第51話ーーおっさん、邂逅する

「やぁーやぁーおかえりー」


 ぞろぞろと宇宙戦艦から降りてくる一行を、満面の笑みを浮かべながら、手を大きく広げて迎える中間管理職の神様。

 その姿は至極胡散臭い。相変わらず顔が見えずに、黒いモヤにしか見えないおっさんにでさえ、わかるほどの胡散臭さを纏っていた。

 それは、おっさんや新木が会社員時代に、上司が無茶ぶりなどをしてくる前兆のような感じだ。


 とりあえず全員が帰宅となってから、神様との話となった。


「突然どうされたんです?」

「いや、宇宙に行ってきたんでしょ?他の世界の人間とも接触したようだからさ」

「他の世界の人間?」


 おっさんはイマイチわかっていないが、確かに一行は接触していた。

 それは、金星探索を終えて、しばらく転移もなく航行している時に起きた事件である。


「大磯様、惑星ケローからの使者が着艦許可を求めております」


 と、ルルアーシュの声から始まった。


「ケロー?着艦許可?」


 おっさんが首を傾げるのも不思議ではない。そんな惑星名は聞いたこともないし、ここは宇宙なのだ、着艦とはどこから来るのか?である。


「はい、ここから少し離れた所に存在する惑星の住民です。すぐそこまで船が来ております」

「う、宇宙人!?」

「UFOにゃ!?」

「保様、メガ粒子砲セーフティー解除ですぞ」

「照準もOKですよ」

「やっと、私の出番がやってきましたな」

「隔壁閉鎖しますね」


 おっさんとアルが、未知の生物に心を躍らせ昂った声を上げるのに対し、何故かローガスと新木は臨戦態勢だった。


「ちょっ!攻撃しないしない!」

「2人とも民間人も乗っている事を忘れちゃダメにゃ」


 冷静なようで、実はノリノリなウルフ。同じ島の住民、それぞれの家族を民間人とか言い放っていた――そもそも、おっさんたちは誰も軍関係者などではない。


「レーダー、接近まで確認取れなかったのかな?」

「同艦レーダー範囲外からの通信のようです」

「くっ、向こうからは丸見えという事か……」


 何だかんだ、おっさんもノッてきた――なぜなら、天空の島出発時の「発進」号令以降ここまで、全く艦長ポジションにいながら一切出番がなかったのだ。そういう事が好きなおっさんが、我慢出来るわけがない。


「ルルアーシュ、その彼らは危険はないのかな?」

「着艦後、私がチェック致します」

「なら会おうか」

「では、収容後チェックした後に、格納庫そばの応接室にての会談をセッティング致します」

「よろしく頼む……アァッアァッ!こちらブリッジ、艦長の保です。これより未知の生命体と接触致します。安全確保の連絡まで、各自部屋にて待機お願い致します」


 遂に自らを艦長とか言い出した、「あっやりたかったにゃ」とか「さすが保さんわかってる」なんて眷属からの声も聞こえてきたりして、おっさんご満悦であった。


 その後しばらくしてルルアーシュから応接室に来て欲しいと連絡があり、一行は揃ってキャッキャしながら向かった――ここで本来なら、レーダーなり何なりの人員が必要なのだが、やはりあくまでの範囲を超えない彼らなのである。


 応接室にいたのは、アルたちと同じほどの背丈で、ギョロりとした大きな目の……まるでカエルのような容姿をした二足歩行の生き物だった。ただ色は緑ではなく、黒と白のツートンである。


「どうもー!私、惑星ケローの外交大臣のタマーですぅ」

「どうも、地球の管理神大磯保です」

「はぃ〜当惑星の管理神様から、辺境の発展途上惑星の管理神様一行が、初めて宙に出られると聞いて、是非ご挨拶をと来た次第でございますぅ」


 辺境の発展途上惑星とは散々な言われ具合ではあるが、神であるおっさんがようやく来れたのに対して、大臣とはいえただの惑星住民が遥か彼方まで来ているのだから、反論のしようがないだろう。


