社畜コーヒー狂い、ホモ賢者と奴隷吸血鬼。そしてコーヒーの女神。

@Kitune13

第1話ー異世界転移はコーヒーと共にー

労働とは社会への貢献である。

労働とは社会への歯車化である。


社の利益は国の利益、国のために奉仕し国の発展に貢献する。

どの会社も大体同じ信念を表向きに掲げて国の国益やらなんやら言っているが結局は社の利益だ。


そして自分は今、日本でも有数の大企業に勤める社会の歯車である。

眼前にあるのはパソコンの画面、椅子を離れるときは意味のない会議へと。

年取った永久雇用されてるジジイ共は居眠りをしていたりいびきをかいていたり、会議の意味を調べて欲しい。


あっパソコンなんて使えないか、辞書でやってくれ。


そう愚痴っても自分の首が惜しいためこうやって深夜二時にパソコンの前に座ってるというわけだ。


残業代?何それ美味しいの?

労働基準法?それは蜃気楼かい?


これだけ働いて月の給料は十数万、上司には叱られ同期は辞職し別の職場へとゴーゴー。

自分もそうしたいのだが高卒の、家が貧乏すぎて大学に行けなかった自分のような低学歴には定職と言うのは眩しすぎる。


今の仕事をやめたところで待ってるのはさらに低所得の肉体労働ぐらい。

仕事をやめたくてもやめれない、給料を溜めることすらできない。

ひと月を生きる最低限の給料で残業し生きていくほかない。


自分の人生はとてもつまらないものでしかない。

このまま腐るように働いて過労死するかろくな給料もなく年金もなく生きていくとか。


唯一の希望といえば一カップのコーヒーだ。

これは自分の魂を、体を癒してくれる。

体はコーヒーを求める、あーアーマード◯アの新作まだかな。

まぁ買う金もないしゲーム機も持ってないんだが。


パソコンが、異音を発した。


最悪だ、くそマイクロ◯フトめ、またバグが発生して落ちてデータが消えるくそパターンだ。

衝動的にパソをぶん殴ってやろうかと思ったがパソコンに描かれたある絵に息を飲んだ。


コーヒー。

そうコーヒーだ。

めちゃくちゃ立体に見える、まるで手を取れば飲めてしまいそうな。

匂いがしてきた、めちゃくちゃいい匂いだ、おそらくものすごく素晴らしいコーヒーに違いない。


徐に手を伸ばす。

飲めそう、めちゃくちゃ美味そう。

ものすごく飲みたい、よし飲もう、決定だ、これぐらいの奇跡日頃の行いが神様もびっくりなぐらい良い俺へのご褒美だろう。


右手を真っ直ぐと伸ばし、コーヒーを遂に手に入れんと手が触れるが。


「来なさい......」


「なっ!?」


画面に波紋が溢れ、女性の声とともに手が出現する。

コーヒーへと手をつけようとした自分の腕が掴まれ、とても女とは思えないほどの膂力で引き釣りこまれていく。


まずい、何かがまずい。

そう思いとりあえず自分が飲んでいたコーヒーへと手を伸ばした。

まるで最愛の女性か何かへと手を伸ばすように全力で腕を伸ばすが後一歩のところで手が届かず、コーヒーが行ってしまう。

まだ半分も飲んでいない。


「くそ......!くそがっ!!」


体は完全にひきづりこまれ、白色の空間へと吐き出された。

徹夜続きで身体中を浮遊感が包んでいると言うのにさらに気持ち悪い感覚に陥り胃の中身をリバース。

くっそ、コーヒーが、最後に飲んだコーヒーまでがリバースされてしまった。

悔しさと憎しみに顔を歪めていると呆れたような声が耳に入る。


「あんた、神様の御前で吐くだなんて......まぁいいわ、貴方には異世界に行ってもらうわ」


「おまえか」


白色の神に月のように白い肌、緋色の双眼がこちらを冷めた様子で睨む。

美人、世間一般では美人で分類される生物。


「え?私はお前じゃないわ、私の名前は最高神アマテラス様よ、崇めなさい」


「......てめぇかぁぁぁぁぁ!!」


「ひっ!?」


素早く駆け寄り全力を込めた右ストレートを放つ。

こいつがコーヒーの仇、絶対に許すまじ。

だが虚しくも拳は中を切る。


「あんた、いきなり神様に殴りかかるとか......」


いつの間にか自分の背後に移動していた女神へと右フックを仕掛けるがやはり回避、全力で睨みながら回転蹴りを叩き込むがやはり回避。

クッソこのクソ女。


「えぇい!ちょこまかと!」


「落ち着きなさいって、私は異世界へ送ってあげるって言ってるのよ?」


「これだから女は嫌いなんだ、自己中心的でうるさい鬱陶しい」


「あら、ひどい性差別者ね貴方」


「コーヒー飲み終わってなかったのに......」


「あんな不健康な飲み物飲むだなんて......」


全力で右ストレートを放つが回避された。

このクソ野郎等々不健康な飲み物とかコーヒー様を侮辱しやがったな!


