後始末
「親友というのは便利屋ではない」
『重々承知の上でございます!!』
「ならば態度を改めるべきなんじゃないの」
『それとこれとは話が別でございます』
「お前ふざけんな!」
3年ほど連絡を取っていない相手を親友と呼ぶべきか否かは微妙なところだが、とにかく
『何卒、何卒!』
「時代劇かよ」
『こんなに頭下げて頼み込んでるのに……』
「電話越しじゃわからないでしょ!」
私ははぁーっと溜め息を吐いて、電話を持ってないほうの手で頭を掻きむしった。
絵里須は、明日家に行くけどいい? とのたまったのだ。それ自体に不都合はないけれど、理由が良くなかった。
『だってさ、カレシがしつこくってさ、匿ってほしいの』
「マジで私の実家にトラブル持ち込むのだけはやめてよ。私のお父さん確かに武道やってるけどさ、そんな見ず知らずの男女関係に首突っ込めるような人ではないよ?」
『わかってるよぉ……でも他に頼れそうな人いないし』
「警察は?」
『ぶたれたりしたわけじゃないしね…あくまで精神的な束縛? 言ったらやめてくれるし』
「…なら健全な関係じゃないの」
『だといいんだけどね……』
絵里須は歯切れが悪い。
『彼、奥さんと子どもいるのよ』
「うっわ」
声出るわ。
「まーじぃ……?正直そこまで行くと手に負えないんだけど」
『だから助けてって言ってるの! やっっと昇進決まって鰻登りなんだから、あんなのに水差されたくない!』
「あんたね……」
話を聞く限りじゃどっちも厄介なカップルだった。どうして私はこんな厄介なヒトと親友やってるんだろう。
再び息を吐く。どのみちここまで来られちゃ逃げ場もない。そして、確かに私は今も昔も探偵まがいのことをしている……ヒビの入った男女の仲を取り持つ、あるいはさらにヒビを入れてぶっ壊す程度なら、やってできないことはないだろう。
「……付き合うけど、相応の報酬は期待してるから」
『やったぁー! 助かる!!』
「……」
報酬の話は耳に入っていただろうか?
翌朝、私はけたたましいインターホンに叩き起こされた。
「絵里須!?」
半泣きの絵里須。
「助けて……カレシが
「はぁ!?」
程なくしてそれは真実だとわかった。家のドアに鉈が振り下ろされる音は、正直ちびるぐらい怖かった。
「ほんっっとごめん……」
絵里須は謝り通している。謝っても知らん、カタがついたら縁を切ろう。パトカーのサイレンを聞きながら、私は誓った。
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