死神の俺様がコンビニでバイトしているが、何か?
遥風 悠
プロローグ
人間族に紛れ込むことなど死神、詰まる所の神族である俺様にとってみれば造作もない。根本的に自分達以外に種族の存在を信じない無知、低俗な人間族では致し方ないという同情の余地が皆無というわけではないが。それにしても昔以上に警戒のレベルが低い。比べようもないまでに。力弱く創られた結果、他種族の存在を潜在意識からも抹消してしまったのだろうか。記憶の操作とまではいかないが、記憶の消去を行うとは、ひとまず器用な連中だと褒めておいてやろう。一応これから世話になる種族だ。悪口雑言の数々を並べるだけでは申し訳ない。近しい距離で観察し詳細なサンプルとして分析した上で、本業に戻るとしようか。
書店で購入した『絶対合格 面接の極意!』とかいう本に記されていた通りの質問をぶつけてくるものだから、答えに窮することはなかった。助かったというよりむしろ戸惑ってしまう程。読心術を習得できない人間族にとって会話からその人物像を探ることは重要であるはずなのだが、面接の時間にしても15分に満たなかった。本には50の質問と模範の答弁が書かれていたが、頭に入れておく必要などなかった。日常業務が多忙すぎて面接の時間すら十分に取れないのか、人手不足でとにかく人員が必要なのか。随分あっさりと面接は終了した。
面接の翌日、約束した時刻、13時かっきりに電話が鳴った。律儀というか何というか、地域によって多少の差はあるが、神経質なのか根っからの馬鹿正直なのかクソ真面目なのかは知らないが、人間族は時間に正確である。悪いことではないが悪寒が走るほど時間に束縛されている。ただしそれは個体の生存期間が極めて短い為。さらに加えるならば、24時間内の活動可能時間もどんなに頑張った所で20時間がやっとだろう。睡眠に抗うことができない点は大きな欠点の一つ。肉体的側面は軟弱、特異・特殊能力の類もない。脳味噌も軽い。これでは時間に脅迫を受けるなという方が無理な話か、可哀想に。
「昨日はお忙しい中、時間を割いていただきありがとうございました。お気持ちに変わりはありませんか。・・・はい。それでは明日9時までに店舗へお越し下さい。」実に簡単なものだ。これにて採用決定。俺様のアルバイト生活が始まるわけだ。コンビニで人間族と共に働く、生活を共にするというのは反吐が出るが、一年間は仕方あるまい。死神法典に逆らうわけにもいかないからな。おとなしく時の流れに身を任せるとしよう。
翌朝8時半。おはようございますという俺の声は誰にも届かなかった。2台のレジには常時4、5人ずつの客が列を作り、店員3名は息する間もなく客遇(きゃくあしら)いをしていた。その間にも我先にと人が自動扉を抜けてくる。朝ピークというやつなのだろう。若干時間帯が遅いようにも思えるが、そんなことはどうでもよい。それなりの繁盛店ではあるようだ。
扉ひとつ隔ててまるで別世界。経済活動が生死を支える種族ならではの現象。人間族には見慣れた光景に違いないのだろうが、なかなかに異常な風景として他の種族には映るのだ。俺は10分程、雑誌コーナーから店内の様子を伺っていた。キビキビ無駄なく、店員そして客までもが計算された行動を心がけている。そのくせ、人間族というのは斉一に動きすぎる。時間にこれほど細やかな種族でありながらどうして、非効率極まりない行動をとるのか。少し時間をずらせば待ち時間が削減されるのではないのか。この矛盾に疑問を抱かず、もしくは抱きながらも知らぬふりをできてしまう点は理解に苦しむ。それほどまでに人間社会とは厳しい戒律と秩序を有するのか。はぐれれば二度と合流できない大自然に身を置いているわけでもあるまいし。そんなことを考えていると、ある時点を境に客足が止んでいた。企業の業務開始時刻が近付いたということだろう。
