第4話 集合写真

またいじめが始まるのか・・・。


休み時間、廊下に張り出された修学旅行の集合写真を見て思った。

私の顔の部分が、穴だらけになっている。たぶん、画鋲か何かで何度も突き刺したのだろう。私以外のみんなの顔は、笑っている。


約2年前。理由はよくわからないが私に対する陰湿ないじめが始まった。机の引き出しの中に、毎日動物の糞が入れられた。

毎日その処理に追われるわけだが、誰が犯人なのかわからないまま、1か月、2か月と過ぎていき、そのいじめととれる行為は自然消滅した。


そして今回の修学旅行。なんの問題も無く楽しく終わったはずだった。私の態度にも特に問題は無かったように思う。クラスのみんなの笑顔がそれを証明している。


しかし私の顔だけは、鋭利なものでぐちゃぐちゃになっている。


私が何をしたのだろう?それなりに親密な関係を築けていたはずだ。

今度は誰だろう?匿名を保ちながら心を傷つけて、穴だらけにする犯人は。


そこまで考えて私は思わず笑みをこぼした。

一旦教室に戻り、今日はこのあと体育の授業があることを確認する。

何事もなかったように過ごしてから、全員が教室から出ていくのを待つ。


今だ。私は集合写真をじっと見つめ、行動を起こす。

手には画鋲。じっくりとクラス全員の顔に針を突き刺していく。

何度も何度も。ぐちゃぐちゃになるまで。


全てが終わった後、その光景に、身震いするほどの安心感を覚えた。

これで、いじめの対象が私だったこと、そして陰湿な犯人がもしこのクラスの中にいたとしても、第三者にその事実はわからない。


教師というものは、生徒の将来を守り、導く義務がある。私の行動は匿名の犯人の行為を意味のないものにした。

犯人には後悔してほしい。今回の陰湿な行為を。


私は今後、同じような方法でいじめを無くし、生徒を守る。

一人が殺されるのであれば、全員を殺す。

傷つく人が孤立することが、いじめの正体だからだ。


私は明日からも本当は集合写真に写るはずだった笑顔を携えて、教壇に立つ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る