6 最強の敵! アメリカ対地球!(後編)

「兄上ええええええええ!!!」


 妹ルリの悲痛な叫び!

 衝撃波で運動会的テントがバタバタと揺れる!


神風かみかぜ殿はどうなった!?」

「多分! 溶けて蒸発してしまったのでは……!」


 オカ、ホシ! 両名も諦めの表情!


「……!」


 絶望的状況の中ただ一人!

 ゴウショウの目がキラリと光る!

 ――否!


「ニヤリ!」


 一般観客席で観戦していたメガネJK、月宮殿げっきゅうでんウメコの目も光る!

 ――もう一人!


 キラリン!


 同じく観戦していた日本代表ファイター、フジヤマ・サムライ丸も目を光らせる!




「HAHAHAHAHA! 我が国の勝利だ!」


 VIPルームから観戦していたアメリカ大統領もご機嫌!


「オウイエス! パッキン! パッキン!」


 パツキン・デカパイ・カウガールが拍手で盛り上げる!

 哀れ! トオルは消滅してしまったのか!




 ――否!

 ――否中の否である!

 一般庶民諸君! 爆心地を見よ!

 煙の奥にたたずむ影が!

 うっすらと見えるではないか!

 そう!

 核爆発に耐えた神風トオルの姿である!


「おおジーザス!

 そんなバナナ!

 なぜ生きている!?」


「……なぜ俺が核ミサイルに耐えられたか!

 愚問!

 この俺は地球真拳継承者!

 いわば俺自身が地球!

 核ミサイルごときで……地球が砕けるものか!!!」


 なんと! 神風トオルは無傷!

 一体いかなる術を使ったのであろうか!


 その術の正体は!

 地球真拳・地球超バリア!

 地球パワーを己の肉体に高密度で纏わせ地球と同じ硬度を得る防御技!

 地球を破壊するほどの攻撃を受けない限り術者は無傷!

 地球真拳の最上級技の一つである!

 しかし! この技の効果はごく短時間!

 膨大な地球パワーを消費するためそう易々とは使用できない!

 ジョーカー的切り札である!


(奴が発射した核ミサイル!

 一度に集中したゆえ耐えられたが……!

 時間差で撃ち込まれていたら……溶けて蒸発していた!)


 己の幸運に感謝するトオル!


「さすがはアメリカ人!

 容赦のない攻撃には相応の技で返すのが礼儀!

 ゆくぞおおおおおおおおおお!!!」


 神風トオルがアトミック・ジョンのもとへと跳躍!


「オウ!? シット!」


 アトミック・ジョンが体内で次の核ミサイルを製造する!

 しかし! 間に合わない!

 神風トオルの拳に地球パワーが込められる!

 青く輝く右拳!

 これが地球真拳の必殺技!


「ひいいいいいいいっ殺! 地球パンチ!!!」


 グシャリ!!!


「アウチ!」


 アトミック・ジョンのミゾオチに直撃! 吹っ飛ぶ核男!

 バウンドしながらラグビーボールのごとく地面を転がる!

 立ち上がろうにも受けたダメージにより身体がうまく動かない!

 地球真拳とは地球のパワーを自在に操る拳術!

 

 その衝撃はパンチの速度で地球が衝突したに等しいのだ!


 今度はトオルの足に地球パワーが込められる!!

 青く輝く右脚!

 そして核男目がけて跳躍!

 地球パワーが込められた跳び蹴りを繰り出す!


「地球キック!!!」


 グシャリ!!!


「アウチ!」


 アトミック・ジョンのミゾオチに地球キックが炸裂!

 さらに吹き飛ばされる核男!

 その爆弾ボディからは火花が散り始める!

 そして! さらに!


「アトミック・ジョン!

 この俺の全身全霊を持って!

 貴様にとどめを刺す!

 地球真拳奥義――!」


 神風トオルの体に地球パワーがみなぎる!

 エネルギー量は地球パンチ、地球キックの10倍以上!

 その地球パワーがトオルの目に集中する!

 青く輝く両眼!




「あ、あの技は!」


 観戦していた地球ファイター達が――!


「ま、まさか!」


 放たれんとする地球真拳の奥義について――!


「いや、そんなはずは!」


 知りえる情報を思わず口にする!


「今や幻の拳術と言われる地球真拳!」


「その地球真拳の中でも最強の威力を誇るという奥義!」


「紀元前より現存する古文書によれば!」


「歴史の節目には必ず放たれると言われる伝説の技!」


「だが! その奥義は諸刃の剣!」


「圧倒的な破壊力の代償は己の命!」


「術者の命と引き換えに放たれる!」


「その奥義の名は!」




「――地球光線!!!」


 ズキュウウウウウウウウウウウウウンンンンンン!!!


