イセカイ系な彼女
ながやん
Act.01 プロローグ
運命の出会い?的な?
A県まほろば市。
と言っても、田舎という程田舎でもなく、都会と言うには少しおこがましい。そんな、どこにでもある地方中枢都市の成り損ない、それがまほろば市。
僕が生まれた
「
「あ、はい……すみません」
若い女教師に
二年D組。
今日からここが、僕が一年間を過ごす教室だ。始業式から一週間遅れての転校生に、クラスの全員が視線を投じてくる。無遠慮な好奇心が、全身に緊張をもたらした。
「はい、皆さん。新しくこの学級の一員になった、汀渚君です。御両親の仕事の都合で、単身汀君だけがこの町に戻ってきました。小さい頃までまほろば市で暮らしていたそうですよ? ふふ、じゃあ自己紹介を」
僕は静かに息を大きく吸って、ゆっくり吐き出す。
そして、一歩前へと歩み出た。
最初が肝心だ。
転校には慣れっこだったし、いつもの調子でよろしくやっていれば大丈夫。僕なりの
「汀渚です。よろしくお願いします。……ッ! また、右手が……失礼、なんでもない」
いつも右手に、包帯を巻いている。
それらしい
そして、再度ゆっくりとクラス中を見渡し、用意された
「僕は、自分で言うのもなんだが、変わり者……そう、普通の人間じゃない。
クラスの静寂が、気まずい沈黙で満たされてゆく。
よし、想定通りだ。
上手く引かれたと思う。
ドン引きされたなら、大成功だ。
正直、友達なんていらない。学校のクラスメイトに求めることは、僕に対して不干渉であること。せいぜい、欠席した時にプリントを届けてくれる程度の仲でいい。
だからいつも『厨二病で邪気眼な痛い奴』で押し通している。
いじる人間すら寄せ付けない、完璧なキャラ作りで周囲をシャットアウトだ。
ミッション・コンプリート……これで僕の静かな学園生活が始まっ――!?
「はーい、という訳で汀君は、大変な運命を背負ってるそうです。みんな、できる範囲で助けてあげてくださいね」
「はーい!」
「そっかあ、これは……
「なんにせよ、よろしくな! なんかあったら俺らを頼ってくれよ!」
「イケメンだから、ああいうキャラって許されちゃう感じ。ま、結果オーライよね!」
「きっと事情があるのよね。仲良くなれるといいなあ」
……は?
いや、ちょっと待って。
先生、その反応は……なに?
周りのみんなも、はーい! じゃないだろ。ちょっとこれ、どういうことなの? この場合、絶句して『キモッ!』『イタタ……』『やべー、まじやべー』って顔になる
ずっと今まで、そうだった。
この、妙にフレンドリーな感じはなんだ!
僕は言葉を失った。
このクラス、明らかに反応がおかしい。
今までの転校経験からは、想像もできない温かさだ。生温かく、かわいそうな奴を見る目じゃない……もっと普通に、これからよろしくねっていう雰囲気だ!?
「じゃあ、先生が汀君の運命、導いちゃいまぁす。ふふ、席は……ああ、あそこが空いてるわ」
なにその軽いノリ……動じぬ笑顔がむしろ怖い。
担任教師は、一番後ろの窓際を指差した。
丁度、空席が一つある。
新学期のクラス替えで、前から座らせていったら最後が余りました、的な。
日当たり良好、最後列で
だが、
席まで歩く間、茶化したりくさしたりする声が飛んでこない。
定番の、脚を引っ掛けてくるヤンキーっぽい奴もいない。
なんてことだ……ここは異世界か?
そして僕は、この異常な空気の発生源に遭遇した。
「ふあ……ふぅ。あら、転校生さん? 私のお
机に突っ伏して豪快に寝ていた少女が、
真っ白な長い髪は、前髪が片目を半分隠す程だ。
見詰めてくる目が、深い
まるで妖精か天使か、あるいはその両方だ。
常人離れした美貌は、あどけないのにとても
「話は聞かせてもらったわ。面白そう……キミに興味が湧いたぞ? だから、嫌でも私と仲良くしてもらうわね」
その少女の名は、
自称、イセカイ系の女……この異常な雰囲気を生み出している特異点だ。
僕の孤立した平和は、ガチで本気なやべえ奴、七凪によって
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