◇138◇イラーノご指名です

 ううう。体中が痛い……。

 あれから箱を全部出した後、部屋の片づけを一人でしていた。

 一段落したのが陽が落ちてから。勿論一段落したのは、実験の方で片付けは終わらなかった。


 「大丈夫?」


 「うん。イラーノも魔法ずっと使っていたけど疲れてない?」


 「俺は、魔力は沢山ある方だから大丈夫だけど。ヒールは、筋肉痛には効かないから……」


 イラーノがすまなそうに言った。

 はぁ。早く横になりたい。

 でも約一時間歩かなくては、休めない。

 青い鳥について僕は、着いて早々に横になりそのまま寝てしまった。



 泊まった部屋は、窓ありの部屋だった為、太陽の陽が入り普通に目が覚めた。


 「いたぁ」


 起き上がろうとして、足をつった!

 って、何か背中も痛い。


 「大丈夫?」


 イラーノは、僕の声で目が覚めたみたい。

 僕は、うんうん頷いた。


 「連泊にして、今日ここで休んでいる?」


 「いや、大丈夫。ギルドに行って採取したの渡さないといけないし」


 「あ! そうだったね」


 僕は、うんと頷く。

 朝ごはんは青い鳥で食べ、僕達は冒険者ギルドに向かった。



 「はい。これ持ってきました」


 「あいよ。じゃ手を通して」


 カウンターに保存袋を置いて、左手を装置に通す。


 「クテュールさんね……。おぉ、これを受けた子か。いやぁ、本当に採取してくるとか思ってもみなかった」


 みなかったって。

 まあ、見えないか。実際ジーンがいなきゃ行けない場所だったし。


 「あいたたた……」


 腰にズキッと痛みが走り、腰をさする。

 僕には、あぁいう力仕事は無理だな。


 「大丈夫? クテュール」


 「うん」


 「あまり無理しない方がいいよ。山を甘くみちゃいけない。ここら辺は、奥に行かない限りモンスターはいないが、出る事もあるし」


 腰が痛いのが採取のせいだと思っているみたい。

 モンスターと言えば、ルイユの布を買いに行くの忘れてた。

 今日は、体が痛いし裁縫して過ごすかな。


 「ところでこのキノコはどうします?」


 「キノコ? あ! そうだった」


 「あのそのまま返して下さい」


 「では、5万zね」


 キノコが入った保存袋を返してもらった。


 「多くないですか?」


 「この葉は、良質だ。君は木登りが得意なのかい? これてっぺんのだよね?」


 てっぺんのなんだ……。

 あんまり凄いの持って来るとまずそうだ。

 僕は、えへへっと笑ってごまかした。


 「ありがとうございました」


 「また、宜しく頼むよ」


 僕は、軽く頭を下げる。


 「ねえ、受けなくていいの? 俺の方は決まっているし……」


 「あ、うん。体も痛いし、今日は裁縫して過ごすよ」


 「そっか。それもあったね」


 イラーノも思い出したと頷いた。

 次は、イラーノの方だ。本当に指名が来ているのか。


 「おぉ! イラーノさん! あなた凄いな。指名が来ているぞ」


 「本当に来ていた……」


 入ってすぐに声が掛かった。

 イラーノも、半信半疑だったんだ。


 「マドラーユさんから一日3万で、宿と三食付きだ」


 「え? 宿と食事も?」


 イラーノは、驚いて声を出した。

 そうだとカウンターの男性は頷く。


 「こういうのは、食事と寝床は向こうで用意するのが一般的だ」


 「そうなんだ……。でも……」


 「まあ、仮契約にすれば交渉は直接会って出来るからそうするかい?」


 「はい!」


 「あ、そうそう。継続指名だから」


 「継続?」


 「期限がないって事だ。まあ、そこら辺も会って決めたらいい」


 「はい。わかりました。ありがとうございます」


 「イラーノ凄い! よかったね」


 これでイラーノは暫くは、仕事に困らない。


 「うん。クテュールが見つけてくれたお蔭だよ」


 そう言えば、僕が見つけた仕事だったっけ?

 ただ単に錬金術が知りたかっただけだけどね。

 僕達は冒険者ギルドを後にして、マドラーユさんの家を目指す。


 「宿の事だけど、一応二人分にならないか聞いてみるよ」


 「え? 僕はジーン達と一緒に過ごすから大丈夫」


 「俺の気がすまないの!」


 まあ自分だけって思っているかもしれないけど、僕は本当にジーン達と一緒でもいいのにな。

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