「全くこの美しい女神にそんな言葉を吐くだなんて」


「テメェみたいなアバズレビッチよりもコーヒー様の方が神々しいに決まってんだろ!」


くっそ、アッパーカットもハズレか。

おそらくこの空間ではこのクソ女は殺せない。

というか待て、ここはどこだ。

自分は先ほどまで働いていたはずだ。

この白い空間に突然ひきづりこまれて......


「そうよ、貴方は殺すのはあれだと思ったから私が直々に天界に引き入れてあげたわ」


「そうだ......俺は......ってコーヒー飲めてねぇじゃねぇか!!」


「はぁ、落ち着いたと思ったらまたコーヒーコーヒーと。もはや中毒ね」


「はぁ......はぁ......このくそ女」


鬼を殺すかのような目をできていると思う。

ふぅと彼女はため息を吐いて指を捻る。


すると何もない空中から何十本も美しい剣が出現し地に突き刺さった。

どれもこれも禍々しいオーラや神々しいオーラが漂っている。

サブカルチャー的に言ってこれは聖剣とか言われるものだろう。


「さて、落ち着いたらだろうし説明するわ。これは聖剣と言われーー」


「死に去らせやこらぁ!!」


地に突き刺さる剣を引き抜き全力で投げつけた。

空中で回転しながら自称神の元へと剣が飛んでいくがやはり回避される。

コーヒーの恨みが、復讐しろと囁いている。

この女は殺さなきゃダメだ、このクソ野郎絶対にミンチにしてやる。

そんなエールが耳に聞こえてくる。


先ほどからこの女は瞬間移動的なものをして背後に移動してくる。

つまり。


「きゃっ!?」


「バレバレなんだよ!!」


自身の背後、そこへ向けて右手で岩に突き刺さった剣を引き抜き、思い切り投げつけたのだ。

心底驚いた顔で自称神は腹に刺さった聖剣を見る。

近場にある剣を引き抜いて全力で走り出す。

この女は殺す、コーヒーの恨み晴らす時。

剣を振りかぶり、思い切り斬りかかるが女神とやらの体は一瞬で消滅し剣は宙を切った。

途端、脳がスーッとしてくる謎の感覚が来て、頭上が緑色に輝く。


「回復魔法よ。死人も蘇らせるものだし脳の細胞が死んでそうな貴方でもまともに戻るでしょ」


「おっ俺は一体何を......」


「そうね、神には敬意を持ちなさい。私のことはアマテラス様と呼ぶといいわよ」


眼前までアマテラスを名乗る女神はより、慈悲を与えるように手を差し出してくる。

なんて神々しいのだろうか、なんてーー


『ダメよ、私のこと忘れたの』


大宇宙的な背景、眼前に浮かぶコーヒーカップ。

何かとても大切なもの、忘れてはいけなかったもの。


『君の名はーー』


『コーヒー、コーヒーよ。貴方に飲んでもらえなかったコーヒー。さぁ思い出して』


憎くてしょうがないのだろうか!!


「死に去らせ!!」


「なっ!?」


全力で先ほど投げつけた剣を振り回した。

女神とやらの腹が掻き切れ、血飛沫が宙を舞う。

コーヒーのエールがなかったら洗脳されてしまっていたところだ。

クッソこのクソ女神め、洗脳しようとするだなんて。


「はぁ......げほっげほっ、あんたをこれ以上ここに置いておけないわ......とっとと異世界に行ってしまいなさい!!」


「くっ首を洗って待ってろよ!!絶対にお前をぶっ殺す!」


体が宙へと浮いていく。

くっそ、手が届かない。

さっき投げまくった聖剣とやらが自分の隣を飛んでいく。


絶対に許早◯え。


「はぁ......これだから人間は......」


達観してるあたりムカつく、コーヒーの神様というのならば土下座し感謝し信仰心を捧げたのに。


結局四徹明けのぎゅーぎゅーの通勤列車に揺られるが如く吐き気や浮遊感に包まれた。

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