第14話 幸せで嬉しい私
「おはようございます、あなた」
私がそう答えると、彼は少し驚いた表情をした後、優しい笑みを浮かべてくれました。
そして今度は彼から口づけをしてきましたので、私はそれを受け入れました。
最初は軽く触れるだけの軽いものでしたが、次第に深く激しいものへと変わっていきました。
(気持ちいい)
そう思った瞬間にはもう何も考えられなくなるくらい夢中になっていました。
やがて唇が離れる頃には、私はすっかり蕩けきっていましたが、
それでもまだ物足りなさを感じていましたのでもっとして欲しいと思ってしまったのです。
しかし、彼はこれ以上するつもりは無いようで、私をベッドに寝かせるとそのまま部屋を出て行ってしまいました。
私は一人取り残されてしまい、寂しさが込み上げてきましたが、その一方で安堵している自分もいました。
なぜなら、あのまま続けていたら自分がどうなってしまうか分からないからです。
私はベッドから起き上がると、浴室へ向かいシャワーを浴びる事にしました。
熱いお湯を浴びていると少しずつ冷静さを取り戻すことができ、
それと同時に先ほどまでの出来事を思い出して恥ずかしくなりました。
(あんな大胆な事をしてしまうなんて、私どうかしてるわ)
そう思いながらも、後悔はありませんでした。
むしろ、彼と結ばれたことが嬉しくてたまらなかったのです。
シャワーを終えた後は服を着て、朝食の準備に取り掛かります。
今日のメニューはフレンチトーストでした。
卵液に浸したパンをフライパンの上で焼いている間、コーヒー豆を挽いてドリップする準備をしたり、
サラダを作ったりと忙しく動き回りながらも、頭の中は彼のことでいっぱいでした。
(早く帰ってこないかな)
そんな事を考えながら待っていると、玄関の方から鍵の開く音が聞こえてきました。
それを聞いた瞬間、私の胸は大きく高鳴りました。
そして、次の瞬間には駆け出していました。
玄関に着くと、そこには彼の姿があったので思わず抱きついてしまいました。
彼は驚いていたようですが、すぐに優しく抱きしめ返してくれたので嬉しくなってしまってさらに強く抱きしめてしまいました。
(大好き)
そう思うとますます気持ちが抑えられなくなってしまい、何度もキスを繰り返してしまいました。
そうしてしばらくの間抱き合っていたのですが、不意に我に返ると恥ずかしくなってきて
離れようとしたところを彼に引き戻されてしまいました。
それからしばらく抱きしめられたままの状態が続きましたが、
さすがにそろそろ離れないとまずいと思ったので強引に引き離して先に進みました。
居間に入るとテーブルの上には既に朝食の準備ができていましたので、早速食べることにしました。
食べ始めてからもしばらくは無言だったのですが、ふと彼の方を見ると目が合ってしまいお互いに微笑み合いました。
それだけで幸せな気分になれるのですから不思議です。
その後も他愛のない話をしながら食事を進めていき、全て平らげたところで一息つきました。
そこで改めて彼にお礼を言うと、照れ臭そうに笑いながら答えてくれました。
「どういたしまして、朋絵こそいつも美味しいご飯を作ってくれてありがとう」
その言葉を聞いただけで涙が出そうになるほど嬉しかったですし、
何より私のことを気にかけてくれているというのが伝わってきたのでとても幸せな気分になりました。
(これからもずっと一緒に居たいな)
そう思うと自然と涙が流れてきて止まらなくなりましたが、
それを見た彼が心配してきたので大丈夫ですと言って誤魔化しました。
「大丈夫? 辛かったら言ってね?」
そう言って優しく頭を撫でてくれた彼の手は、とても温かくて心地よい気持ちになれました。
そうやってしばらく過ごしていたのですが、いつまでもこうしているわけにもいかないので、
名残惜しいですが仕方なく出発しました。
家を出る際にもう一度キスをしてから出て行きましたが、
その際に舌を入れられてしまいましたので驚きましたが、
それ以上に気持ち良くて夢中で応えてしまったことを覚えています。
その後、会社に着いてからはいつも通り仕事をこなしていたのですが、
昼休みになると同僚の女性達に声をかけられました。
「どうしたの? 何だか元気ないみたいだけど何かあったの?」
彼女達は私の様子に気付いて心配してくれているみたいでした。
特に隠す理由もなかったので正直に話す事にしました。
そうすると、みんな口々に励ましの言葉を掛けてくれましたし、
中には一緒に泣いてくれる人もいたので本当に良い人達だと実感することができました。
その後は午後の仕事も何とか乗り切ることが出来たので良かったです。
帰り際、同僚の一人が誘ってくれたので飲みに行くことになりましたが、
みんなとても優しく接してくれたおかげで楽しく過ごすことが出来ました。
帰宅してからはすぐにお風呂に入り、寝支度を整えてからベッドに潜り込みました。
目を閉じると今日あった出来事が次々と思い浮かんでくるのですが、
その中でも一番印象に残っているのはやはり彼との事です。
思い出す度に顔が熱くなり鼓動が激しくなるのを感じますが、同時に安心感や幸福感に包まれていきます。
そんなことを考えているうちにいつの間にか眠ってしまっていたようで、目が覚めると朝になっていました。
時計を見るとまだ早朝と言える時間だったので二度寝しようかとも思いましたが、
何となく眠れなくなってしまったので起きることにしました。
それから朝食の準備をしていると、突然玄関のチャイムが鳴り響きました。
驚いてビクッとしてしまい、心臓が止まるかと思いましたが、
気を取り直して玄関に向かいドアを開けると彼が立っていました。
私が驚いていると、彼は微笑みながら言いました。
「おはよう、朋絵」
(あっ、そうだった!)
昨夜の事を思い出した私は、一気に頬が熱くなるのを感じましたが、
なんとか平静を装って挨拶を返しました。
それから二人で朝食を食べた後、出勤する彼を見送るために一緒に駅まで歩いて行くことになりました。
道中、会話はあまりなかったのですが、それでも一緒にいるだけで幸せを感じられましたし、
心が満たされていくような感覚がありました。
駅に着いたところで、名残惜しさを感じながらも別れの時間となり、
彼が乗る電車がホームに到着するまでの間、私達はずっと手を繋いで待っていました。
発車ベルが鳴ると同時に彼は、私にキスをしてから電車に乗っていきました。
私もそれに応えるように手を振りながら見送りました。
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