牡丹に乱れる

 遊女を買った。性別にかかわりなく、という触れ込みだったが、実際は女の相手しか承っていないようだった。

 遊女は牡丹ぼたんと名乗った。眉は少し太いが形良く、血のように赤い口紅は情欲を煽られた。悪戯っぽい笑みが、まだ肉付きも幼い少女の身体には、いささか不釣り合いに感じられた。

「お姉様」

 掠れるような声、白魚の如き細指が私の頬を這った。なまめかしく艶めかしい感触で、を感じさせた。

「お堅い表情……緊張されているのですか?」

 でしたらすぐにとろかして差し上げますわ。牡丹は自信たっぷりに言い、私のシャツをまさぐった。



 女を抱いたり、抱かれたりすることは、一種の精神的な、そして代替のきかない癒しの一種であると、私は考えている。私は人一倍性欲が強い。そして、相手が女性でなければ、そういうたぐいの興奮を覚えることはできなかった。


 牡丹はあっという間に私の上をすべて脱がせて、鳩尾から胸の下を焦らすように吸った。仕事柄、顔や首筋に跡を残すわけにはいかないと事前に伝えてある。

「美しいお身体ですわ。見とれてしまいそう」

 うっとりと言い、牡丹は鼠蹊部に舌をちょん、と当てた。直接触られたわけでもないのに、身体の奥がじわりと熱を持つ感覚がある。私の胸に頭を押しつけるようにして、舌がを這い回っている感覚がある。とんとん、と牡丹の頭を撫でてやると、甘えた声が返ってきた。

 牡丹の吐息が気持ちいい。適度に薄暗い部屋で、香を焚いているというのも手伝ってか、妙にぼうっとして――眠いのとはまた異なる、心地の良い倦怠感が私を包んだ。

「もっと」

 私の声に、牡丹がふと顔を上げた。着物は完全にはだけて、胸が露わになっている。微笑みは蠱惑的だ。

「どうされましたか?」

 明るい唇が、囁き声で言葉を紡ぐ。正常な判断力が奪われていく。

「…もっと、やって……激しいの、おねがい」

 すぅ、と、牡丹にしなだれかかる。牡丹はあらあら、なんて言いながら、私を優しくかき抱いた。

「加減はできませんが。よろしくて?」

 私は夢中で頷いた。早くしまいたかった。


「あっ……」

 鈍い快感が、身体の深奥を突き抜けていく。荒く息を吐いて、ぐったりと床に横たわる。牡丹も頬を上気させて、ふたりともとうに全裸だ。汗で濡れた髪が、彼女の額に張り付いていた。

「ご満足いただけましたか?」

「ええ」

 そう言って、彼女の首に腕を回した。絡め取るような接吻を交わす。

「また、一緒にしたい」

「お待ちしておりますわ。いつでも……ね」

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