暴食令嬢と赤の隣人

七転十五起

第1話 紅猫

 序幕  殺人現場


 穂馬羅(ほまら)高校正門前、辺り一面は足の踏み場がないほど真っ赤だった。

 目の前に広がる血の海が、街頭にてらてらと照らされ、妙に鈍い赤みを照り返して輝いていた。立ち込める血の臭いで、俺は胃のむかつきが止まらなかった。

 だが俺は、目の前に横たわっている彼女のためにも、立ち向かう他なかった。

 返り血で紅く染まった、猫の面を被る殺人鬼は微動だしない。

 やけに目立つ金色の目だけが、こちらをじっと覗いていた。

 あいつが、連続猟奇殺人鬼。

 ――紅猫。


 ◆


 第一幕 日向楓と紅猫


 四月の始業式の日の朝。

 暖かい日差しが俺の顔を照らし、新学期の朝を告げた。

 高校生活も二年目。心機一転、また毎日を過ごしていこう。

 眠っている体に力をみなぎらせ、ベットから起き上がり、爽やかな一日の始まりを迎える。

  ……はずだった。

「ちょっと康一! いつまで寝てんの!?」

 いきなり、お袋の怒号で俺は強制覚醒させられたのだった。

 まったく、朝から騒々しい。穏やかな空気が流れるこんな日に、何で俺は怒鳴られて起床しなければならないのか。俺は、ありったけの不満を顔に出し、ゆるゆるとベットから起き上がった。ふと、目覚まし時計を見詰める。

「……あれ?」

 目覚まし時計が、止まっていた。

 早朝の四時二七分という、とても縁起の悪い箇所で電池が切れてしまっていた。

  てことは、アラームが鳴る訳がない。

 つまり……。

「あのー、今何時でしょうか?」

 思わず俺は、お袋に敬語で尋ねてしまった。

「始業三十分前だ、この馬鹿ァァァーッ!」

 お袋の爆発の勢いで、俺はリビングへ吹っ飛んでった。

 幸い、自宅は最寄駅と目と鼻の先だ。

 七分後の電車に乗れば、十分前に学校の最寄駅に到着、そこから猛ダッシュで三分、五分で自分の新しいクラスを確認して、始業式の始まる体育館へ直行すればOK。完璧だ。何の問題もない。だが朝食は取る時間がないのでパスした。

 その分、素早く身支度を済ませ、自宅の最寄駅へ駆け込んだ。改札を高速道路のETCのように素早く通過後、ホームの階段を一気に飛び降り、閉まり掛けた電車のドアへ弾丸めいて飛び込んだ。

「……間一髪、間に合った!」

 車掌が『駆け込み乗車は危険ですのでお止め下さい』というアナウンスをするが、登校初日の遅刻が掛かっている俺にとっては、背に腹は代えられなかった。本当に申し訳ないと思っている。持って生まれた運動神経の良さに、俺は改めて感謝をしたのだった。

 そして、二駅先の学校の最寄駅。

 流石に、この時間では俺の同じ学校の生徒は見当たらず、主に社会人が駅構内にはごった返していた。俺はホームの階段を駆け上がり、改札まで猛ダッシュを開始した。しかし、定期券を自動改札へかざそうとした次の瞬間、

「きゃっ!」

 俺は運悪く、一人の少女にぶつかってしまった。

 お互い急いでいたせいか、互いの鞄の中身を床にぶち撒けてしまう。

「い、痛いよぉ……」

 少女は、突然の衝撃に今にも泣きそうだった。

 集まってくる野次馬たち。すぐにこの状況に対応しなければ、俺は遅刻する上に面倒事に巻き込まれかねない。とにかく、事態を収拾させなくてはならなかった。

「ごめんなさい! きみ、怪我、なかった?」

「え? 楓の髪はふさふさですけど?」

「いや、毛が無かった、じゃなくて、どこか、痛くなかったか?」

 っつーか、そこでボケるか普通。昭和か!?

