◇150◇迫真の演技?

 僕達は、冒険者ギルドの二階に連れて行かれて、そこには、モガードさんとウダエカさんがいた。


 「さて、皆の話を総合するとだな。オスダルスさんとボールウィンツさんは、イラーノを探していて、モガード達が知っていたので教えてやった。だがその目的は、イラーノを殺す事だった。それが知れない様にする為に、係わったモガードとウダエカ、それとイラーノとパーティーを組んでいたクテュールを殺そうとした。合ってるか?」


 アベガルさんが聞くも、たぶん、そうなんだろうとしか言えない。

 モンスターのせいにして、イラーノだけじゃなく、僕やモガードさんまで殺そうとした。いつもそうやって、探し出しては殺しているんだろうか?


 「合ってると思います! ただ俺達は、イラーノが二人に雰囲気が似ていたから似た奴がいたって話しただけなんです! そうしたら会ってみたいって。まさか殺そうとするなんて!」


 モガードさんが、そう言った。

 うむとウダエカさんが頷く。


 「イラーノ心当たりはないか?」


 「ないです。今日会ったばかりで……」


 「あ、そう言えば。お前の父親の話をしていなかったか?」


 ウダエカさんが言う。

 余計な事を!


 「そうなのか?」


 「いえ……人違いです。俺の父さんの名前じゃなかった」


 「因みに、イラーノ父親の名は何という?」


 イラーノは、顔を伏せた。

 僕達は、こっそり抜け出して来た。

 イラーノの父親、ロドリゴさんは今頃どうなっているかわからない。


 「どうした?」


 「やっぱりドドイなんだろう!」


 「ドドイだと!?」


 ウダエカさんが言った名に、アベガルさんが反応する。


 「あれ? 知り合いですか?」


 驚いて、ウダエカさんが聞いた。


 「いや彼はちょっと、この国では有名な人物だ」


 父さんって、そんなに有名だったのか……。


 「ドドイさんではないです。だからそう言ったのに、嘘だといって襲われたんです」


 「あ、そうだ! 思い出した! 口笛を……いや、指笛を吹いてモンスターを呼んだんです!」


 「テイマーか……」


 モガードさんが言った言葉に、アベガルさんは顔をしかめる。

 やっぱりそう思うよね?


「よし。わかった。いいか。彼らがテイマーだという事は、絶対に他に漏らさない事!」


 アベガルさんは、険しい顔つきで強い口調で言った。僕達は、頷く。

 やっぱりテイマーって、危険な人物だと思われているんだ。きっと二人は、マークされる。

 テイマーが起こした事件として、2例目になるのかな?

 そうなると、今回も僕達は係わった事になる。僕達もマークされたらどうしよう。


 「あ、そうでした、ルイユさんでしたか。あなたの父親の名は何といいます?」


 イラーノが話そうとしないからルイユに聞いたんだろうけど、彼女は名前なんて知らない! ど、どうしよう。


 「ドドイさんではないでは、いけないのでしょうか?」


 ルイユは、そう返した。


 「嘘は言ってないよ」


 僕もそうアベガルさんに言った。

 アベガルさんは、軽くため息をつくと頷く。


 「まあ、いいでしょう。どうしてもとなったらお聞きします」


 「はい」


 ルイユは頷いた。


 「それで、モンスターをモンスターが倒したと聞いたが?」


 アベガルさんが、ルイユの事を聞き出した。

 モガードさん達が襲われた時は、二人しか知らないからいいけど、イラーノと僕が襲われた時の事はどうしよう。

 僕が後から駆け付けたとなると、色々面倒だ。それにこれ、イラーノと打ち合わせしてないから色々食い違いが出そう。

 困った……。


 「あぁ……」


 うん? え!?

 ルイユが、倒れ込んだ!


 「ちょ……どうしたの!?」


 僕が駆け寄ると、ルイユが、僕に寄りかかった。


 《大袈裟にお願いします》


 へ? 大袈裟にって何!?


 「わー! どうしよう! イラーノのお姉さんが倒れた!」


 「……あ、姉さん!」


 イラーノも調子を合わせてくれる。

 僕は、アベガルさんを見ると、うーん? って顔をしている。

 すみません。演技下手なんです……。


 「あの! 休ませて頂けませんか? 別に今じゃなくてもいいでしょう?」


 流石イラーノだ。迫真の演技!

 これには、アベガルさんも頷いた。


 「わかった。宿はとってあるのか?」


 「えっと。まだです……」


 そうだった。マドラーユさんが用意してくれた宿は解約してるんだった。仕事辞めたからそうなっているはず。


 「じゃ、すぐそこの、泉に行きな。あ、三人一緒でも大丈夫か?」


 僕達は、頷く。


 「立てる?」


 イラーノが聞くとルイユは頷くも、アベガルさんが抱き上げた!

 これには、ルイユもギョッとしている。


 「行くぞ」


 「あ、はい」


 イラーノが返事を返して、僕達はアベガルさんの後について行った。

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