第三話『惨劇!忍び寄る暗殺者!』

1 殺人的残虐拳法! 中国対青森県!(前編)

 前回までのあらすじ

 神風かみかぜトオルの父をサツガイしたのはアメリカ大統領であった!

 父の仇を討つため、アメリカ大統領に決闘を申し込む神風トオル!

 条件は地球ファイト決勝トーナメントでの優勝!

 迎えた一回戦! 優勝候補の最強ファイター、アトミック・ジョンの核ミサイル攻撃が襲い掛かる!

 しかし! 神風トオルは地球真拳奥義・地球光線でこれを撃破!

 辛くも一回戦を突破したのである!




「アイヤー!」


 顔面に何らかの衝撃を受け、跳躍中のちん・肉まんが墜落!


「んぐっぐっぐ!」


 不敵な笑みを浮かべ悠然と直立するりんごマン!

 第13回地球ファイト決勝大会一回戦第二試合!

 中国代表陳・肉まんと青森県代表りんごマンの試合が開始されたところである!


「一体何事アル!?」


 ほかほかの肉まん頭に糸目、鼻、口、ドジョウヒゲ!

 額には『肉』の焼き印! 紫色のカンフー服が実に中国的な陳・肉まん!

 得意の拳法の間合いに入らんとするも、正体不明の攻撃を受ける!


「んぐっぐっぐ! このオラにつかづぐ前にあの世いぎだっぎゃ!!」


 対するりんごマン!

 その姿は全長1メートル50センチ程の巨大なリンゴ!

 真っ赤なそのボディからは同じく赤い手足がニョキリと生えている!

 特に目・鼻・口といった器官は見受けられない!

 てっぺんのヘタに残る一枚の葉っぱがオシャレ!

 青森県の情緒を感じさせるボディである!


 体勢を立て直し、今度は地上からりんごマンへと迫る陳・肉まん!

 しかし!


 パギャン!


「アイヤー!」


 またも顔面に何らかの衝撃を受け弾き飛ばされる!

 おお、これは一体いかなる物理現象か!

 両者の肉体が届く距離ではない!

 衝撃を受けた陳・肉まんの額から肉汁が垂れる!


「アイヤー! 痛いアル!」


 正体不明! 見えない攻撃に晒される陳・肉まん!

 りんごマンは素手! 武器を持っているようには見えない!

 しばしの思考時間――そして気づく!

 攻撃が命中した箇所から……甘い香り!

 具体的には青森県産のリンゴの匂いだ!


「アイヤー! これは……まさか!」

「んだ! スノまさかよ!」


 そう!

 正体不明的未確認攻撃の正体は物理リンゴ!

 陳・肉まんは投擲されたリンゴでダメージを受けていたのだ!

 りんごマンは無からリンゴを生成し、超高速で投擲することができるのである!

 一般庶民諸君もリンゴを見たことはあるだろう!

 硬いリンゴが超高速で頭部に激突すればどうなるか!

 一般庶民程度の肉体強度ならば一撃で地獄行きなのは明らか!

 その一般庶民即死級の攻撃を受けてなお立ち上がる陳・肉まん!

 さすが地球ファイターと言えよう!

 しかし!

 恐るべきリンゴの一つ一つが確実に陳・肉まんの生命を削っていく!


「おらっ!」


 パギャン!


「アイヤー!」


 陳・肉まんの悲鳴!

 シン・巣鴨に陳・肉まんの悲痛な叫び声が響く!

 りんごマンがリンゴを投擲!


「おらっ!」


 パギャン!


「アイヤー!」


 陳・肉まんの悲鳴!

 りんごマンがリンゴを投擲!


「おらっ!」


 パギャン!


「アイヤー!」


 陳・肉まんの悲鳴!

 りんごマンがリンゴを投擲!


「おらっ!」


 パギャン!


「アイヤー!」


 陳・肉まんの悲鳴!

 りんごマンがリンゴを投擲!


「おらっ!」


 パギャン!


「アイヤー!」


 陳・肉まんの悲鳴!




 ――一方そのころ、神風トオルは――


「見よ! 妹よ! この黄金の艦隊を!!

 我が国はあと一万年と二千年は戦えるぞ!!」


 スシ桶一杯に詰められたコーン軍艦スシを前に、神風トオルは正気を失いつつあった!


「テヤンデイ! 兄上! 兄上テヤンデイ!!」


 トオルの隣で大トロ・スシを食し、すでに狂人と化しているのは妹の神風ルリ!

 神風トオル一行はスシ・バー=エドッコのテイクアウト・スシを食べながら試合を観戦していた!

 対戦相手となるファイターたちを研究するためである!

 最強の敵、アトミック・ジョンを倒したとはいえ、一瞬たりとて油断はできないのである!


「ムウ! うまい! 酒が進むぞ!!」


 カッパ巻きを食しカップ酒を飲む男は地球真拳師範代、神宮寺じんぐうじゴウショウ!

 地球上のあらゆる拳法を知り尽くした彼は試合解説に欠かせない!