「お待たせしました、竹田さん。どうぞバックルームにお入り下さい。」
まずはユニフォームの試着から。動きにくいとは言わないが、特殊な機能や効能が備わっているとも思わなかった。食品を扱う割には白色ベースとは程遠い色彩だったが、構わないのだろうか。
「う~ん、Lじゃ少し小さいですかね。竹田さん、結構大きいですもんね。」
「178センチに設定していますので、平均よりは大きいかもしれません。」
「ん、設定?」
「えっ、いや、その、せ、せ、背丈がまだ伸びているみたいで、ははは・・・」
「へ~、そうなんですか。男の人って二十歳こえても身長が伸びるって言いますもんね。」
焦った。まだ慣れていないというのは言い訳にならないが、人間界に堕りて間もない為に戸惑ってしまった。人間族の姿を選択する際、確かに設定はしたのだが。身長178センチ、年齢は25。社会人を2年経験し、一身上の都合により退職したと履歴書にも記入した。鏡で自分の姿を見る度に驚いてしまう現状ではあるが、ボロが出ないように気をつけねばなるまい。
「LLでちょうどいいみたいです。」
「うん。そうしたら売場に出ましょう。」俺は小柄な女性店長、谷口和子の背中を追うように売場へ出て行った。とりあえず、二十過ぎたら身長は止まると思うぞ。成長期間を延長した所で得策はなかろうて。単に肉体的負担が増すだけだろう。まぁ、どうでもいいが。
9時からの勤務は谷口店長と2名の従業員、そして俺の4人。今日は通常業務を2名の主婦従業員がこなしていく中で、店長が俺のトレーニングを実施するとのこと。今週中に一通りの業務習得を目指すということだった。何をするかは知らないが、店長が分厚いマニュアル本を引っ張り出してきたということは、人間族が5日間程度で覚える内容がそこに記載されているのだろう。望むところである。漏れなく重複なく効率よくといった感じか。最も俺であれば小一時間もあればその内容すべてを記憶することも可能であるが、まずは人間族に付き合ってやろう。
そういえばバックルームには他にも複数のマニュアルが存在した。頻繁に使うものだろうか、すぐ手の届く棚に5冊と、机の引き戸の中に3冊入っていた。別に興味があるわけではなかったが、時間潰しについ透視してしまった。人間族の数少ない特殊能力の一つ、忘却の特技はなかなか使い勝手が難しいとみえる。残すものと捨て去るもの、記憶の整理とまではいかないのだろう。もしくは辞典のような役割なのかもしれない。分からないことが出てきたらその都度調べるのだろう。
9時10分。この頃には遅めの朝ピークを作っていたビジネスマンたちはとうにどこかへ消え去り、店内はBGMが流れるだけの静けさを取り戻していた。そこへタイミングを見計らったように幾段もの番重を運び込むトラックドライバー。彼はおはようございますと入店すると一目散にバックルームへ消えていった。2便の納品ということだった。ちなみに夜の9時位に納品されるものを1便、夕方4時頃のそれを3便と呼ぶそうだ。日に3度も納品があるのか、なかなかに贅沢な話ではある。ちなみに今運び込まれた商品は
弁当、おにぎりといった類のもの。まず間違いなく人間族の昼食対応だろう。人間族の規則的行動特性を利用して、誰もいないうちに金のなる種を埋めてしまおうというわけだ。承知した。俺は一旦バックルームへ戻り、高々と積まれた番重を売場へ運ぼうと手をかけた時、谷口店長が俺を呼び止めた。
「待って、待って、竹田さん。今から検品をして頂きますので。」
「あ、はい。分かりました。」何も分かってはいないのだが、まずは伸ばした手を戻しておいた。何の検査をするのだろうか。まさか、毒か。店長は何やら電子機器を持ってきたが、あれをかざすだけで毒の有無が分かってしまうのか。以前は毒見をしていたと聞いていたが・・・いや、まてまて。そこまでの技術を人間族が獲得しているはずがない。食料とすればやはり味か。成分を分析、確認した上で合格した商品を売場へ出すということか。もしくは重さか。重量が規定値であれば合格品、検定品として売場に出せるわけだな。ふむ、理解した。小さく軽量でありながらコイツ、なかなかに高い性能を有する機械のようだ。どうりで弁当は中身がしっかりと見える包装になっているわけだ。よかろう、瞬時にその成分を分析した上で人間族の味覚について考察しておこうか。雑食で、地域ごとに食べるものが異なり、調理法まで多様という不可思議な種族。その味覚に関する分析。ふむ。神界への報告書としても悪くはない。
・・・数だった。ST(ストア・ターミナル)なる機器で各商品のバーコードをスキャン。するとあら不思議、ピッと確認音が鳴り画面に納品予定数量が表示されるのだ。『幕の内弁当:10』のように。あとは実際に納品された数を数えていく。慣れないうちは指差し確認。1、2、3、4、・・・燃やしてやろうかと思った。レンジで45秒チンする前に灰と化してやろうか。毒だの味覚だのと思い設けていた自分がバカみたいだ。恥ずかしさの為か怒りの為か、思わず赤面していたかもしれない。数くらい確認して納品してこい!間違い防止?間違えるな、仕事だろう、遊んでいるのではないのだろう。経済活動を行う貴様らにとっては生きる術なのだろう。人間誰にでも間違いはあるということか。まったくもってふざけている。それでよく業務契約を結んでいるな。金を払っているな。律儀で真面目な種族だと思っていたが、逃走経路の確保に余念がないだけなのか。常々責任転嫁のことしか考えていないのか。それとも種族の能力の低さを自認している結果なのか。慰めの言葉をかけるならば、もっと自分を信じていいんだよ、といった風か。まぁ、かけるつもりは毛頭ないが。・・・・・・・・・という思いを胸に今、店長と2人で検品を終えた弁当やらおにぎりやらを棚に並べているところだ。
入口から最も目に入りやすい弁当とおにぎりの陳列は記憶していたので、並び順に戸惑うことはなかった。というか、弁当はともかくおにぎりは並び順など決まっていないようだ。三角と円形を混在しなければいいそうで意外といい加減だ。15分もかからなかったと思う。陳列を終えて空になった番重を片付けると、次の仕事は清掃だった。ほうきとちりとりを渡されまずは外の駐車場から停車可能台数が10台弱と小さなスペースなのでひと回りして終了。続いてゴミ箱を・・・んっ?可燃、不燃、ペットボトル、ビン・カンの計4種類。面倒だな、全てを燃やすことなど人間族でも可能なはずだが。
ゴミ箱4ヶを空にしたあとに待っていたのは仕事なので仕方ないが、トイレ掃除だった。そして事件が起こる。便座を雑巾で拭いている時にボタンを押してしまったようだ。ピッという確認音とブーンという動作音。人間族の異臭に混じった怪しい臭いを感じた瞬間、
「プッシャー!!」水が勢いよく吹き出し扉を直撃した。
うぉ!ぬぅお~~~!
ウォシュレット。無論、水撃を躱して停止ボタンを押し事なきをえたが、つまらん機能だ。ふ~、危なかった。決してきれいな水とは言えまい。もしも顔にかかっていたらと考えると鳥肌が立つ。もう少しでパニックになる所だった。気色悪い。
「だ、大丈夫、竹田さん?何かすごい音が・・・あら~、水浸しだね。」谷口店長が飛んできた。
「ス、スミマセン。すぐに拭きますので。」
「竹田さんは濡れませんでした?」
「ええ、避(よ)けましたから大丈夫です。」
「そう、よかった。じゃあ、今モップを持ってくるのでちょっと待ってて下さい。」
「はい、スミマセン。」
竹田さんって、意外とおっちょこちょいだな。でもユニフォームは全然濡れてなかった。運動神経はいいのかな、ってことにしておこうか。早く人間界に慣れてもらわないとね、フフフ・・・
初日はレジに立つことはなく、ただひたすらに売場を整えていた。少しでも乱れている箇所、つまりは売れたということではあるが、そこの修正を行うのだ。商品を手前に出したり向きを揃えたり、商品名が見えるようにしたりと、実に退屈な作業である。だがしかし、にわかには信じられないが、これをやらないと売上が落ちるらしい。売場が汚いと客が離れるということなのだろうか。まぁ、知ったことではない。ただしこの手応えのない業務、店舗内の商品を調査するにはもってこいだった。単品ごとの数量、在庫数は少ないが、なるほど実に沢山の種類がみてとれる。2,863種類。これがこの店舗のアイテム数。人間が一人ないし二人通れるだけの狭い通路以外は全て棚。そこへ極力間隔を開けないよう商品が並べられている。商品広告、紹介のPOPは何点か掲示してあるものの、それ以外の遊びは少なかった。各商品に値札が付いているだけで目立つ装飾はなし。スペースを使って何かの宣伝を行うということもほとんど見られない。納品された商品を単に陳列しているだけなのだろう。simple is best.従って陳列棚は華やかでも煌びやかでもない。タイプの異なる小売業と比較すると殺風景と俺には映る。だからこそなのだろう、日用品と呼ばれるようなものは、これだけ狭い売場面積にもかかわらず、大概置いてあるのではなかろうか。この商品本当に売れているのかという物もあるが、これらも含めてコンビニエンスストアなのだろう。ただ丸一日、24時間あけておけば便利という時代は過去のものとなったようだ。・・・なんて事を考えていられるのも束の間だった。
初日の勤務は13時までとういことで、今は帰路についている。あすからは17時まで。別に疲れたというわけではないが、やや気持ちが重い。あまり気分は良くない。不快だ。
朝ピークが可愛く見えた。昼ピーク、その感想を一言で言うなれば、なんとなく、理由はないが、殺意を覚えた。俺はレジに立っていたのではなく商品を整頓しているだけだったので直接関わったわけではないにもかかわらず、だ。どこからともなく人間族が溢れてきては食料を漁っていた。ちょっとしたパニックの熱を帯びながら弁当、おにぎり、サンドイッチ、パスタ、ペストリー、カップラーメン、ドリンクにスイーツ、タバコ。2、3日何も食っていないのではないかと思われるくらいに皆、迷うことなく一目散に食料を求めた。脆弱な人間族がよくもまぁケガもせずにと、ある意味感心させられた。そしてレジに並ぶ。結果、長蛇の列が形成されるわけだが、何故あれだけ時間を尊ぶ人間族がこの無駄に耐えることができるのだろうか。この待機時間は既に織り込み済み、捨ててかまわぬ時ということなのだろうか。それともこの時間を犠牲にすることでより多くの時を買っているのか。
それはさておき。室温は3.8度上昇。客数が最も膨れ上がった際はレジ回りに歩くスペースすら無くなっていた。何かこう、飢えた獣が死肉を貪るようで、俺としては見ていてあまり気持ちの良いものではなかった。
翌日からトレーニングの中心はレジ打ちに切り替わった。見た目には簡単そうなレジスター。客から預かった金額を打ち込めば自動的に釣り銭が表示される。バカみたいに慌てて小銭の勘定を間違えないよう注意すれば誰でも扱える。そう、よくできたもので見た目通り簡単な作業なのだ。こう述べると誤解を招くかもしれぬが、人間族の小知を結集させたのだろう。優秀な者ではなく無能な者に焦点を合わせ、誰にでも使いこなせるよう操作はシンプルな様式にまとめられていた。それでいて多様な業務をレジ1台で対応できてしまう。お前は一体何の業務を実施したいのだ?というレジからの問いに人間族はボタンもしくはパネルをタッチして応える。いわばスタートボタンさえ間違えなければ、あとはレジの指示に従うだけで業務遂行が可能なのだ。トレーニングを受けながら思わず唸りそうになった。目は見開いていたかもしれない。慣れてしまえば画面の上部に出てくるメッセージもすっ飛ばしてしまうのだろう。つまづいた際、参考にする程度か。もちろん俺には必要ない。1度見れば忘れることはないからな。何はともあれこのレジスター、悪くない。
混雑する時間帯を避けて徐々に接客、レジ打ちを任せていく方針のようだ。ピーク時を除いて俺がレジに立つ時間が段々と長くなっていく。別にピーク時でもやってやれぬことはない。少なくともパートの主婦よりは素早く打つことも可能だが、あまりに覚えが早すぎるのも良くなかろうということで、人間族の習得レベルに極力合わせているつもりだ。そしてレジ打ちの時間が長くなるほどに人間族、まぁ客だな、と接する回数が増えていくのだ。
また来たか―まだ勤務日数の浅い俺ですら顔を覚えてしまった爺。それもそのはず、日に3度も4度も来店するのだから。しかも買うのは決まってカップ酒。安い日本酒をワンカップ購入していく。まとめて買えばよかろうにと思うのだが、凡俗の考えるところはよく分からない。加えて大抵、酒臭い。我慢できぬとは言わないが、酔っ払っているのは明らか。齢の加減も手伝っていつもフラフラしている。危なっかしくて仕方ない。そんな翁がまた来店だ。
「いらっしゃいませ。」レジに立つ俺。挨拶はせねばなるまい。
「お~う、また来たよ~。」
見ればわかる。ご機嫌というか、お気楽というか、いつも通り出来上がっているようだ。フラフラしているので一直線とは言い難いが、寄り道することなく目的の酒売り場へ直行するとお目当てのカップ酒を手にレジへやってきた。まるで恋人を連れて歩くように、なんとも素敵な笑顔を携えて。
「128円になります。」
「あいよ~。ん~、ちょ~っと待ってな。今、お金を出しますからね~。」
こういう時にどんな顔をして待っていればいいか、ということはマニュアル本に載っていなかった。視線をどこに向ければいいのかも。まったく、前もって小銭を用意しておけ。いくらボケが始まっているとはいえ、さすがにコイツの値段は覚えていよう。あれだけ似たような形状のものがある中で、毎日間違えることなく持ってくるのだから。
「お兄さん、新入りじゃろう。」唐突に話しかけてきやがった。さっさと帰って一杯引っ掛けて眠ってしまえ、心の中で叫びながら質問に答えた。
「あっ、はい。竹田といいます。よろしくお願いします。」我ながら礼儀の良い店員だと思う。
「頑張って店長を助けてやりぃよ。」
「えっ、あ、はい。えーと、ちょうどお預かりします。ありがとうございました。」
「ど~もありがとさん。また来るよ~。」フラ、フラ、フラと、酔っぱらいは店を出ていった。
「竹田さん、米山のおじいちゃんに好かれちゃいましたね。」ある日の昼休憩中に谷口店長が話しかけてきた。どこか嬉しそうに感じたのは気のせいではなかったと思う。
「え、米山さん・・・ですか。」
「ほら、いつもお酒を買っていくおじいちゃん。」
「ああ、米山さんっておっしゃるんですね、いつもワンカップを買っていく方。大体は酔っ払っていますね、フラフラで、顔を真っ赤にして。」俺の言い方には多分、刺があったというか、あのジジイのこと嫌いですよという雰囲気を帯びていたのかもしれない。
「うん、そうですね・・・でも悪い人ではないんですよ。それにね、ここだけの話、人見知りみたいで、外からレジに立っている人を確認してからお店の中に入ってきたりするんですよ。ちょっと可愛くないですか。」
「そう・・・ですか。」どこか谷口店長が米山という老人を気にしている風ではあったが、この頃の俺にはそれを理解してやる義理も人情もなかった。ましてやちょっと可愛いという感情など皆無だった。というか、そういうのを可愛いというのはどうかと思う。母性本能なのだろうか、少なくとも俺には可愛いという情は生まれなかった。
・・・さて、俺様奮闘記の前置きはこの辺にしておこうか。これから1年間、下界での生活を余儀なくされ、人間族と共に働かざるを得ないわけだが、時の間のことだ。我慢するしかあるまい。罰は受けねばなるまいて。
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