7 良心

 私は良心を持たない。私が持つのは、ただ神経だけである。…。

 これではあまりにも模倣が過ぎるであろう。

 しかし、私が良心を持たないことは疑いようのない事実として、この悪戯に高潔を望み続ける傲慢な、堕落した肉体の上に、重りのようにして圧し掛かっている。

 私が優しげに見えることもあろう。

 しかし、それはただの無関心と放任主義に他ならない。

 私が良心を持つように見えることもあろう。

 しかし、それはただ私が「良識」を持っているだけに他ならない。

 

 私は、常に良心などというものを何一つ持ち合わせてはいない。

 ただ持ち合わせているのは、良識と社会的規範を守る狡猾な知恵のみである。

 それは単なる、人間が社会的に生きるための道具にしか過ぎない。


 私は、究極に本能的である。

 私は、究極に理性的である。

 私は、何ものにも相反している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る