◆227◆ロドリゴの疑問
「お帰り」
「ただいま、お父さん」
「ただいま」
出迎えてくれたのは、ロドリゴさん達だ。なぜかリゼタもいる。
ここは、ノラノラシチ街の門。
僕達は、モイクナチ街に戻ると目立つからと、ブツゴゴチ街にそのまま滞在し、三か月間アベガルさんの所で剣の修行をした。
「二人が大変お世話になったようで、ありがとうございます」
僕達の後ろにいるアベガルさんに、ロドリゴさんは頭を下げた。ダイドさんも一緒に下げている。
アベガルさんは、馬で別に来た。僕達は馬車だ。その馬車に、僕とイラーノにルイユ、それにコーリゼさん、そして何故かマドラーユさんまでついて来た。
マドラーユさんも三か月間ブツゴゴチ街に滞在し、その間イラーノと僕は彼女のお手伝いをし約束を果たした。
「マドラーユさんもお元気そうで……」
ロドリゴさんは、あまり嬉しくなさそうだ。
まあ、マドラーユさんに散々言われたからだろうけど。
「ここには、ブツゴゴチ街の様な宿はありませんが……」
「大丈夫よ。わかってるから。普通の宿で十分よ」
ロドリゴさんもやっぱり知ったんだ。マドラーユさんが、あの大きな宿の経営者の孫だって。
あの宿を経営しているのは、ニュドルラーさんっていう人で、元ブツゴゴチ街の商人ギルドマスターだった人!
ロドリゴさんの読み通り、マドラーユさんは権力者の孫娘だったんだ。
「では、宿にご案内します。夜には一席を設けてますので、それまでくつろぎ下さい」
ダイドさんがそう言って案内をする。
僕達が、一度街へ帰ると連絡を入れてあったから準備をしたようだ。
ダイドさんが三人を案内し、僕達はロドリゴさんと冒険者ギルドへと行く。リゼタもついてきているけどね。
「ねえ、その人は紹介してくれないの?」
リゼタが、ジーッとルイユを見て言った。
「あらすみません。紹介が遅れました。私、ルイユと申します」
クルッとルイユは、リゼタに振り向くとにっこりと微笑んで自己紹介をした。
「ルイユですって!!」
リゼタが凄く驚いている……。
そうだった。僕が好きな人って言ってあるんだった!
「あぁ、悪いが、ちょっと二人に話があるので、ルイユに話があるのなら二人で……」
「それは無理!」
ロドリゴさんが、めんどくさそうにルイユ達に言うので慌てて止めた。
ルイユとリゼタを二人っきりにしたらルイユが何を吹き込むかわからない!
「なんで、ルイユがここに来るのよ!」
「あらいけませんか? 私は主人について来ただけなのですが……」
ちょ……その言い方、誤解されるから!!
隣でイラーノがふき出して、声を殺して笑いをこらえている。
アベガルさんがこれで勘違いしたのをわかっているルイユは、わざと言ったに違いない。
「クテュールのバカ!」
そう叫ぶとリゼタは走って、冒険者ギルドの建物の中に入って行った。
「まあ、自分で蒔いた種だからな」
ボソッとロドリゴさんが呟く。
そうだけどさぁ……。これでリゼタが、諦めてくれればいいけどね。
僕達は、ロドリゴさんの部屋へ行った。
「さてと、色々説明してもらおうか。あのコーリゼという男は、前にもこの街に滞在し、君達を見張っていたようだが? それに、アベガルさんがなぜ急に協力的になっている?」
だよね。きっと一番不思議なのはアベガルさんの事だよね。僕のテイマーの表示を消したりして。
「えっと前に、チュトラリーの話をしたよね?」
僕が聞くと、聞いたとロドリゴさんは頷く。
「実はその能力は、昔にルイユと一緒に魔女を封印したエルフの能力だったんだ」
「魔女を倒すまでに及ばず、魔女を倒すのをチュトラリーになる人物に託した。私は、その手助けをする為に輪廻を繰り返していたのです」
「ちょっと待て……」
僕に続き、ルイユが説明を続けると、ロドリゴさんは困惑した顔をする。
「クテュールは、魔女退治に選ばれたって事か?」
「そうなりますね。ですが本来は、エルフがチュトラリーになります。事情があり、人間のクテュールになったのです」
「その事情とは? 前に言っていたのはでたらめか?」
「いえ。それも本当です。二つの役割があったのです。魔女が復活するまでの間は、エルフが滅びない様に繁栄をもたらす役目、そしてもし魔女が復活した場合は、魔女を倒す役目です」
「……まて……一つ目は出来ても二つ目の魔女を倒すのは、クテュールでは無理そうだが?」
ルイユの説明に、驚いて僕を見ながらロドリゴさんは言った。
僕もそう思っていたけど、実際は上手く行ってしまった。
「いえ、見事に成し遂げました。本来は私も一緒に死んで、魔女共々輪廻出来ない様にする手はずだったのですが……」
「なに!? 自らの命を差し出す事になっていたというのか?」
信じられないとロドリゴさんは、ルイユを見つめ……いや睨み付けている。
ロドリゴさんの手が、腰にある剣を握った!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます