7-6 クリスマスコンサート開演!
学内で課題曲の卒業試験に合格した真智子と絵梨は、在学中に演奏した課題曲の中から1曲選曲し、来月、コンサートホールで行われる卒業演奏会でのピアノ演奏の卒業課題を残すのみとなった。桐朋短大での集大成として学外で発表する卒業演奏会での曲として真智子はシューベルトの『即興曲集 第3番 D 899 Op.90』、絵梨はシューマンの『幻想小曲集』Op12.『5.夜に』を選曲し、それぞれ練習に励んでいた。
そんな中、いよいよ、慎一と諒のクリスマスコンサートが順調に開催される運びとなった。コンサート前日までに慎一も諒もそれぞれ忙しい合間を縫って、コンサートの流れについて打ち合わせを済ませ、サロンもクリスマスツリーやイルミネーションで飾られ、お茶会風にテーブルが設置され、すっかりクリスマスムードに包まれた。そして、コンサート会場のサロンに集まるサクマピアノ教室の生徒たちや音楽仲間それぞれにクリスマスケーキやお菓子、飲み物、プレゼントなども準備されていた。
そして、コンサート当日、萌香は舞台には上がる予定はなかったものの、6歳の誕生日のお祝いもあって、ふんわりとしたレースの効いた水色のドレスで可愛らしくお
真智子は演奏動画の撮影と編集を覚えるため、スタッフとして撮影係の佐久間宏樹の手伝いに回ることになっていた。
萌香は真智子がコンサートの間、そばにいれないことを知り、がっかりしていたが、真智子が撮影の手伝いをしなければならないことを話して聞かせているちょうどその時、最近、仲良くなったピアノ教室の生徒の一人、
——そして、開演時間になり、サンタクロースの衣装を身に纏った慎一と諒が二台のピアノが設置された舞台中央に現れた。
「クリスマスコンサートにお集まりの皆さま、今日は僕たちの演奏を聴きに来てくださってありがとうございます!僕たちから皆さまへのささやかなクリスマスプレゼントとして、先ずはクリスマスメドレーをどうぞお楽しみください!」
慎一の挨拶の後、慎一と諒のふたりは深々とお辞儀し、それぞれ、舞台の上のグランドピアノに向かった—。
「ワン、トゥー、スリー、フォー!」
諒の掛け声の後、慎一と諒のクリスマスメドレーの1曲目『ホワイトクリスマス』の連弾が始まった。ふたりの息の合った軽やかなアドリブの名演奏にサロンに集まった人々は魅了され、会場のサロンは和やかな空気の中、歓声や拍手が飛び交った。続いて、2曲目『きよしこの夜』、3曲目『クリスマス・コンチェルト』、4曲目『赤鼻のトナカイ』、5曲目『ジングル・ベル』、6曲目『サンタが街にやってくる』、7曲目『もろびとこぞりて』、8曲目『ヒイラギを飾ろう』と続いた。
萌香は隣りの席の茉莉花とはしゃいだり、手を繋いだり、嬉しそうに耳打ちしたりして、すっかり有頂天な様子で、楽しそうに聴き入っていた。撮影係の真智子は動画を撮影している佐久間宏樹の隣りで写真撮影をしながら、ふたりの名演奏に聴き入っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます