ぼっちに目覚めた隠れチート主人公高校生活

宇治宮抹茶

第1話 プロローグ

学校つまんねぇ。

そう思う今日この頃のオレ、天谷杏夜あまやきょうやである。

高校生活が始まって早一週間、オレは今、ぼっちである。

厳密に言えばそう言うわけでもないけれど、誰か学校で話す事なんて高校に入ってからは殆どない。

まあ、そうなったのには入学式の頃に戻るのだが。









学校は何度見ても大きかった。

三階建てでありながら横幅がとても広い。

ここは武ノ宮高校、今日からオレが高校生活を、始める場所だ。

さて、そんなわけで余裕を持って入学式にきたわけだが。


「なんでお前らがいるんだよ」

「お兄ちゃんの初めての高校生活の始まりを送らない分けには行かないじゃん!」

「お前関係ねえだろ」

「同じく!」

「だから関係ねえだろ。それになんで姉ちゃんまでいんだよ」

「私も妹達と同じく」

「以下同文」

オレをお見送りに来たのはオレより三つ年上の大学一年、オレの姉ちゃん天谷凛あまやりん。そしてオレの二つ年下の中学二年の双子の姉妹の天谷林檎あまやりんご天谷蜜柑あまやみかんだ。

何故かお見送りにきた。

正直余計なお世話でしかない。


「じゃあ、オレ行くから」

「沢山友達つくってね!」

「沢山だよ!」

「頑張れよー」


オレはそんな姉妹と別れて学校に足を踏み入れた。昇降口までには桜が満開しており、歩く度に花弁がヒラヒラと舞っていた。

昇降口前にあったクラス分けされた掲示板を確認したオレは早速クラスの教室に向かった。


一年A組と書かれた教室に入ると、中は思いの外広い。

前の黒板には紙が貼られており、そこには席表が載っていた。

その席は一番前の左端だった。


オレが来てからというもの多くの生徒が登校してきた。

登校時間である8:30の五分前には既に全員が登校していた。

8:30になると教室のドアが開かれ、そこから黒髪をポニーテールに結った女性が入ってきた。


「遅刻している奴はいないな?私はこのクラスの担任をする松末友菜まつすえゆうなだ。よろしく頼む」


先生が来た後、ホームルームが行われた。その後、先生が教室を出たときに一人の男が立ち上がった。亜麻色の髪が特徴的な高身長な如何にもイケメンな男だ。


「俺は霧島甲斐人きりしまかいと。皆よろしくね。突然で申し訳ないんだけどこのクラスの皆で自己紹介をしないかな?クラスの親睦を深めるためにもさ?」


やはり、というか案の定の展開である。

イケメンてなんで心まで綺麗なのかしら。

霧島がそう言うと、今度はギャルっぽい金髪女子が言った。


「いいんじゃねー?やっぱり早く仲良くなりたいっしょ!」




すると、クラスの皆もそれに賛成し、結果的にそれぞれ自己紹介をすることに。

そして、何よりオレがスタートバッターというありがたくない状況に。

あー面倒くせえ。

しかし、そんな事も言ってられないので心を決めて立ち上がりオレは自己紹介をした。


「ども、天谷杏夜です。趣味とかは特にないです。よろしく」


オレは席に座りそして悟った。

あ、これ、オレ根暗だと思われたな。

拍手も少し少ない。

それから、自己紹介が続いたが皆、それぞれ趣味がちゃんとあり、また元気がある自己紹介だった。









回想終了。

この出来事から、もうオレのぼっちライフは確定されていたのだろう。

あれからというものクラスの奴らは殆ど話し掛けてこず、またオレが話し掛けようとしてもぼっちが来た!と逃げていく。

オレはいつからそんな不審な男になったんだ?

しかし、オレ一人高校生活が始まってオレは気付いてしまった。


そう、以外と一人が楽しいのだ。


家に帰れば帰ったで死ぬほどあの姉妹共の相手をしなければいけない。

中学校の頃は程々に友達も多かったので一人の時間がかなり少なかった。

しかし、高校生活でぼっちになって学校で一人を楽しんでいると、とても楽しいことに気付いた。

そんなわけでオレは高校生活を一人で生きることを決めたのだ。


しかし、オレが声を掛けなくなってからと言うモノのオレに話し掛けてくる例外がいる。

一人は言わずもがな、クラスでもイケメンの霧島、そしてもう一人。



「天谷くん、おはよー!」



そんな元気の有り余る声で挨拶してきたのはクラスでもマドンナと言われるほどに美少女かつ優しい性格、コミュニケーション力が持ち前の少女、姫川有栖ひめかわありすだ。


彼女はクラスの皆と仲良くなりたいらしくよくオレに話し掛けてくる。


「おはよう姫川」


まあ、オレも無視するほどの鬼ではないのでごく普通に返す。すると、まだ姫川は読書していたオレに質問をしてくる。


「今、何読んでるの?」

「ライトノベル」

「好きなの?」

「割かしな」

「ジャンルはどういうのなの?」

「主にラブコメだな。現実味がかなり薄いけど」

「あはは、確かに気持ちは分かるかも」


そして、じゃあねー!と姫川は自分の席に戻る。

毎日朝のこうやって姫川とは話をする。

ぼっちなのに声を掛けてくるのは素直に関心もするし嬉しくもある。

だから普通にオレは受け答えをするようにしている。

でも、最近は一人が好きだからか少し押さえて欲しいとも思っている。

向こうからの男子からの視線が痛いんすよ…。


ここまでこんな前振りを置いたわけだが、物語の始まりはここからだ。


ぼっち好きに目覚めたオレと、中々ぼっちにさせてくれないオレの友達の言葉に出来ない物語だ。

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