◇174◇冷戦
やり過ぎ感満載の作戦だけど、アベガルさんが森からの撤退を決め、ジュダーノさん達を森へと返す事を決めた。
三人を馬に乗せ森へと向かっていく。
『
え? じゃやっぱり作戦で、ルイユは生きている?
キュイが言った言葉に、ホッとしたら腰が抜けたのか力が入らなくなって、その場に僕は座り込んだ。
「クテュール大丈夫?」
「おい! イラーノ」
イラーノが僕に近づいて声を掛ける。アベガルさんも驚くもこっちに来ない。
目の前には、ボスのキュイがいる。ほとんどの冒険者は、足がすくんで動けない中、イラーノの行動は驚かれた。
「壮大するぎるね……」
イラーノがボソッと言った。
「お願いだから誰も傷つけないで!」
イラーノがキュイに叫ぶ。
『
キュイが僕に聞くも答えたら変なので、僕は黙っている。
「イラーノ、君はモンスターと会話が出来るのか?」
「まさか。出来ませんよ。でも気持ちだけでも伝えようかと思ってね」
アベガルさんの問いにイラーノはそう答えた。
会話は成立していない。だから間違ってはいないけど……。
ジュダーノさん達三人が到着するのは、早くて四時間後だ。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
僕達は、四時間ただジッとしていた。
キュイもただ上空に浮いて、こちらの様子を伺っている。
って、ただ浮いているだけだけど、疲れないのかな?
もう陽が登っている。
住宅街の方でも気がついているかもしれない。
このままだと大騒ぎだ。
《主様。エルフの三人が森へ帰され、騎士団が撤退しました。キュイに合図お願いします。私の名を叫んで下さい》
ルイユだ! 生きていた! よかった。
うん? 合図? 名前を叫べって!?
僕は立ち上がった。
「クテュール、どうしたの?」
横に一緒に座っていたイラーノが、僕を見上げ聞く。
そのイラーノを見てから後ろを振り返り冒険者達を見ると、立ち上がった僕を何だと注目していた。
何か恥ずかしいんだけど。
「ルイユー!!」
『
僕は、それに微かに頷いた。
それを見たキュイは、バッサバッサと急上昇し、エルフの森へと向かっていく。
「一体なんだ?」
口々に皆が、何がどうなったと騒ぎ始めた。
「どういう事だ?」
「わかりません」
アベガルさんが、近づいて来て聞いた。
イラーノが立ち上がって答える。
たぶんイラーノならキュイが言った言葉で、ピンと来ていると思う。
「森へ向かったようだな。だいたい時間か……」
冒険者達は、飛び去ったキュイをジッと暫く見つめていた。
『
「リリン!」
リリンは、街に居たのか。
僕に駆け寄ったリリンを抱き上げる。
「体調はどう大丈夫?」
『
「まるで本当に会話をしているみたいだな」
しまった。つい嬉しくて話掛けちゃった。
アベガルさんが、苦笑いで僕を見ている。
「あの、俺達はこれからどうなるんですか? また牢屋なんでしょうか?」
イラーノが聞いた。勇気あるね。
「ルイユも死んで、エルフ達が墓を守っていたのもわかった。ただ一つだけわからないのは、お前を探していた二人組だ」
「……彼らは、墓の事を嗅ぎ回っているのが、ドドイさんだと思ったみたい。話によると、ドドイさんは墓の事は知らなかった。俺の本当の父親は、ドドイさんに俺を託したんだ」
「何? じゃ君は、ドドイさんに育てられたのか?」
イラーノは、首を横に振った。
「ドドイさんの友人であるロドリゴさんです」
「ロドリゴさんって、ギルドマスターじゃないか!」
「やっぱり知ってましたか……」
「なるほどな。言いづらいわけだ」
アベガルさんも納得したみたい。
これでうまく行ったらいいんだけどね。
その後、エルフの森には近づかない約束が行われ、僕達も次の日の朝無事解放された。
オスダルスさんとボールウィンツさんの二人は、冒険者を剥奪。
でも彼らは、元々人間の内情を知るのに冒険者になったようで、今回の事で冒険者を辞めるつもりだった。
「一時はどうなるかと思ったけど、何とかなったね」
うーんと両腕を頭上に伸ばしながらイラーノが言った。
ロドリゴさんの方も作戦が成功したようで、ギルドマスターのままでいるとわかり一安心。
ルイユとジーンに会ってないけど大丈夫かな?
ルイユが余計な事をしていないかが心配だ。
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