第25話ーーおっさん浮かれる
最近のおっさんは絶好調である。
もちろん人生初の彼女が出来たことが原因だ。
毎日鼻歌交じりに部屋付きダンジョンで無双しまくっている。
そのおかげでステータスも軒並み爆上がりしているし、3つ目の隠蔽スキルまでGETしていた。
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大磯保(42) 種族:ハイヒューマン
Lv209 (72up)
体力・・・1,953 (538up)
筋力・・・1,959 (521up)
魔力・・・126,356 (1,056up)
敏捷・・・1,258 (350up)
精神・・・1,153 (285up)
運・・・614 (72up)
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<スキル>・・・アイテムボックス・全魔法(全)・魔力操作(全)・剣術(全)・棍棒術(全)・槍術(初級)・弓術(初級)・投擲術(上級)・忍び足・環境適応・気配察知(全)・生命探知(全)・看破(全)・鑑定(全)・罠感知(初級)・罠解除(初級)・性豪・転移・指揮・鼓舞・言語理解・召喚術・テイム・気配遮断(全)・隠形(全)・状態異常耐性(全)・超再生・飛翔・ステータス隠蔽・水棲
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アルフォント・ショル・リイク・ガルア・ザルン・ジョシュアス・トラン・キュサック・コーガク・リュセット・シャルカン (23) 種族:ケットシー
Lv349 (80up)
体力・・・1,041 (240up)
筋力・・・1,031 (240up)
魔力・・・4,220 (457up)
敏捷・・・1,108 (240up)
精神・・・820 (167up)
運・・・382 (80up)
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スキル・・・剣術(全)・短剣術(全)・光魔法(全)・闇魔法(全)・火魔法(全)・風魔法(上級)・水魔法(中級・上)・魔力操作(全)・解体術(上級)・跳躍(全)・縮地(全)・気配察知(全)・生命探知(全)・言語理解・罠感知(全)・罠解除(全)・看破(全)・状態異常耐性(全)・変身・超再生・鑑定(全)・ステータス隠蔽・水棲
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ローガス(366)種族:ヴァンパイアバトラー
Lv334(81up)
体力・・・1,222 (237up)
筋力・・・1,185 (242up)
魔力・・・30,254 (451up)
敏捷・・・1,072 (221up)
精神・・・1,360 (185up)
運・・・339 (81up)
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<スキル>・・・剣術(全)・短剣術(全)・闇魔法(全)・火魔法(中級・上)・土魔法(上級・中)・火魔法(全)・気配察知(全)・生命探知(全)・解体術(全)・罠感知(全)・罠解除(全)・召喚術・状態異常耐性(全)・縮地(全)・言語理解・看破(全)・魔力操作(全)・マナースキル・魅了・吸血・超再生・鑑定(全)・ステータス隠蔽・水棲
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おっさんが楽しげなのも、スキルを取れた事も嬉しいが、アルとローガスは若干面倒くさくなっていた。
いい大人が毎日朝から晩まで顔を合わせる度に赤くなったり、手がちょっと触れただけで声を上げてるのだ……うんざりもするだろう。
しかも、2人とも新木の事をよく知っているというのに、まるで自分だけが知っている事実と言わんばかりに彼女自慢するおっさん。そしてその逆、新木の彼氏自慢をも毎日聞かされたりするのだ、たまったものではない。
「お2人でダンジョン踏破でもしてきたらいかがですかな?」
「2人で?」
「ええ、部屋付きダンジョンの方は光もなくなっていますし、80階層まで到達しましたが、巷のダンジョンは踏破された事もないようですし……お二人の思い出作りとして最適かと」
「思い出作りか……」
「ええ、デートがてら如何ですかな?保様のレベルも上がりましたので、私達と少々離れていても平気ですし」
「ガイン達のお店近く以外だったら踏破して構わないにゃ」
要するにローガスとアル2人と距離を起きたかった、そして子供の恋のようにちょっとした事で顔を赤くする事のないように進展しても欲しかった故に、進言をした。
そんなローガス達の疲弊に気付かないおっさんは素直にその提案を喜んだ。
そして約2週間後、新木とローガスは一般ダンジョンを踏破する気持ちで向かった。
何故に2週間後か……それはおっさんが新木を心配して、部屋付きダンジョン1階層ゴブリンキングを朝から晩まで何百回と繰り返して殺させた為である。ゴブリンキングの手足を根元から切り落とした挙句、首元までをしっかりと氷漬けにした上でトドメだけをささせるといった徹底ぶり……所謂、接待プレイである。
更に使用していない高レベルスキル玉も与えまくっていた。
