第11話ーーおっさん仲間が出来る
おっさんは悩んでいた。
ダンジョン入口に置いたベッドの上で激しく悩んでいた。
何を悩んでいるか、それはスキルの使い方がよくわからないのだ。
これまで得たスキル、初級魔法であればおっさんがライトノベルやアニメ漫画で知っている初級魔法と思われるものをイメージしていれば放つ事が出来た。気配察知や生命探知も同じように五感に気を配れば感じられるようになった。気配遮断・忍び足・隠形もそうである。
だが今回得ることが出来た<テイム><鼓舞>がわからない。まだティムの仕方はわかる、相手を弱らせるなりして服従させればいいのだろうと。だが何匹まで可能なのか?などがわからない。下手にお試しで弱いモンスターを仲間にして、それが唯一であり解除も出来ないとなれば目も当てられない。<鼓舞>は「がんばれー」などと言えばいいのか?それでどうなるのかも理解できない。
そう、今更感満載の事を悩んでいるのだ。まあ、ファンタジーな出来事がその身に降り掛かって浮かれていたのだ仕方がない……と、思うしかない。
「うーん、定番だとステータス押せばいいんだろうけど、SPとかも無いから無理だよな……ってええっ!?」
触れた、触れてしまったのだ。
おっさんはいつもの思い込みからステータス表示にはそれ以外何も無いと信じ込んでいただけだった。
そもそも売却ボードを触る事ができる時点で疑うべきなのだが、まぁ基本的にヌケているおっさんなので……
「なになに……」
わかった事は……
・魔法スキル―魔力を消費し望む現象を起こす。所持魔法スキルの熟練度によって規模が変わる。
つまり例えば風魔法(初級)の状態で、全長100メートルのトルネードを放とうと思っても、ちいさなつむじ風しか起きないという事だ。これまでおっさんは初級とはこういうものだと信じて、それしか想像しなかったので分からなかっただけだった。
・各武術スキル―取扱が上手くなる。
スキル玉を舐めなくてもおっさんに剣術スキルが発生した所をみると、補正はあまりないのだろう。
・気配察知、生命探知―スキルを意識すれば感じることが出来る。
・看破、罠感知、罠解除―スキルを意識すればわかる。
・忍び足、気配遮断、隠形―意識すれば出来る。周りから発見されにくくなる。
この辺りはこれまでやっていた事が当たっていた。
・指揮―仲間の差配が上手くなる。
・鼓舞―応援することによって、仲間やテイムしたモノの全能力が5%上昇する。継続可能時間は10分。
・転移―スキル所持者の魔力×1km。行きたい場所に自分がいる事を詳細にイメージしなければならない。目標先に生物がいた場合や、イメージが曖昧な場合は不可能である。
・性豪―なんかスゴイ。
・環境適応―ダンジョン内では病気に掛かりにくくなる。
肝心のテイムは……
・テイム―スキル所持者のLvの10分の1の数をテイムできる。スキルを意識し、相手が受け入れれば成立するが、所持者のLv以上の相手はテイム出来ない。テイムしたモノが死ぬと枠が空くが、それ以外では解除不能。スキル所持者のLv×1キロメートル以上の距離が離れるとお互いが死ぬ。
「ステータス!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大磯保(36)
Lv72(28up)
体力・・・212(83up)
筋力・・・205(77up)
魔力・・・438(193up)
敏捷・・・147(59up)
精神・・・177(42up)
運・・・72(28up)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<スキル>・・・アイテムボックス・水魔法(全)・土魔法(初級・上)・火魔法(初級・上)・風魔法(初級・中)・剣術(中級)・棍棒術(初級・中)・槍術(初級)・弓術(初級)・投擲術(初級)・忍び足・環境適応・気配察知(初級・上)・生命探知(初級・上)・看破(初級・中)・鑑定(中級)・罠感知(初級)・罠解除(初級)・性豪・転移・指揮・鼓舞・テイム・気配遮断(初級)・隠形(初級)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「7匹か!!何テイムしようかな〜」
おっさんの妄想は広がる、広がりまくる。
だがその前に気付かなければならない事があるが、何も考えていない――低層でそのLvはどう考えてもおかしいという事を。
「まずはウルフだな、カッコイイし……あれ?進化と書いてないけどあるのか?無いとキツいな……先に進んで他のモンスター見てから考えよう、うん」
強くカッコイイ仲間を探す事にしたようだ。あれほどパーティーメンバーを欲しがっていたのにとも思えるが、これから先もずっとぼっちと、今はまだ敢えてぼっちでは圧倒的に違うのだ――モンスターがおっさんのテイムを受け入れてくれるどうかは別として。
「まだ見ぬ素敵で強くてカッコイイモンスターを探すぞー!!」
……欲張りすぎである。
また物欲センサーが大働きしそうな気もするが、おっさんの目は輝いていた。
15階層ボス部屋を出たところに付けておいた目印を目標に転移した。
16階層は見通しの効かない森だった。11〜15階のフィールドは遠くに壁が見えていた、更に階段がありそうな雰囲気の場所が見えていた。だがここではそれが一切出来ない――即ち、運良く見つける事が出来るか、虱潰しに探すしかないという事だ。
スキルを駆使し周りを汲まなく注視しながら歩き、数十分。
「第一モンスター発見!」
どっかのバラエティー番組のように声をあげながら、ゆっくりと近付くとおっさん。そこにいたのは<オーク Lv29 スキル:棍棒術・性豪・調理>だった。1匹で行動している訳ではなく、少し離れた所には4匹ほどいるようである。
初めての相対するモンスターであるから、5匹同時は危険である――いくらレベルが離れていようとも。
気配遮断、隠形、忍び足を強く意識していたが、スキルはあくまでも補助のようなものであり、万能では無い。
パキリッ
地に落ちた枯れ木をおっさんが踏んで音がした瞬間、オークとおっさんの目が合った。
すぐさま身構えるおっさん。
「ブモッ?ブモッモッモブーブモッ」
だがオークは身構えることなく鳴いた、左手を軽くあげながら。
「…………魔法か?スキルには見えなかったぞ?」
「ブブモッ?ブブーモブーブーモ」
上げた手をそのままに、手前にすくうように動かすオーク、そして背を向け歩き出した。
「ま、まさか俺など相手にならないと!?なら、見せてやるよ!まとめて全部やってやる!!」
激高したおっさん、右手に剣を握り締めオークの後を着いていく。
残りの4匹と合流したオークの様子を見守る。どのような隊形を取るのか?どうする気かと。
「ブモッモモ」「ブモッ?」「ブモッーモブ」「ブブーッ」「ブーブーモブ―」
そこは少し拓けた場所だった、5匹の真ん中には竈があり鍋がかけられていた。
オーク達は座り込むと、おっさんに手招きし、空いている場所をとんとんと叩いた。
「うわあああああああっ!」
おっさんは走り出した、全力で走り出した。
そう、気づいてしまったのだ彼は。
オークが自分を仲間だと思っている事に……
「俺は人間だぁぁぁっ!」
泣きながら叫び、無我夢中で走り続けるおっさん。オークを見かける度に、叫び走る、走る、走る。
どうしても避けられない個体がいれば、レベル差ステータス差に任せて体当たりし、走り続けた。
気付かぬ内に階段を降り、降り、降り、降り、降りた。
「違うんだああああっ!」
そして彼は20階層ボスを撃破した。
転移であればすぐその場を立ち去れたはずだが、錯乱していた為に気づかなかった。
20階層ボスまで1日で到達した事を考えれば、それはきっとよかったのだろう……きっと……
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