 神風トオルの両眼から極太ビームが発射される!

 ――地球真拳奥義・地球光線!

 地球パワーを纏わせた荷電粒子を圧縮・収束して撃ちだす超大技!

 数ある地球真拳の技の中でも最強クラスの威力である!

 地球パワーが超絶凝縮されたその光はアトミック・ジョンに直行!


「オーマイガアアアアアアア――ッッッ!!!」


 アトミック・ジョンの身体を極太ビームが貫く!

 

 そして! その威力に耐えきれず――!


 チュドオオオオオオオオオオンンンンン!!!


 アトミック・ジョンが大爆発!

 黒焦げの焼き芋と化し大地に伏す!

 マスター・行司、タチカワが軍配をトオルに向ける!

 勝者は地球代表!

 観客がワーワー! ワーワー中のワーワー!

 まさかの逆転劇!

 観客の歓声がシン・巣鴨に鳴り響く!




「ファックス!」


 食べかけのハンバーガーを投げ捨て怒り狂うアメリカ大統領!

 シン・巣鴨コロシアムに設けられたVIPルームから勝者である神風トオルをにらみつける!

 アトミック・ジョンの敗北によりアメリカが優勝する可能性は早くも消えてなくなってしまった!

 つまり!

 この決勝大会が終われば――アメリカ大統領は地球の支配者ではなくなるのだ!


「おのれ! 地球代表のジャパニーズめ!

 まさか核ミサイルに耐えるとは!

 ファックス! ファックス!」


 投げ捨てたハンバーガーを怒りに任せて踏みつけまくる!


「ぷ、プレジデント! お気を確かに!」


 そばに控えていたCIA四天王の一人、天空のケーンが新しいハンバーガーを差し出す!


「ファックス!」


 ハンバーガーをひったくりバクリと大きくかじる!


「アトミック・ジョンのマヌケめ!

 あんな若造の地球真拳ごときに負けるとは!

 なんと不甲斐ないファックス野郎だ! ファックス!」


 ハンバーガーをバクリとかじるプレジデント・ピザフライ!


「地球真拳め……! やはりやっかいな奴だ!

 一回戦で負けるとは思わなかったが……まあよい!」


 ハンバーガーを食しながら――アメリカ大統領の顔がニヤニヤ顔と化していく!


「CookCookCook……!

 HAHAHA!

 A―HAHAHAHAHAHA!!!」


 おお! いったいどうしたことであろうか!

 一回戦敗退のアメリカ大統領がアメリカ語で大爆笑しているではないか!

 残酷な試合結果に気が触れてクレイジーと化してしまったのであろうか!


「NO!

 こんなこともあろうかと!

 ミーのプランは準備万端!

 地球真拳め! 束の間の勝利を味わうがよいわ!

 HAHAHAHAHA!

 A―HAHAHAHAHAHA!!!」


 おお、この余裕!

 アメリカ大統領は!

 いったい何を企んでいるのであろうか!?




「兄上!」


 戦いを終えた神風トオルに駆け寄る妹ルリ。


「一回戦突破、おめでとうございまする!」

「ああ、実に手ごわい相手……!

 常軌を逸したクレイジーな核攻撃!

 まさにギリギリの戦いであった!」


 最強の敵アメリカを破った神風トオル。

 その顔には核ミサイルの殺人的高熱を原因とした黒いススが付いている。

 いかに恐ろしい戦いであったかがおわかりであろう!


「地球超バリアによる対核ミサイル防御!

 そして地球光線の圧倒的破壊力!

 見事であったぞ!」


 地球真拳師範代ゴウショウもトオルを労う!

 後ろではオカとホシが拍手中!

 関係者スタンド席で安堵し胸をなでおろす謎のメガネJKウメコ!


「だが!

 奥義を衆目にさらした以上!

 他の地球ファイターにとってその技はすでに研究対象!

 対策を取られるに相違ない!

 この先! 決して楽には進めぬ!

 心してかかるのだぞ!」

「はい! 先生!」


 そう! この地球ファイトは誰でも観戦可能!

 手の内を晒せば晒すほどその後の戦いは苦しくなる!

 高度な情報戦でもあるのだ!

 最強の敵アメリカ代表を前に早くもその奥義を使わざるを得なかった神風トオル!

 果たしてこの先! 無事勝ち進むことができるのであろうか!

 つづく!




 次回予告!

 一回戦を辛くも勝ち抜いた神風トオル!

 しかし! 二回戦を前に怪しい影が忍び寄る!

 その恐るべき影の正体は!

 密かに地球ファイターを始末する暗殺者だった!

 トオルは無事二回戦を迎えることができるのか!?

 次回!『惨劇!忍び寄る暗殺者!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る