◆239◆ロドリゴの思惑

 僕は仕方なく従う事にした。

 イラーノは、お父さんと叫んでいたけど、本当においてキュイの居る場所へと向かう。

 ストンとキュイの目の前に僕達は降り立った。


 『何かあったのかギャウギャウ?』


 昨日訪ねたばかりだと言うのに、僕達が現れたからだと思うけどキュイが訪ねてきた。


 「預けた物を返して頂こうと思いまして」


 『それはかまないがギャウギャウその者はギャウ?』


 「イラーノの父親です」


 キュイの質問に、ルイユが返答している。


 「ねえ、剣を外す前に、何をするのか教えてよ。ルイユもわかっているからついて来たんだよね?」


 「外せばわかる」


 ルイユに聞くも、ロドリゴさんが答えた。たぶん、ロドリゴさんに聞いても答えてくれないと思う。


 「外したら教えます」


 「絶対だよ?」


 「えぇ」


 ルイユがわかったと頷いた。

 それに異論がないのか、ロドリゴさんは何も言わない。


 僕はキュイの首元に行き、昨日取り付けた剣を取り外しに掛かる。


 「しかし大人しいものなんだな」


 「……急がないと」


 外れた。それと同時ぐらいにルイユの呟きが聞こえた。


 「もしかして来たか?」


 「えぇ。エルフが飛んできます!」


 「え!」


 そう聞くと、キュイの側にいる僕の方にロドリゴさんは走って来た。


 「剣を両手で握れ!」


 ロドリゴさんに言われ、エルフに奪われない為になのかと、両手で剣を持つと、近づいたロドリゴさんが僕の手の上に手を添えた。いや、握った。

 後ろから僕を包み込む様に――これって、覚えがある!


 「まさか! ルイユを!?」


 この剣で殺す気!?

 気づけば、目の前にルイユが立っていた!


 「彼らが来ます! 早く!」


 「嫌だ! ロドリゴさん、手を離して!」


 「これが一番の方法なんだ。俺も背負うから!」


 まさかコーリゼさんと同じ方法をとるなんて思わなかった。いや、話しを聞いたから思いついたんだ!

 そして、ルイユはロドリゴさんの考えがわかって、協力しようとした。確実に魔女を排除する為に……。


 「嫌だ!! 僕と一緒に生きてくれるって言ったじゃないか! ロドリゴさん! お願い離して!」


 「頼む、クテュール。俺を恨んでくれ!」


 「いやだ~!!」


 ガツ!!


 「っつ!」


 「「ジーン!」」


 僕とルイユの声が重なった。


 「なぜ、邪魔します!」


 『嫌だと言っているギャウギャウ!』


 「くそ! 邪魔するな!」


 「主様!」


 ザザザザン!

 空から氷の槍が降り注いだ!

 ルイユが僕に覆いかぶさるも、僕達の上には氷の槍は降り注がなかった。影が覆っただけだ。

 キュイが羽根を広げて、僕達を守ってくれていた!


 「お前が、やっぱりルイユか? 今までしっぽを出さないから確証がなかったが。昨日来た場所は、ここのようだな」


 空に浮かんだエルフが三人いた。その真ん中のエルフがそう言った。


 「くそ。間に合わなかったか」


 「いえ。まだ間に合います! キュイ、ジーン。私が亡きあと主様をお願いします!」


 「何を言ってるの!? 僕は絶対、やらないからね!」


 「イラーノ!?」


 僕が叫ぶのと一緒ぐらいに、空を見上げルイユが叫ぶ。


 「え?」


 まだ姿は見えないが、ルイユはイラーノを感知したみたいだ。

 空に浮いていたエルフが、遠くを見つめたと思ったら、凄い速さで下りて来た。その手には、剣を持っている!


 「っち!」


 ロドリゴさんは、舌打ちすると魔女が封印された剣を手にエルフと対峙。けど、二人のエルフはルイユを襲っている! 剣を持っているロドリゴさんには、一人だ。


 もしかして、狙いはルイユ?


 《主様、彼らはその剣の存在を知らない様です。たぶん、チュトラリーが誰かも気づいていないのではないでしょうか? ジーンに乗ってお逃げください!》


 何を言っているんだ!


 バッサバッサ。

 羽根が羽ばたく音が聞こえたと思ったら、キュイがロドリゴさんとやり合っていたエルフを鷲掴みした!


 「何だこの状況は!」


 「お父さん! クテュール!」


 「なぜ、イラーノを連れて来た!」


 現れた二人をロドリゴさんが、睨み付け叫ぶ。


 「また、泣きつかれたのでな。お前より俺の方が頼りになるようだな」


 「なんだと!」


 わざとアベガルさんが、ロドリゴさんを怒らす様な言い方をした。


 『この者はどうするギャウギャウ


 「アベガル! そっちに行ったわよ!」


 「え? え?!」


 二人の台詞に困惑していると、ルイユを襲っていた一人が、二人の方へと飛んで行っていく!


 「イラーノ! ルイユ! そのエルフは任せて、飛んで向こうを!」


 「二人を助けて!」


 僕の声とロドリゴさんの声が重なった。

 ロドリゴさんの台詞が聞こえたのか、向こうからロドリゴさんに向かって来る。

 そして、気づくとキュイに捕まったエルフから僕達に魔法が放たれていた!

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