カメレオンレオ

橘知親

カメレオンレオ

 カメレオンのレオは変身へんしん得意とくい


 どんないろでも、どんな模様もようにでも変身へんしんできる。くろだけはどうしてもいろ模様もようえられないが、それ以外いがいならどんなことでも。


 レオは一人ひとりらしているけれど、もりなかではどんな植物しょくぶつ動物どうぶつとでも友達ともだちになれる。


 あさのキートンにのぼり、うえまでくのが日課にっか。レオは「やあ!」とキートンにあいさつして、キートンのかわいろ変身へんしんする。そしてひゅるひゅると上まで登って気持きもちよく太陽たいようびる。


 朝ごはんには、やぶのヤーブのなかはいってってちいさなむしる。ヤーブはあかるめの緑色みどりいろをしているから、レオもその緑に変身する。ヤーブは気前きまえのいいやつで、いつもかるめのおいしそうな虫が、どこにいるかをおしえてくれる。

 

 そのあとは、ゆっくりみずみに出かける。水を飲むのにおに入りのさわがあって、そのさわみずとおっていてつめたくてとてもおいしい。その沢では、レオはいしおなじようなネズミ色になってみせる。

 最近さいきん友達ともだちになったのが、沢ガニのカニグループの親分おやぶんのガニで、ガニはいつも、「自分と同じあかになってよ」とレオにお願いする。レオのからだがすぐにくろから赤に変わるのが、ガニにはたのしいらしい。そして、仲間なかまんできて、マジックショーのように、レオに色々な色に変身するようにたのむ。

 レオは水の上にうかぶ色々なの色になったりして、みんながよろこんでくれる。まるで変身マジックショーのスターになったような気分きぶん


 そして、ガニたちとはなしをしながら、大きな石のうらで少しやすんで、「じゃあね!」とさよならを言って、ヤーブのところへ行って、また緑色になって、お昼ご飯をさがす。


 お昼ご飯を食べた後は、ハンモックがわりになるふきのフーキの上でお昼寝ひるねをする。フーキはまっちゃのようない緑色だから、レオはその色に変身する。

 レオはフーキにとってはけっこうおもいし、レオのいびきはフーキにはうるさくてちょっぴりめいわくだけれど、フーキはやさしいからがまんしてくれる。レオは、おれい気持きもちで、お昼寝の最後さいごには、フーキにマッサージをしてあげる。


 レオは夕方ゆうがたになるとまた沢に行きガニたちと水浴みずあびをし、さっぱりする。

 さっぱりしたあとであまりよごれたくないから、レオはその沢のすぐそばの、大きな木のダイキのところで夜ご飯を食べる。

 ダイキは、森の中でも一番大きい木で茶色ちゃいろをしていて、夜にはたくさんの虫があつまってくる。

 ここで、レオはたらふくごちそうを食べてから、ダイキのっこの下のあなの中でぐっすりとる。


 レオは毎日まいにちこうしてらしていた。

 

 でもある日、夜寝よるねまえに、レオはきゅうおもった。

 「毎日まいにちこうして同じようにらしているけれど、なんかきてきちゃった。キートンともヤーブともガニたちともフーキともダイキとも、みんなとは仲良なかよしだと思うのに、なんで最近さいきんつまらないんだろう。」


 理由りゆうはすぐにはわからなかったから、レオはその次の日の朝から、ひとりたびに出ることにした。

 レオは土の色になって一生懸命いっしょうけんめい歩いて、二時間にじかんぐらいしてずいぶんととおくの森にまでたところで、緑色の体のままぴょんぴょん歩いてくるカエルのエルと出くわした。

 

 「きみあぶないぞ、そんなひかる緑色で土の道の上を歩いたら!」

 レオは、親切しんせつだと思って、注意ちゅういしてあげた。

 すると、エルは、

 「うるせえな、ケンカってんのかよ!」

 と、きゅうにおこりはじめた。


 そして、エルの仲間たちが、五匹ごひきぐらいはあつまってきた。

 「おまえおれたちの友達ともだちのエルにそんな命令めいれいするなよ!俺たちは、いつもちかくにいて、危険きけんがあったら、らせあって、一緒いっしょたすってるのさ!」

 「カエルが変身へんしんできないのらねえのか?」

 「お前は、カメレオンだから、いつでも変身して、ほか植物しょくぶつ動物どうぶつの仲間みたいになれる。でも、俺たちにはできないから、本当ほんとうの仲間を大切たいせつにするんだよ!」


 やつぎばやに、色々とおこられたレオは、しょんぼりして、近くの木の下でやすんだ。

 エルは、カエルたちに言われたことを思い出しながら、自分に本当の仲間がいないことに気づいた。

 

 「たしかに僕は、木の色にだって、やぶの色にだって、カニの色にだって、ふきの色にだって、土の色にだってなれる。しかも、仲良くなれる。でも、僕は木じゃないし、やぶの植物じゃないし、沢ガニじゃないし、ふきでもない。ガニたちとは、ご近所きんじょさんぐらいの友達にはなれても、本当の仲間にはなれないんだ。」


 「まわりにばかり合わせていて、友達がたくさんいると思っていたけれど、なにかつまらないのは、本当の自分をわすれ、本当の仲間もいないからなんだ!」


 レオはまれてはじめて、自分じぶんもどして、仲間がしいと思った。

 そして、レオは本当の自分の色になってみようと、初めて自分の色になってみた。石というよりはいわのような茶色ちゃいろとねずみ色の中間ちゅうかんの色が、レオ自身じしんも初めてなってみる本当の色。


 「自分らしく森の中を生きて、本当の仲間をさがしに行こう!」


 レオは初めて変身をしないで、自分の色で、歩きはじめた。

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カメレオンレオ 橘知親 @T-Tachibana

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