◆151◆そういうもんだよねって話

 ベットが三つ並んだお部屋。

 一番手前のベットにアベガルさんは、ルイユを寝かせた。


 「すまなかった。弟たちが襲われさぞショックだった事だろう。あまりにも受け答えがはきはきとしていたからつい……。あ、ここの代金はこちらで持ちますので、ゆっくり休んで下さい」


 「え! そこまでは……」


 「ありがとうございます。ゆっくり休ませて頂きます」


 僕が言いかけると、遮る様にルイユがニッコリと微笑んでアベガルさんに言った。彼は、頬を染め軽く礼をすると部屋を出て行く。


 「はぁ。で、どういう事?」


 ため息をついて、イラーノは僕に聞いて来た。


 「えーと……」


 「なんで、俺にそっくりなの? なんで人の姿なの?」


 「あー……」


 どうしよう。イラーノの血を吸って人の姿になったって言って大丈夫だろうか。


 「私が説明するわ」


 上半身を起こし、ベットに座るとルイユが言った。

 その彼女をジーっと、イラーノは見つめる。


 「あの二人がモンスターを呼んだ時、主様はちょうど到着した所で成り行きを見守っておられたのです。あなたが逃げた後、私にモンスターを倒す様に命じ、モンスターを倒してから救出に向かいしました」


 「み、見てたの?」


 ぐるんと僕の方を見てイラーノが聞いた。


 「あ、うん。でも僕じゃ何も出来ないし、あのまま放って置くわけにもいかなし……。助けに行くの遅れてごめん」


 「でもあの人達、なんで俺の命狙ってたんだろう?」


 「あなたが、人間とエルフのハーフだからかもしれないわね」


 「それって、俺がカギだから?」


 あ、そっか!

 楽園のカギ! ハーフだからじゃなくて、カギだからか。


 「カギ?」


 ルイユは、首を傾げる。


 「エルフが住む楽園に入る為にはカギが必要らしくて、そのカギが物とかではなくて、エルフの血を引くイラーノかもって事」


 「今は、そんな風に結界を張っているって事なのかしら?」


 僕が説明すると、ルイユからそう返って来た。という事は、昔は結界など張っていなかったって事?


 「あのさ……ルイユってエルフについてかなり詳しいの?」


 今の言葉でそう思ったのかイラーノが聞いて来た。


 「二人よりは詳しいわよ。と言っても、私が主様の眷属になっている間の時代の事しかわからないけどね」


 説明を受けたイラーノは、眉間に皺を寄せる。


 「ルイユってずっと生きていたの?」


 「いいえ。寿命で言えばエルフぐらいかしら?」


 「………。どういう事?」


 「この世界で輪廻……転生というのかしら? それを繰り返していたって事よ。但し、主様に出会わないとその事を思い出す事もなく、能力も眠ったまま。人間の言葉がわかるのは、主様に会って能力が戻ったからよ」


 「へえ……」


 ルイユの説明にイラーノは、感心したように頷いている。たぶん、主様=テイマーだと思っているんだろうな。


 「それで、戦う時は人の姿になるって事?」


 「いいえ。本来の力を取り戻すと人の姿になる事が出来ます。そうすると、ヒールを使う事が出来るのです」


 「そうなんだ。じゃ、俺達にヒールする為に人の姿に? あ、そうだった。助けて頂きありがとうございます。よく考えれば、命の恩人だよね」


 「いいえ。主様を助ける為ですので」


 「そうなんだ。それでも、ありがとう」


 何かよくわかんないけど、ルイユの説明で納得してくれたみたい。


 「ルイユって、ジーン達と違って凄い能力持っているんだね」


 「まあ人の姿になれるのは私だけでしょうけど。ジーンだってかなり強くなっているわよ。魔力さえもっと溜めればね」


 「へえ。魔力……」


 イラーノは、ふむふむと頷いている。

 なんていうか、凄くナチュラルに受け止め過ぎじゃないか?


 「あのさ。何にも疑問ないの?」


 「うん? 疑問?」


 僕が質問をすると、何をいまさらと言う顔つきになった。


 「色々説明されてそれ理解できると思う? そういうもんなんだって割り切るしかないでしょう? 人間だよ? 人の姿になるモンスターだよ? 原理聞いて理解出来る?」


 「いや……そこは無理かな」


 「だろう? それに俺も帽子を被れば、モンスターの言葉を理解出来るようになったから受け入れやすいんだと思う。テイマーってこんな感じ? みたいな」


 「イラーノ。一つ言っておきますが、主様をそこら辺のテイマーと一緒にしないで頂ける? 別物ですので」


 いきなりルイユが凄んでイラーノに言った。


 「ご、ごめん。うん。特別だよね……」


 びっくりしてイラーノは、ルイユに謝る。

 ルイユは、満足したようにニッコリ微笑んだ。

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