おまけ

「ねぇねぇ、トゥナン! ボク、聞きたいことがあるシ!」


 それはとある日、馬車での移動中。思い出したかのように質問をした、無邪気なミコの一言から始まった。


「前、盗賊に襲われた時カナ? 誰か親分のおやびんって言ってたけど……何カナ?」


 俺は昼寝をしていたが、ミコの声で目が覚めてしまった。

 しかし、話題の内容が若干怪しい方向に進んでいるため、狸寝入りを決め込んでいる最中だ。


「親分のおやびん? そういえば、あの時の盗賊がそんな事を言ってたわね? シータだったかしら?」


 地球に居たときに聞いたことがある、女子同士の会話は意外とエグい事も平気で話すとか。ま……まぁ、個人差はあるだろうが……。


 俺は狸寝入りをしながらも、生唾を飲み込む。ほんのチョットだけ邪な妄想をしてしまったのだ。──ミコが外にいてよかったよ……。


「う~ん? あれじゃないかしら? 親分さんの中の親分さんって誉め言葉じゃないかしら?」


 ミコは「なるほどカナ……」と、納得してしまった。


──っは? トゥナ本気でいってるのか? そうか! 子供をさとすときに使う嘘か! そうだよな? いくなんでも、あれだけの事をして知らないなんて……。


「でもトゥナン。何で剣でブスっとしなかったカナ? あの時トゥナン、すごく怒ってた様に見えたカナ?」


──ナイス、ミコ! その質問を待ってた! 後で何か美味しいもの食わせてやる。


 う~んと考え込み、自分を真剣に見つめるミコに、ゆっくり口を開くトゥナ。


「あのね? どんな生き物にも弱点があってね。人間の男はあそこが弱点だから、蹴ると大人しくなるって私の友人に教えてもらったの」


「──誰だよ! そんなこと教えたやつは!」


 俺は斜め上の会話に、我慢が出来ずつい起き上がり、大声で突っ込みを入れてしまった……。


「あっ、カナデ。おはようカナ!」


 元気にあいさつするミコに、俺は「お……おはよう」と返した。──しまった! 盗み聞きがばれた?


 う~んと頭を抱えているトゥナ。盗み聞きに関しては気に留めていないようだな? トゥナが両手をパン! っと叩いた。──何かを思い出した様だな。


「思い出したわ。ティナさんだったかな?」


 ティナって確か……。ギルドの受付嬢だったよな? あの人はなんて事、トゥナに教えてるんだよ……。


「ギルドの受付さんって物知りよね~」と、感心の言葉を口にしているトゥナの姿を見て、俺はため息をつくことしか出来なかった。


 そんな俺らを乗せた馬車は、今日も一日、何事もなく目的地に向かって進むのであった。

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