「うぅ、お尻が痛いです、って、何言わせるんですか! この人、痴漢です!」

「ちょっと待て! 落ち着こう! なっ?」

 理不尽!?

 何なんだよ、この子、超面倒臭いよ!

 俺は遅刻するわけにはいかないのだが、痴漢の濡れ衣を着せられそうになってはそうも簡単にここを去れない。もし、今ここから離れたら、『痴漢の容疑で逃走する男子高校生』として、状況証拠が揃ってしまう。新学期早々、それは絶対に回避しなければ!!

 ここは一つ、彼女をなだめないと。

 まず、俺は彼女の服装を見て尋ねた。

「君、新入生?」

 彼女が着ていたのは、俺の高校の制服だった。

イタリアの有名デザイナーが考案したという日本でも珍しいタイプの制服で、マニアが大金を積んでも欲しがるという噂(嫌な噂だ)があるほどの代物らしいこの制服。その見た目は、まるでコスプレである。

 こんな格好で歩いているのは、秋葉原のメイドカフェ従業員か、うちの高校の生徒ぐらいだろう。紺色のスカートとベストに分かれたそれは、ベスト前面は燕尾のように分かれるボタン留め式、スカートはややゆったりと多目の生地であしらわれている上に、やたらとフリルやレースが見られてるので、全体的にフリフリの少女趣味(ロリータ)調である。学校指定のソックスもリボンが付いていている始末だ。手に負えない。そして、白地のブラウスのやたら大きい襟に、校章の付いたブローチで首元のスカーフを留めているとくれば、学校でなく、何処かのお屋敷にいても全く違和感のない服装といえる。

 ちなみに、学年ごとにリボンの色が違う。

 今年は、三年が黄色、俺たち二年が青に対し、彼女は一年の赤色である。

「さっきから何じろじろ見てるですか、えっち」

 彼女の制服の構成を考えていたせいか、俺は彼女を凝視していたらしい。

まずい。これ以上の誤解をさせないために、俺は慌ててフォローをした。

「あ、いや、一年が何でここにいるのかなーって。ほら、入学式は在校生より早く登校するはずだろ?」

 うちの高校の入学式は始業式よりも早く始まる。

 なので、実際なら、彼女は既に登校しなければならないはずだ。

「か、関係ないじゃないですか! ただ、寝ぼけて反対の路線に乗っちゃって、慌てて戻ってきたなんて、死んでも言えませんッ!」

「いや君、今、しっかり言ったよね?」

 彼女はしまったと思ったのか、急に顔が真っ赤になった途端にむっつりとむくれ、目に涙を溜めながら反論してきた。

「そ、そういう貴方だって、もう急がないと始業式間に合わないんじゃないですか?」

「やっべぇ、そうだった……!」

 俺は床に散らばる荷物を大急ぎで片付けると、彼女の鞄を彼女へと放り投げた。

「これは返す! ごめんなさい、それじゃっ!」

「え、ちょっと!?」

 後ろから抗議の声が聞こえるが、聞こえないふりをする。状況は悪化した気もするが……少なくとも、俺が痴漢ではないことは周知できたはずだ。

 ともかく、ここでのロスタイムを取り戻すがごとく、改札を後にすると、俺は、人生の中での自己新記録を出す勢いの走りをこの後見せたのだった……。


 俺が、無事始業式を終え、教室に戻ってきたあと、鞄の中身を確認した。すると、見覚えのない定期入れの中に、うちの高校の一年の学生証が同封されていた。


『一年A組  日向 楓』


 もしや、朝にぶつかったあの子だろうか?

