじと聞き耳を立てている場合じゃないです! と、とととと、止めないと! い入り口は何処でしょうか!


「じゃぁ、ゆっくり引き抜いて……ここからが本番かしら?」


「そうやで! ウチが手伝ってやるさかい。そろそろ入れようか?」


 ダメです! 入れたらダメです! そうだ、あの怪しい鉄の壁! きっと押せば開くんですよ! 急がないと~!


「それじゃぁ~せーのでいれるさかい。準備はええか?」


 私は制止すべく慌てて鉄の壁を押しましただめぇぇぇ!」と、大声をあげて……。

 すると二枚の壁は急に左右に開き、三人が注目をする中、押した勢いで私はおもいっきり転倒してしまったのです……。

 

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