「続き」をするには向かない場所

 大講義室の一番後ろの席をとったのは正解だった。ここなら後ろから覗かれる心配はない……前に陣取っているのはウェイ系の後輩数人、講義もろくに聴かずにこそこそとスマホを見ている。まともにやる気がないのなら来ないでほしい。人のこと言えた立場ではないが。


「んっ……くぅっ……ん……っ!」

 友人のすみの身体を触る。首筋から脇の下、胸の横をなぞるように指を這わせていく。下着ブラジャーなどというものはとっくに外されている。今頃は腰辺りに落ちているのだろう。

「ほら。あんまり大きい声出したら聞こえちゃうよ?」

 胸を下から掬い上げるように持ち上げて揺らす。ブラジャーがないので、比較的厚いセーター越しでもその様子が見て取れた。しかし大きい。勉強中にコレを肩から吊っていては重くて仕方がないだろう。私は親切心から亜澄の双丘を支えてあげているのである。いわば慈善だ。

「……海和みわがっ…海和、が、そ、うさせて、るん……でしょっ……」

 ふー、ふーと辛そうに喘ぎながら、亜澄は必死に口元を押さえている。バレたら、問答無用でふたりとも室外に叩き出されるのだろう。亜澄は被害者なのに。かわいそうだ。

 2限からだと思っていた授業が1限からだった。完全に私たちのミスだが、3時過ぎまでやることやってて、そのまま寝落ちて起きてすぐ2回戦に突入したときに気付いたので不完全燃焼なのだ。大学に向かうために急いで服を着込んだ亜澄が、さっきまで私のにいたくせに、赤ん坊みたいに啼いていたくせに、ただ無意識的に服を着ただけの亜澄がどうしようもなく扇情的で、私は授業開始後すぐ、亜澄に劣情をぶつけた。拒まれたら我慢するつもりだったが、彼女は抵抗しなかった。


 ひとしきり上半身をもてあそんだ。亜澄の身体は既に限界が近く、ジーンズ越しの太ももをうねうねと擦り合わせていた。

「はぁっ……うぅんっ…! あ、ふあ……」

「かわいい……かわいいよ、亜澄……」

 耳元に息を吹き込むように愛を囁いて。ゆっくりとベルトに手を回していく。一瞬、亜澄が驚いたような顔でこちらを見た。意に介する必要はない。教室内もだんだんと静かになってきたから、音をなるべくたてないように慎重に。

「……!」

 抜いたベルトを見せつける。亜澄は顔を真っ赤にし、少し強めに私の腕を引っぱたいてきた。私は構わず、落ちてきていたブラジャーも奪い取る。信じられないといわんばかりの、絶望に満ちた表情がまたかわいい。私はそのままパンツのゴムをつまみ上げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る