 ということは、拾い上げたときに間違って持ってきてしまったのか。

「あー、まいったな。持ってても仕方がないし。気まずいけど、……届けるか」

 俺は気乗りはしなかったが、彼女のクラスまで定期入れと学生証を届けに一年A組へ足を運んだ。

数分後、俺は教室で学生証に明記された名前を読み上げ、彼女の同級生の女の子に取り次いでもらった。

 すると、その同級生は、来るのが遅いといわんばかりに、明らかに目で俺への抗議を示した。最初こそ、上級生への態度がなっていないとムッとしたが、すぐにその抗議の意味を理解した。

 彼女――楓は泣いていた。

 しかも、号泣というより、もはや涙の洪水だ。

 もう、周りにいるだけで憂鬱になるくらい、楓の机の周りの空気は黒く淀んでいた。

 いやまて、定期入れと学生証を無くしたくらいで、この有様かよ?

 余程、彼女は定期入れを無くしたことがショックだったらしい。

 そんな状態の中、俺は右手に持つ問題のブツを届けなければならないのかと思うと、鬱陶しさが先走り、このまま出直そうかと考えがよぎる。しかし、意を決して俺は自分で彼女に届けることにした。何故なら、俺の不注意で他人が泣いているのなら、俺が責任もってそのフォローをするべきだからだ。そうだ、責任感だ。

 俺は教室に入り、楓の前に定期入れを差し出した。

「探してるものは、コレか?」

 楓が泣き腫らした目で、俺の右手に持っているものを確認すると、小さく頷いた。

「ありがとうございます」

 おずおずと上目遣いでお礼を言う楓。そして勢いよく俺の手から定期入れを奪い取った。難なんだコイツ?

「これがなかったから、あの後、改札からなかなか出られなかったんですよ? だから、なくなった時、すごくショックで、悔しくて……。駅でぶつかったときになくなったんだーって気が付いた時、貴方に盗まれたと思って。そしたら、悲しくて涙が止まらなくて……。」

「盗まれた、って――」

 今、確信した。

 こいつにフォローは必要がない。

 そして、泣いてるポイントもずれてる。

 さらに、どんだけ俺を悪人扱いすれば気が済むんだ。

「でも、ちゃんと届けてくれた。貴方は悪い人じゃなくてヒーローだったんですね!」

 んんんんんん!?

 急転直下、俺は悪人からヒーローになっていた。

 あれか、正直者はみな良い人みたいな性善説の持ち主か?

 自分に親切にしてくれた人は、全部善人だなんて楓は思うのか。

 さっきまでの悪人扱いが嘘のようだ。

 俺は、満面の笑みで涙を拭きながら礼を言う一年女子に対して、本当に色々と面倒臭くなり、楓にブツを押し付けると逃げるように帰っていった。


 で、そんな逃げ帰る俺の姿を見た楓の目には、さながら俺がマントを翻し颯爽と去っていく白馬の王子様のように映ったそうだ。

「もう、ちょーカッコ良かったよ! 先輩は楓の正義のヒーローだね! 大好き!」

 始業式から一週間後、俺は何故か楓と恋人になった。

 今でもこの状況が俺は信じられない。

 だって、こいつ、いきなり昼休みに俺の教室に乗り込んできたかと思えば、いきなり俺に抱きついてきて颯爽と俺の唇を奪ったのだ。

「本日の今より、一年C組日向楓は、二年A組荒木康一先輩と交際することを誓います!」

 下級生のエキセントリックな告白に、俺はただ呆然と状況を飲み込めずに上の空になってしまっていた。あとは周囲が勝手に盛り上がり、俺は引くに引けずに楓との交際をスタートさせた、というわけである。

 ……正直言って、この女はヤバイ。

 思い込みが激しく、盲目的で、うん、ヤンデレちゃんだった。

 その様子を見て、楓の校内で付いたあだ名が『美女は野獣』。

 ちなみに俺は『野獣のオモチャ』。

 学年の殆どが、俺に憐憫の眼差しを向けていたらしい(友人談)。


 そして、ゴールデンウィークを目前に控えた、4月末。

 

  深夜、俺の携帯に着信が入った。

 携帯電話に表示された名前は楓だった。

 珍しい。SNSのメッセージのやり取りじゃ物足りなかったのか?

