気が狂ってる時に書いた小説を無責任に放り投げるところ。

不皿雨鮮

アレがアレな世界

 なんてことだろうか。全く以て、本当にアレだ。

 いやアレっていうかソレっていうか、コレっていうか。ともかく、アレなことになってしまった。

 世界中の人間のアレがアレになってこうなってしまった。一体どうすればいいのだろうか。

「なぁ、コレってかなりアレなんじゃないのか?」

「……ああ、かなり、アレだ。もう、アレだな。みんなアレでああしてああするしかない」

「うっへぇ……、アレかよ……。面倒臭ぇな……、もっとアレでアレな方法とかねぇのかよ」

「今のところは、な。アレはまだアレしか分かってないから、な」

 そうか、やっぱりアレなのか。解決方法は分かっているとはいえ、アレだからな、やはり、世界中にそれを伝えるのが重要なのかもしれない。

「じゃあ、とりあえずソレをアレを使ってアレするしかないよな」

「ああ、だけど、どうやってアレをするんだ」

「馬鹿だな、アレに決まってんだろ」

「……アレ、か。正直、気乗りしないな。アレだし、あんまりアレは使えない」

 お互いに苦笑いをして、俺達はアレとアレを起動する。今回はアレな事態だ。仕方がない。俺だってあんまりアレを使いたくはないが、アレを使うしか方法がない。コレしか方法がないのだ。

 俺達がソレを起動すると、アレとコレが同時に点き、ソレが目の前に降りていく。お互いに顔を見合わせて、小さく頷き合い、同時に同じアレを手に取る。

 ソレは起動し、アレが動く。


 外では多くの人々がアレコレしていた。アレをアレだと言い合ったり、コレのドレだと奪い合ったり。もう散々なアレだった。

「みんな落ち着いてアレしてくれ。今、みんなのアレがアレになってしまっている! だから、アレとコレを使ってもう一度アレをするんだ! そうしないと、この世界はアレするぞ!」

 俺の声に、人々は落ち着きを取り戻し、アレとコレを使ってアレをし始める。なるほど、アレであってもアレとアレだけで伝わるのか。ということは、これは所謂、アレなのではないか。

「なぁ、これって所謂、アレなんじゃないか?」

 どうやら相方も同じ結論に行き着いたらしい。俺と相方の意見が一致するといいうことは、アレだ。

 何かを考えることもせず、俺達はソレの下へと向かう。こういうアレがあった時、大抵はアレの仕業なのだ。アレはそういう類のアレなのだ。

 ソレの下へ辿り着くが、しかしそこには誰もいなかった。ここにはいない、ということは彼はアレにいるということだ。

「……くそっ、ソレがアレしてねぇってことは、別のアレがアレってことか……?」

「いや、そうじゃないんじゃないかな。アレな訳だから、アレな訳でしょ?」

「……そうか。ってことは、今はアレな状態なだけで、アレをコレしたら、アレな訳だな!」

「ああ! さぁ、アレをコレでアレしよう!」

「ああ!」

「させるかよ!」

 そんな声と共に肩にアレを受ける。どうやらアレにはコレが仕込まれていたらしく、俺と相方は両方共体がアレしてしまう。

「チッ、お前らは……」

「こんなぶっ飛んだ世界をアレされてたまるかよ! 俺はこのアレがアレな世界が最高に気に入ってんだ! アレな訳だからな! はっはっは!」

「ダメだ! こんなアレな世界は、絶対にアレが起こる。もし、それがアレなら、世界はアレするかもしれないんだぞ! それでもいいのかよ!」

「ああ、、構わないね! こんなアレとアレが複雑なアレをする世界よりも、こんなアレな世界で、アレとコレがアレだけで伝わる世界の方が、アレなんだ。前の世界の方が、アレだったんだよ!」

「違う、アレはアレなんだ。だから、アレがアレとしてのアレがアレなんだ!」

「ふざけるな。ソレのせいでドレだけのアレがアレした! 人間のくだらないアレのせいで、ドレだけのアレがアレになった! アレでもアレでもアレでも、みんなアレをあら捜ししてアレアレしてんじゃねぇかよ!」

「それでも、アレはアレなんだ! アレがコレしてソレなんだ!」

「……どうやら、俺達にはアレがアレらしいな。これ以上話してもアレが明かねぇ」

「ああ、そうだな。だから、アレで決めよう」

「ああ、そうだな。アレだ。アレをしよう」

「行くぞッ!」

「こいッ!」


 教室の中、朝の八時。授業開始まで残り三十分。いつも早く来るメンバーと集まって、少年は深刻な顔をして、一言。

「――っていう、夢を見たんだけど、これって何かの予知夢かな?」

「いや、何ていうか、それはアレだな」

「……ああ、アレだな」

「アレだな」

「……だよね、やっぱ、これってアレだよね……」

 はぁ、と少年は溜息を吐いて、がたんと机と額をくっつけるように伏せる。

「やっぱり、アレかぁ……」

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