第21話 晴れない思い

「……」


 後日。ウチはモヤッとした気持ちで、ユーレイ課を訪れていた。

 事件は、確かに解決した。けどウチの心は、晴れないままだ。


「……本当に、あんな終わり方しかなかったんかな」

「美沙緒ちゃん?」


 思わず口から漏れ出た声に、近くにいた瞳さんが反応する。瞳さんは心配そうに、ウチの顔を覗き込んでくる。


「どうかした? そういえば月夜野商事から戻ってきた時も、顔色が優れなかったようだけど」

「あ……っと」


 そう聞かれ、ウチは正直に胸の内を話していいか悩んでしまう。でも、どこかで吐き出さなければ、重たい心は晴れそうになかった。


「……ずっと、今回の事件について考えてたんです」

「今回の?」

「本当に、赤城さんは今の仕事を辞めるしかなかったんでしょうか……?」


 瞳さんは、黙ってウチの瞳を見返した。そのままウチを見つめていたかと思うと、やがて、優しい笑みを浮かべる。


「――優しいのね、あなたは」

「赤城さんにもそう言われたけど、全然優しいとかじゃないです。ただ、結果的にウチがあの会社から赤城さんを追い出したようなものだから……」

「罪悪感?」

「……」


 ウチはその言葉に、何も答えられなかった。罪悪感なのか、それとも単に自分が悪者になりたくないだけなのか、正直なところウチ自身にもよく解らなかった。


「……そうね、じゃあ、今彼がどうしてるか見てみる?」

「えっ!?」


 すると瞳さんが、そんな思いもがけない事を言った。ウチは驚いて、つい大声を上げてしまう。


「た、確かに、今なら赤城さん、最後の仕事中やと思いますけど……。今から月夜野商事に行くんですか?」

「行かなくても、様子だけなら見れるわ。私の力を使えばね」

「瞳さんの力……?」


 ウチが聞き直すと、瞳さんは口元の笑みを更に深めて続ける。


「私の『百目』の力はね、視線を合わせた事のある者同士の視界を共有させる事が出来るの。前に、髪切りに襲われた時の事は覚えてる?」

「は、はい……そういえばあの時、今思い返せば無茶苦茶いいタイミングで白川さんが乱入してきましたけど……」

「あの時は、あなたと白川君の視界を繋げていたの。白川君が前の日にあなたに接触したのは、そういう理由もあったのよ」

「成る程……」


 その説明に、ウチは感心してほうと息を吐いた。モノノ怪の力って、色々便利なんやなあ……。


「……それで、どうする? 彼の様子を見たいかしら?」


 再度、瞳さんがウチに問う。ならば、もう――ウチの答えは決まっていた。



「見せて下さい。赤城さんの様子を」

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