牡丹に乱れる
遊女を買った。性別にかかわりなく、という触れ込みだったが、実際は女の相手しか承っていないようだった。
遊女は
「お姉様」
掠れるような声、白魚の如き細指が私の頬を這った。なまめかしく艶めかしい感触で、場慣れを感じさせた。
「お堅い表情……緊張されているのですか?」
でしたらすぐにとろかして差し上げますわ。牡丹は自信たっぷりに言い、私のシャツをまさぐった。
女を抱いたり、抱かれたりすることは、一種の精神的な、そして代替のきかない癒しの一種であると、私は考えている。私は人一倍性欲が強い。そして、相手が女性でなければ、そういうたぐいの興奮を覚えることはできなかった。
牡丹はあっという間に私の上をすべて脱がせて、鳩尾から胸の下を焦らすように吸った。仕事柄、顔や首筋に跡を残すわけにはいかないと事前に伝えてある。
「美しいお身体ですわ。見とれてしまいそう」
うっとりと言い、牡丹は鼠蹊部に舌をちょん、と当てた。直接触られたわけでもないのに、身体の奥がじわりと熱を持つ感覚がある。私の胸に頭を押しつけるようにして、舌が周辺を這い回っている感覚がある。とんとん、と牡丹の頭を撫でてやると、甘えた声が返ってきた。
牡丹の吐息が気持ちいい。適度に薄暗い部屋で、香を焚いているというのも手伝ってか、妙にぼうっとして――眠いのとはまた異なる、心地の良い倦怠感が私を包んだ。
「もっと」
私の声に、牡丹がふと顔を上げた。着物は完全にはだけて、胸が露わになっている。微笑みは蠱惑的だ。
「どうされましたか?」
明るい唇が、囁き声で言葉を紡ぐ。正常な判断力が奪われていく。
「…もっと、やって……激しいの、おねがい」
すぅ、と、牡丹にしなだれかかる。牡丹はあらあら、なんて言いながら、私を優しくかき抱いた。
「加減はできませんが。よろしくて?」
私は夢中で頷いた。早く溺れてしまいたかった。
「あっ……」
鈍い快感が、身体の深奥を突き抜けていく。荒く息を吐いて、ぐったりと床に横たわる。牡丹も頬を上気させて、ふたりともとうに全裸だ。汗で濡れた髪が、彼女の額に張り付いていた。
「ご満足いただけましたか?」
「ええ」
そう言って、彼女の首に腕を回した。絡め取るような接吻を交わす。
「また、一緒にしたい」
「お待ちしておりますわ。いつでも……ね」
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