 ちなみにトオルのスシはコーン軍艦のみのお子様セット!

 ルリとゴウショウは特上クラスの握りセットである!

 いよいよ神風トオルがコーン軍艦を食し――


「うまい! うますぎる! なんだこのうまさは!

 ! 

 だが!

 

 !!!」


 狂ったようにコーン軍艦をむさぼっていく!


「コーン軍艦バンザーイ!

 全艦全速前進! 主砲発射!!

 アハハ! アハハハハハハ!!!」


 コーン軍艦のあまりのうまさに神風トオルは狂人と化した!


(まったく……ひったるんでるわね……!)


 スシ・パーティー状態の三人を見つめるのは――メガネJK月宮殿げっきゅうでんウメコ。

 すっかり気の緩んだ光景にため息をつく。


(それにしても……おいしそうなオスシね……)


 じいいいいいいいいいい――――!


 ウメコの視線がスシ桶に注がれる!

 その美しい口からはヨダレが垂れる!


「なんだ貴様? スシが食べたいのか?」

「ギクリ!」


 羨ましそうにスシを見つめるウメコが神風トオルに気づかれる!

 それもそのはず、


「べ、別にっ! おいしそうなオスシ、私も食べたいなあ~なんて思ってないんだからっ!!」

「何を言うか! このコーンの連合艦隊が目に入らぬか!!」

「ッッッ!!!」


 神風トオルがスシ桶を掲げる! ウメコの目前に!


「すでに半数は撃沈したが……まだまだ指揮は旺盛!

 さあ! 連合艦隊司令長官が命ずる! 遠慮せず食え!!」

「あ……あ……!」


 つやつやと黄金に輝くコーン粒!

 海苔の装甲板が香ばしくウメコの鼻を突く!

 食欲を誘うその香りに……抗える者なし!


「ふ、ふんっ! あなたがそこまで言うのなら――!」


 ウメコがコーン軍艦を口に運ぶ!


 パクリ!


「ンアアアアア――――!! おいティ――ッ!!!」


 コーン軍艦が月宮殿ウメコの理性を破壊!


「司令長官! ウメコは! ウメコは今感動しておりまする!」

「よろしい! 現時刻を持って君には連合艦隊参謀長の任を命ずる!」

「拝命いたす! 拝命いたす! おいティーコーンはスシの味!!」


 おお、またもや狂人が一人増えてしまった!

 優秀な人材は豊富だ!


「テヤンデイ! テヤンデイ! 兄上テヤンデイ!」


 大トロでチャキチャキの江戸っ子と化す狂人ルリ!


「酒だ! おいそこの美少年! 酒をくれ!」


 艶めかしい太ももを晒す美少年売り子に絡むゴウショウ!


「アハハ! コーン! コーンコーン!! アハハ!!」

「テヤンデイ! テヤンデ兄上テヤンデッデイ!!!」

「酒だ! 酒だ! 美少年の酒だ!!」

「んおいティ! ンアア――司令長官んんん――――ッッッ!!!」


「「「「あははははははははははははははは!!!」」」」


 四人は楽しく試合を観戦する!



 ◆



「いいどいいどー!」

「るんごマン! すのままブッカラセー!」


 運動会的テント内の青森県セコンド席から青森言語の応援!

 青森県からお越しになったリンゴ農家の皆さんである!


「さすがはるんごマン! 優勝マツガイナスだどな!」

「今夜は宴会だべ! んだははは!」


 りんごマン優勢の試合運びに早くも盛り上がる青森県民!


 樽に入った津軽味噌を舐めながら酒を飲む!


「キッキッキ! 呑気な奴らアル!」


 青森県セコンド席のお隣、中国セコンド席!

 そこには人語を話す人間大巨大カマキリの姿!

 陳・肉まんの戦いを見届ける拳法家集団、そのリーダー格! 蟷螂拳とうろうけんマスターのまん・テイスだ!

 エメラルドグリーンのカンフー服を着た細身の男!

 彼が使う蟷螂拳とは昆虫のカマキリを模した拳法!

 両腕をカマキリの鎌に見立て、瞬時に敵を刈り取る!

 万・テイスはその蟷螂拳を極めに極めた結果!

 腕は本当に鎌と化し! 頭は巨大な複眼と大アゴを備えた逆三角形化!

 まさに中国の神秘! カマキリ人間へと進化した奇想天外四捨五入な拳法家である!

 人外の生物を模した拳法の使い手がそれを極めし時!

 徐々にその生物の姿へと変化するのは――


「そう! 極めに極めし我が蟷螂拳!

 もはや蟷螂拳の域に非ず! 我が拳はスーパー蟷螂拳!

 だが! そのスーパー蟷螂拳マスターの俺を凌ぐのが陳・肉まんアル!

 陳・肉まんの恐ろしさ! これから思い知ることになるアルよ!」


 大アゴをガチガチと鳴らし、万・テイスが不気味に笑う!


「キッキッキ! キーッキッキッキ!」



 ◆

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