◆165◆蛇に睨まれた蛙
どうしてこうなるんだ!
って、王になる事を放棄したジュダーノさんまで僕を殺そうとするなんて、どうして!?
「な、なんで、ジュダーノさんまで僕を殺そうとするの? 僕が、チュトラリーになったのって、あなたが放棄したからですよね?」
「だろうな。二番手が君だった。だがそれは関係ない」
「え!? じゃなんで? 意味がわからないよ!」
「俺の友達だって言っているだろう? それとも俺も殺す気?」
「出来れば一緒にと思うが、ジュダーノが許さないだろうな」
イラーノがジュダーノさんに問うと、平然とカゲイケセさんがそう答えた。
もうジュダーノさんがチュトラリーになる事がないが、イラーノを消したいらしい。だがジュダーノが阻止するだろうからしないと答えたのだ。
で、僕はどうして命を狙われているの? ただの逆恨み? でもジュダーノさんは違うよね?
僕は、もしかしたらルイユが関係しているのではないかと、チラッとルイユを見た。彼女は、ちょっと困り顔になる。
何か見当がついているようだ。
「ルイユ。君は、心当たりあるの?」
「まあ……お怒りはごもっともかと。でも助ける為に仕方がなかった事なので、お許し願いたいのですが」
うん?
助けるために仕方がなかった? って!
イラーノの血を吸った事を言っているの?
なんでわかったの?
「あのさ。もうちょっと僕にもわかりやすく教えてくれないかな?」
「もしかして、主人であるあなたは何もご存知ない?」
僕が言うと、カゲイケセさんが呆れた様に言った。
何か知らないけど、当たり前の事の様だ。
「イラーノの血を吸った。その容姿が証拠だ!」
「え? 俺の血を吸ったって? いつ!?」
ジュダーノさんの言葉に、イラーノは驚いている。
気を失っている間の事だったので、知らないからだ。
容姿って吸った相手に似るものだったのか。単にイラーノを真似たのかと思っていた。
まさかこんな形で知られるなんて……。
「イラーノが瀕死の状態だったのです。こうしなければ、彼も助かりませんでした」
「よく言う。瀕死の状態の人間の血を吸えば死ぬかもしないのだぞ? 助けようとしたのは、主人であるクテュールだろう?」
ルイユの言葉に、ムッとしてジュダーノさんは答える。
「ちょっと待って! クテュール、君知っていた?」
「え……あ……うーんと」
「主様は止めました。ですが、主様の意思に反し私の判断で覚醒の為、吸わせて頂きました。わかっているとは思いますが、血を吸わなくても彼は助かりませんでしたよ。そうしたのは、あなた達の仲間のエルフの二人組です。恨むならそちらでしょう?」
「オスダルスとボールウィンツか……」
ルイユの言葉にジュダーノが呟く。それにルイユが頷いた。
と、遠くから何かが僕達の前に落ちて来た!
「うわぁ!!」
「きゃ!」
皆が、悲鳴を上げた!
え? 何? 何が起きたの?
見渡せば僕以外全員、苦痛の表情で身動きが取れない様だ。
「何、これ……」
《主様……やられました。これはたぶん、アベガルが感知玉を投げ入れたのだと思います》
感知玉!? って、なぜ僕だけ平気?
どうしたらいいんだ。
《すみません。変化が解けます……》
解けるって……。魔力を吸い取られているって事!?
ルイユは、変化が解け元のモンスターの姿になった。それでも動けないらしい。
「ルイユ、大丈夫? どうして僕にだけ効いてない?」
僕はそう言いながらルイユを抱き上げた。
《魔法ですので、キャンセルされたのかと……》
キャンセル! だったら……。
「キャンセル」
僕が発すると、一瞬ルイユが光に包まれた。
『ありがとうございます』
「よかった」
じゃ、皆もキャンセルで解こう。
そう思った時、後ろから声が掛かった。
「よかった無事か……」
アベガルさんだ!
そうだ! ルイユがモンスターだとばれる!
僕は慌てて首に、マジックアイテムを着けた。
「無事かって! これ、アベガルさんの仕業だよね!」
「君を助ける為だ。うん? ルイユはどうした? 彼女は?」
僕は、抱きかかえているルイユをギュッとする。
「し、知らない」
「知らないわけないだろう? 今さっきまでここにいただろうが! 逃がしたのか? 君は騙されているんだ。待ち合わせ場所はどこだ?」
騙されているって……。
これって、僕をエルフから助け出すためにやった事なの?
「だ、騙されてないし……」
「でも言い争いはしていたよな? 遠くからずっと見ていた」
《感知できない様に、結界を張っていたのかもしれませんね。最初から油断させる作戦だったのでしょう。主様、逃げましょう!》
僕は、首を横に振った。
イラーノを置いては逃げられない!
何とかイラーノ達をキャンセルしないと……。
気が焦るも、アベガルさんに睨み付けられて動けなかった。
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