「それはどうも」

「はい〜、あっ、これはお近付きの印にお持ちしましたのでお受け取り下さい〜」


 渡された箱を受け取り、そうっと見る一行。

 中には大福に似た物が並んでいた。


「これは……?」

「さつまいもと餡子を餅で包んで蒸した物ですぅ〜タマーの上司の大好物なのですぅ」

「これはいきなり団子!あのっ!もしかしてその上司さんは緑色で、お腹に星マークがあったりしますか!?」

「確かに緑色ですが、星はないですよぉー知ってるですかぁ?」

「他に赤とか黄色とかの人もいたり!?」

「いますが……知ってるんですかぁ?」

「そういうわけじゃないんですけど……」

「チッ……みんな姿を見られてるんじゃないですか」


 突然テンションが爆上がりして、前のめりになる新木。次々に繰り出す質問と、それに答えながら何故かどこかやさぐれた表情を見せる使者。

 おっさんを含めた他の者たちは、訳がわからず呆然とするのみだった。


「今日ご挨拶に来たのはですねぇ、私たち惑星の物がそちらの惑星に、たんけ……観光に時折伺っているので、改めてその許可を頂きたく来たのですぅ」

「これまでもよく来てたり?」

「はい〜他の惑星の方たちも、よくたんけ……観光ツアーを組んで、空を飛んだりしていますぅ。ただここ数十年は、そちらの惑星の様子がおかしかったので、ツアーは中止していたのですがぁ」


 様子がおかしいというのは、ダンジョン発現の事であろう。これまでの世界の謎、度々存在を議論されるUFOの真実がわかった瞬間である。


「えっと、人を誘拐とかしないなら構わないよ」

「当惑星では、現地生物の捕獲は禁止しているですが、改めて通達しますぅ。ご許可ありがとうございますです」


 許可を得た事で目的を達したらしく、去っていったケロー星人。


 未知との遭遇で、どこかしら緊張していたのであろう。精神的に疲れを覚えたおっさんだったが、司令室に戻る度に、新たな他の星の人々が挨拶に訪れてくる事となった。

 カミラス星、リスカンダル星、マソーン星、サイア星、デビルール星等など、どこかで見た事のあるようなないような、そんな姿の宇宙人たちとの邂逅を果たした。最後の最後に、ようやくおっさんの想像する、グレイ型宇宙人が現れはしたのだが、おっさんは既にぐったりしており、そこまで感動もしなかったようである。

 ――そもそもだが、おっさんたちはわかっていないが、アルやローガス、ガイン・ミルカ夫妻は異星人なのだ。異世界という事は、どこかの星に住む存在……つまり異星人だという事である。



 これが神様の言う、異世界との交流の意味である。


「そうですね、はい、交流というか挨拶されました」

「うんうん、僕がそれぞれの世界の者に通達したからねー」

「えっ?あの星々の主神は神様で?」

「うん、そうだよ。人が居ないから、人が居ないから僕が見ているんだよ、忙しいのにさ」


 ここでおっさんの脳内にある警告ブザーが鳴り響いた。「人が居ない」を強調するように2度も言い重ねる神様。明らかに仕事を押し付けようとしている雰囲気である。


「新婚旅行だったんですよ。さぁっ、溜まった仕事を片付けないとっ」


 立ち上がり、忙しい風を装うおっさん。


「それはおめでとう。たくさん子供作ってー神候補になりやすいから。人員確保出来て助かるし」

「あっ、あっ、ありがとうございます」


 性豪スキルを最近毎日のように発揮しているくせに、子供作れと言われて顔を赤くするおっさんも新木。まだまだその辺の精神は中学生のようである……いや、覚えたてという事であるから、それであってはいるのかも知れないが。


「これからお父さんになっていく訳だし、お父さんなら大黒柱として頑張らないとねっ。そこで!大黒柱らしく、その交流を持った星々の管理もやってみようか、ダンジョンの踏破も終わったみたいだしね」


 神様の方が上手だったようである。


「いや、えっと、まだ管理とか慣れてないし……」

「うんうん、大丈夫!直ぐに慣れるから、何事も経験だよ。僕はね、君に期待しているんだ」


 よくある上司の常套句まで出てきた。


「それにもうシステムは設置しているから。では頑張ってよろしくねー」


 押し付けるだけ押し付けて、消えて行った神様。


「大磯様、とりあえず確認しましょう。どれほど押し付けられたか」

「……うん」


 憂鬱な表情を浮かべ職場へと向かうと……あの広かった部屋は、所狭しと机とモニターが立ち並んでいた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891810408


憧れのあの子はダンジョンシーカー〜僕はあの子を追いかける?〜


よろしければお読みくださいませ。


ざまぁwwwwで、チートな感じです。

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