 楓の家は、門限があったり、規則があったりで、付き合っているこちらも、その制約の影響を受けている。例えば、門限二十一時を過ぎると、携帯電話の通話さえも禁止される。おかげで、夜に、電話でお互いの寂しさを紛らわすことは殆ど出来ない。だからこそのSNSでのやり取りだったのだが。

  取り合えず、十数コールはしている携帯に出てみることにした。

「どうした? まだ寝付けないのか……?」

 実際、俺がそうだしな。

 なんだかんだ言って、楓とのやり取りは楽しい。

 これは交際してみてよく判った。俺と楓は相性がいい。互いにそう思っている。

 しかし、受話器から聞こえてきたのは、彼女の声と違っていた。

「君が、荒木康一君、かな?」

 受話器から聞こえてきたのは、気障りする金切り声だった。恐らくはヘリウムガスか、変声機でも使っているのだろう。

「……誰だ、お前?」

「まいったね、質問には質問ではなく、回答で返して欲しいんだけどな。もう一度言う。君が、荒木君かな?」

 金切り声は呆れたような口調で話す。いたずらの上に、人を小馬鹿にするとは。

 むっとした俺は、乱暴に回答する。

「そうだ、俺が荒木康一だけど、何の用なんだよ?」

「それが人と話す態度?。君はどうやら礼儀と言うものを知らないようだけど」

 どうやら向こうは完全にこちらを卑下してるようだ。

 文句を言おうとすると、こちらの言葉を相手が遮る。

「まぁ、いい。瑣末なことだ。本題に入ろうか」

 一体、何だった言うんだ、コイツの目的は?

「荒木君、私は、君の恋人の携帯を拾ったのだよ」

 ……俺は首を傾げた。

 なんで楓は外に出た?

 門限も決まっているので、コンビニに行こうにも両親が許さないはずだ。

 不可解に思っていると、相手が勝手にまた喋り始めた。

「で、そこで履歴を見たところ、君の名前が載っていた。しかも、ここ短期間で連絡を密に取っているようで、履歴数も沢山あった。これは間違いなく親密な相手だろうと思った私は、すぐに君へ連絡を取るべきだと思ってね。このように親切心でお電話した次第なのだよ」

 ……胡散臭い。

ならば、わざわざ声を変える必要はあるのか?

それに、ひとつの疑問が浮かぶ。

「何で『恋人と分かった』んだ?」

ただの親友かもしれないというのに、こいつは一番最初に『恋人の携帯』と言った。

 今、話してる相手は、赤の他人なのに!

 くすくすと受話器越しに相手が不愉快な笑い声を漏らした。

「それは、簡単な推理と勘だよ。けど、どうやら図星のようだ、君の反応からひしひしとそれが伝わってくる」

 馬鹿にしているような講釈に本気で我を失いそうになったが、すんでで踏み留まり、本題を聞き出す。

「一体、何が目的だ?」

「だから、この携帯を君に届けたくて電話しているんだが。そんなの、分かり切ったことじゃない? 今、穂馬羅高校正門前にいるんだ。少し、出てこられる?」

 こいつは、相変わらず横柄な態度で俺と話を続けるつもりらしい。

 いちいちその口調が鼻につくが、門限がある彼女が向かうのは困難だ。

 如何にも怪しいが、ここは俺が預かりに行くのが妥当だろう。

「……分かった。三十分でそこへ行くから待ってろ」

「待ってろ? 随分と乱暴な言い方だな。君には急いでもらわないと困るんだ。三十分とは言わずに十分で駆けつけて欲しいな」

 この要求には、さすがに我慢は出来ずに、俺は痺れを切らした。

「無茶言うな……! 俺の家は学校の最寄駅まで二駅離れてるんだ。しかも、ローカル線だから、この時間にもう電車がない。自転車で飛ばして三十分が妥当だぞ」

「それは非常に困ったね。早くしないと、君の恋人が事切れてしまうのに……」

 事切れる? 楓が?

