本当の気持ち

半澤 溜吾郎

第1話 恋愛感情

 「好きです。付き合ってください」

 僕は、一世一代の大勝負に打って出た。

 ~二十分前~

 「健二~お前今日、美和に告るんだろ?」

 親友の幸助は、ほおを赤らめながら、どこか悲しげな表情で言ってきた。実は幸助は美和のことが好きなのである。本人から直接聞いたわけではないが、クラス中の噂になっていて、知らない者はいない。

 「ああ、そのつもりだけど」

 正直、美和のことはそこまで好きではないが、恋人のいない自分に耐えられないので告白するつもりだ。今までの告白は、すべて成功してきたが、心の底から好きだといえる相手ではなかった。

 「いいよな~きっとお前だから成功するんだろうな」

 幸助は、親友である僕に好きな人を譲った感じでもなく、ただ何かを失うのを怖がるような、悲しげな表情で僕をみつめた。

 「どうかな~」

 「どうかなって、お前イケメンだし、勉強もできるから絶対大丈夫だろ」

 「そうだといいけど…」

 そんなやり取りをしながら、僕は自分の恋愛について考えていた。なぜ今まで僕は、好きでもない人と付き合ってきたのだろうか。自分の本当に好きな人は誰なのだろうか。

 その時、教室のドアが開き、顔を赤らめた美和が小走りで入ってきた。

 「幸助君、ちょっと話があるんだけど!」

 「えっ、話しって?」

 美和は荒れた呼吸を整えながら静かに言った。

 「幸助君が私のこと好きだって噂を聞いてから、ずっと気になってしまって、それでその私で良ければ付き合ってください」

 なんと、美和の方から幸助に告白してきたのである。僕の心は感情の波で襲われた。

 (なんだこれは、ものすごい嫉妬を美和にいだいている。んっ、美和に嫉妬している???)

 僕は自分の感情がわけわからなくなっていた。

 (幸助を失う… そんなのいやだ。今まで、なにをするのも一緒だったのに… もう、そうではなくなるのか)

僕は初めて自分の気持ちに気がついた。

 (僕は… 幸助が好きだ)

 「ごめん、俺には好きな人がいるんだ。だから、美和とは付き合えない」

幸助は、毅然とした表情で言った。

 「えっ、好きな人って私じゃないの?」

 「違うよ、俺そんなこと誰にも一言も言ってないし」

 「そんな…」

 そう言うと美和は顔を真っ赤にしながら、目頭に涙を浮かべて教室を出ていった。

 「なんだあいつ、勝手に勘違いしやがって。それより健二なんかごめんな、今日はさすがに告白しないよな?」

 「する」



 「好きです。付き合ってください」

 僕は、一世一代の大勝負に打って出た。


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本当の気持ち 半澤 溜吾郎 @sarukaeru

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