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新木ヒロコ (28) 種族:ヒューマン
Lv133
体力・・・301
筋力・・・273
魔力・・・451
敏捷・・・289
精神・・・197
運・・・144
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<スキル:弓術(上級)・火魔法(中級・中)・水魔法(初級・中)・土魔法(上級)・光魔法(中級・上)・魔力操作(中級・上)・気配察知(中級・上)・生命探知(中級・上)・状態異常耐性(中級)・鑑定(全)・水棲
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結果、尋常ではないほどレベルアップしまくった新木である。おっさんがバージョンアップする前のダンジョン最下層に近付いた時のステータスに近付くという異常ぶりだ。
だが浮かれまくっている2人がそんな事に気がつくはずもない。アルとローガスもレベルが高い事イコール安全を確保出来るものと思っているので指摘する事はない――常識人が一人もいない。
やって来たのは自宅から30kmほどの場所にあるダンジョンである。ネット情報によると、現在の最高到達階層は37階層らしいので、少なくとも40階はあると判明している為だ。
2人はキャッキャウフフしながら、蹴散らし歩いていく。ステータスのおかげで蹴るだけでモンスターは光に変わるのだ。
他探索者はその異常性を目の当たりにして、驚愕の表情を浮かべたり呆然としているが、2人は自分達の世界に入り込んでいて、その様子に気が付きもしないでいた。
ボス部屋前でも2人の様子は変わらない……
5、10階層はそこそこクリアする人も増えていた為に、たった2人での挑戦でも自衛官に止められる事はなかったが、さすがに15階層にもなると制止と無謀さを説く者が現れたが……聞こえてはいなかった。
どこからどう見ても、年齢を弁えないただのバカップル。
このまま問題なく行けばよかったが、そうはいかない。トラブルに愛され、トラブルを起こす事を基本とするおっさんである。
38階層に到達した時だった。
そこは広い草原、野戦服に鉄や革で出来た鎧を装備した集団が約30名程が入口付近にテントを張って陣取っていた。
彼らの顔は皆疲れ果てており、よく見れば誰もが身体の所々から血が滲み、包帯などを巻いている。
「すみません、通っていいですか」
気楽に声を掛けるおっさん達。
それにギョッとした表情で振り向く集団。
「き、君たちはどこから来た!?」
「えっ、階段降りて来たんですけど」
「いや、まぁ、そうなんだろうが……何人だ?」
「2人ですよ、デートがてら来まして。ねっ?」
「はいっ」
「デ、デート?」
集団の中から出てきた1人の男の質問に、気楽に答えるおっさん。
挙句に余計な情報まで伝えたのは、2人とも頭がお花畑状態だからだろう……
「じょ、冗談だよな?」
「ちゃんと付き合ってるんですよ!」
「あ、うん……」
集団でいる彼らにとっては冗談とも思える言葉と存在だろう、なんせ2人は軽装であり、リュックこそ一応背負っているがドロップ品しか入れていない為に大して膨らんでもいないのだ。
それなのに「付き合ってるんです」とか検討ハズレの答えに怒りよりも乾いた笑いしか出てこなかった。
「私たちは陸上自衛隊ダンジョン探索攻略班の者なんだが、もし良ければ治療薬等に余裕があったら貸して頂けはしないだろうか」
「治療薬は持ってないですが、回復魔法で良ければかけますよ」
「えっ……」
これまで会った誰よりも丁寧な口調で自己紹介をしてきた自衛官に対して、気を良くしたおっさんはにこやかな表情で回復魔法を掛ける事を提案した――明らかにヤバイ奴らだと自衛官は判断してその口調になっていたのだが、その判断は確かに間違っていなかった。
「じゅ、重傷者がいるんだ、血止めだけでいいのでお願い出来ないだろうか?」
「大丈夫ですよ、全員回復させますね」
「えっ……」
現在自衛隊で確認されている……即ち世界の最先端情報では、回復魔法は認識されていても重傷者を完全回復する事など出来ず、更に魔力量から考えても30名もの人間を回復するなど真実味がない話だった。
「では、皆さん集まって下さいね〜エリアヒール!」
おっさんが言葉と共に上げた両手から溢れ出た光が、周りにいた集団に降り注ぐ。
「い……痛みがない」「傷が消える」「動く、腕が動く!」「う、ウソだ!」「バ、バカな」
そこら中から零れる歓喜と驚愕の声。
その反応におっさんはますます気分が良くなり、いつものドヤ顔になっていた――そしてその姿を見た新木は「さすが大磯さん」等と浮かれ気分でいた。
「か、か、あなたは神なのだろうか?」
「違いますよー」
「だ、だが……こんな回復など……」
自衛官は絶句した挙句におっさんを神呼ばわりしだしていた――こんなおっさんが神様だとしたら、世界はきっと絶望に溢れている事は間違いないだろう。
たった2人、軽装でデート気分で最前線まで来た挙句に、気軽に死にかけの重傷者までを回復魔法で一気に治す。
その異常性に誰もが言葉を失っていた……
おっさんと新木の浮かれバカップルだけが、やらかしている事に気付いてもいなかった。
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