化け物
私たちは皆でブレインルームへと向かう。
「隠し扉が壊されてる?!」
最下階にある隠し扉、何故か壊れていて隠し通路が露になっている。
「それが、オーバーとかいう奴が素手でぶっ壊したらしい。やベーやつと思ったよ」
「嘘でしょ?! もしかして入り口こじ開けたって言ってたのは本当のことなの?!」
確かにさっきあったときは信じてなかった。オーバーの力は1度見ないと誰も信用しないと思う。
「……くそ! 反応がない!」
オルフェルは扉の横にあるボタンを何度も叩くように押すが反応がない。すぐにこじ開けようとするも扉はびくともしない。
「お前も吸血鬼だろ! 手伝え!」
「あ、わかった!」
1人で開かないなら数人であければいいんだ!
私も扉をこじ開けようとするもびくともしない。
「「流血:
私とオルフェルは血の手でさらにこじ開けようとする。少しずつ扉が開く。
「うぐぐ!」
「ぐおお!」
力一杯全力で開ける。撃たれた傷口が痛むがいまは気にしている場合じゃない!
「開いた!」
エレベーターの扉が完全に開くと、下を覗けば乗り物がない。ただの筒になっていた。下に行くほどヒビが入っており壊れたいる事がわかる。
「このエレベーターが壊れるなんて、いったい何があったんの?!」
「わからない。今は降りるしか、下の様子を見てくる皆はここで待ってくれ」
「私もいく!」
オルフェルと私は羽を広げて降りる。
長い。ただでさえ結構な深さにいるのにそこから随分と下がる。まるで研究所内でも孤立しているみたいだ。
「ブレインルームは他とは違い孤立させている。セキュリティシステムも全く違うものにしてある。とは言ってもわからないか」
セキュリティとかシステムとか何を言っているのかはわからないけれど、とにかく重要な所だと言うことはわかる。けれど、本当に深い。いったいどうやってこんな建物を建築したのだろうか。
暫く降りていくと景色がひらける。目に映る光景は壊滅と言うには的確すぎる言葉だった。
「なんだよこれ、ほぼ全部ぶっ壊れているじゃねえか。本当に何があった」
あまりの光景に無意識でさえ翼を動かすのを忘れてしまう。土煙、いや違う。細かく砕け散った鉄屑が舞っている。
「ウィリアム! どこにいる! 何があった!」
オルフェルは大声で呼ぶも返事がない。私も辺りを見渡すと人が1人立っているのが見えた。
あれは、デルタ・エトラスト・データ! ドラゴンズデルタの創設者。こっちに気づいている。奥のほうにオーバーがいる!
「オーバー!」
オーバーに向けて大声で呼ぶ。するとオーバーはこっちに気づく。
「今すぐ逃げろ! そこから離れるんだ!」
必死の表情でそう言っていた。デルタがこっちへ向かって跳んできていた。
「邪魔だ」
「え?」
デルタの腕がまるで龍の腕みたいになる。赤い鱗、鋭い爪、その腕が私の目前まで迫った。
その瞬間、血が辺りに飛び散る。デルタの腕は血で紅く染まり、私とオルフェルは自分の意思関係なく体があらぬ方向へ行っていた。
「なに、これ」
私の目に映ったのは化け物だった。まるで人間を粘土みたいに何人もデタラメにくっつけたような姿だった。左右で違う長さの腕と足、太さも違うけれどとても大きい。人間とは思えない巨体な体、全体的に腐敗しかけている。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜!!」
その化物私の真横を通りすぎる。近くで見ると骨がデタラメに組まれているのか僅かに飛び出していたり飛び出しかけていて膨らんでいたりする。
そして血がベットリついていた。
「貴様ら、逃げろと言われた連中だろ」
私とオルフェルを抱えるデルタはそう言う。
この状況、デルタが助けてくれたんだ。じゃなかったらあの化け物の攻撃をもろにくらっていた。あの巨体な体から繰り出される攻撃は威力が想像もつかない。
「あ、ありがとう」
「助かった」
「礼などいらない。それよりも何故逃げなかった。いや、聞く意味もない。邪魔だ。今すぐここから立ち去れ」
「「え?」」
私とオルフェルは上に向かって投げ飛ばされた。
ものの数秒でボイトム達の所へ戻される。
「ど、どうした?!」
凄い勢いで飛んできた私たちに驚いたボイトムはそう言う。
「下にはヤバイ化け物がいた! 俺達が気づけない程のスピードがある巨大な化け物だ! パワーも尋常じゃない! 少なくとも俺じゃ手も足もでない」
冷や汗をかきながらオルフェルは言う。たったあれだけでそこまで力量を計れるなんて。
「オルフェルでも手も足もでない?! それじゃあウィリアムは!」
「……下にはオーバーと何故かいるドラゴンソウルの創設者、デルタがいる。生きていることを願うしかない」
オルフェルは悔しそうに、同時に信じられないことを言う。
「あの化け物、デルタが腕を切り落としていた」
「え?! でも腕を見たときはちゃんとあったよ?!」
「落ちていく腕を見た。そう、あの化け物はとんでもないほどの自己再生能力を持っている。お嬢の能力でも即死は期待できない」
「そんな」
全員が悲観的になる。その瞬間、また警報がなる
「今度はなに?!」
「この音は、ゲートが開いた音だ!」
するとボイトムがあることに気づき発言する。
「何かが俺の張った糸に触れた!! いきなり現れたぞ! 一階上だ!」
ボイトムの発言につられ皆は1つ上の階にいく。そこにいたのは、ブレインルームにいたやつとほぼ一緒だった。違うのは人間とほぼ同じ大きさってことだった。
「さっきの奴の仲間か? おそらくゲートを通ってここに来たんだろう。滅んだ世界にはあんなのはいなかった筈だ」
さっきの巨体のパワーを考慮するとあの化け物も相当のパワーとスピードの持ち主だ。
「あんな化け物、どうしよう、眠っている皆が危ない!」
「……この化け物は俺が引き受ける! 二人はお嬢と一緒に行ってくれ! 場所は俺達がさっきいたところだ!」
さっき、眠っている反応があったところか!
「わかった! オルフェル、気を付けて!」
「任せろ!」
私たちは急いで走り出す。
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