 こいつは何を言ってるのだろうか?

「では、君をたった十分でここまで向かわすだけの気力を与える『魔法の呪文』を教えよう。とっておきの『呪文』だ、よく聞けよ」

 そんな、通常の三倍で行動なんてできるかよ、俺の自転車赤くねーぞ。

 そんなことを考えてた次の瞬間、奴の言葉を聞いて、理性は吹き飛んでいった。


「私はね、連続猟奇殺人事件の犯人、巷を騒がす真夜中の解体屋、紅猫だ。名乗りが遅くなったね。はじめまして」


 思考が凍りついた。

 紅猫とは、数年前から続いている猟奇殺人事件の犯人で、殺害方法は毎回違えど、最終的には遺体を五体バラバラにして、周囲に飾り立てるという史上最悪の殺人鬼。犯行は夜中に行われるためか、過去の目撃情報はほんの一件だけだ。

 その僅かな目撃情報によれば、全身に真っ赤な返り血を浴びた、ネコミミ姿の犯人という、奇妙奇天烈なものであった。証拠らしい証拠は現場に一切残さないため、プロの殺し屋説、怨恨絡みの計画的犯行説、はたまた妖怪・魔物説だとか、突拍子もない憶測が飛び交っている。

 その得体の知れない紅猫が、今、受話器越しに、居る!

「ははは、驚かせちゃった? 人殺しと話す機会なんて超レアな体験だね?」

 フリーズした思考回路を懸命に動かす努力をした。

 受話器越しの紅猫が持っている携帯電話は彼女のものだ。

 そして、事切れるとこいつは口走った。

 と、いうことは、いうことは、だ!

「てめぇ、……楓を、殺したのか?」

「あぁ、それは言えないな? 自分の目で確かめるといいさ」

 ……こいつ、よくもぬけぬけと!

「今ね、横に『寝転がってる』よ。まだ生きている。救急車を呼べば、まだ助かるんじゃないかな? 彼女、君の名前をしきりに呟いているが、どうだ、聞くかい?」

「いい加減にしやがれっ!!」

 俺は、紅猫を怒鳴りつける。

「お前、穂馬羅高校の正門前にいるって言ったよな?」

「あぁ、いるよ。しかし、君が来るまでここに居座るつもりもないし、義務もない。それくらい、誰だってすぐに推し量れるはずだけど?」

「ふざけんな、今から行くからな!? そこで待ってろ!!」

 俺は通話を切り、すぐに家を出て自転車にまたがった。

 悔しいが、紅猫の言うとおり、電車二駅分を自転車で飛ばすだけの気力は湧いていた。

 怒りに震える俺の姿を、満月が照らしていた。


 穂馬羅高校正門前。

 そこに広がっていた景色を一言で言うならば、地獄絵図だった。

 一面が、赤、赤、赤……。

 人が幾重にも折り重なっているのが見えた。

 恐らくは、複数の人間が既に紅猫の手に掛かった後なのだろう。

 初めて見た死体の山に、俺は、堪らず胃の中のモノをその場でぶちまけた。

 堪え難い生臭さが立ち込める中、俺は見てしてしまった。

 街頭の明かりがはっきりと照らす、赤い人物の姿を。

 それは、血みどろの少女だった。

 返り血を浴びた全身は爪の先まで真っ赤に染まっていた。

 ワンピーススカートの裾から、まるで服を着たままシャワーを浴びたみたいに血が滴り落ちていた。その髪でさえ返り血に染まっているのか、とにかく全身が深紅一色だった。その顔には、その場に全く似つかわしくない猫の仮面を被っていた。

辛うじて、目元だけ仮面から覗く金色の瞳が見えるぐらいだ。

「紅猫――」

 俺は思わず呟いた。

 殺人鬼は、本当に待っていやがった。


(第2話へ続く)

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