◆125◆お買い物

 僕は、もらった保存袋をリュックの中にしまう。

 リリンは、何だろうと臭いを嗅いでいる。


 「穴は開けたらダメだからね」


 『わかってるわよブーブーブー


 「あ、クテュールさん」


 「はい?」


 僕が振り向くとタリューグさんが、何やら手に本を持っていた。


 「薬草ソムリエのテキストってもう購入しましたか?」


 「いえ……」


 テキストなんてあったんだ。


 「だったら一割引きでどうだね? ここら辺の薬草分布の地図付きだよ!」


 「一割!? 買います!」


 どうせいるものだし割り引いてくれるのなら買った方がいいよね?

 結構分厚い本だった。


 「毎度あり~」


 「おじゃましました」


 僕達は、商人ギルドを出て、お店に向かう。


 「うまい具合に買わされたね」


 「え? 割り引いてくれたよ」


 「うーん。どっちが安いかはわからないけど、売れないんじゃないかな?」


 「え? 薬草ソムリエってなる人少ないの?」


 「そうじゃなくて、普通は冒険者のうちに取得するんだからここじゃなくて、あっちで買うでしょう?」


 イラーノは、冒険者地区を指差し言った。

 なるほど。僕は、ちょうどよく現れたお客さんだったわけだ。まあでも、損したわけじゃないし。


 「俺、活動するならこっちの地区がいいなぁ」


 イラーノが、しみじみ言った。

 僕は納得する。こっちは、女性や子供が多い。イラーノは目立たない。それどころか、僕の方が目立つと思う。誰も振り返りはしないけどね。


 僕達は、一番近い雑貨屋に入った。

 こっちの住宅街地区には、装備品の店はないようだ。

 食品を売っているお店と雑貨屋しか見当たらない。


 「いらっしゃい」


 さすが、向こうの地区とは違い、冒険に関係ないものしか売ってない感じだ。

 外套もあった。

 値段を見ると、一万ぐらいで買える。

 防水だともう少し高いぐらいだ。


 「やっぱりこっちに売っていたね」


 「うん。全然値段違うね」


 「クテュールも買う?」


 「うーん。買うかな」


 僕達は、紺色の外套を買いリュックの上から着た。リリンは、僕が抱っこする。

 ペットはダメじゃないみたいだし、住宅街なら抱っこしていても問題ないだろう。


 「あ、兎だ!」


 「本当だ!」


 って、問題あったかも。兄弟だと思われる子供が二人ダッシュでこっちに向かって来る。


 「なでなでする!」


 「えっと。リリン。ちょっとだけ我慢してね」


 断って泣かれても困る。僕は屈んだ。


 「かわいい!」


 『ちょっとブー! 何なのこの子達はブーブー!』


 「ごめん。ちょっとだけ……」


 「大人気だね」


 どさくさに紛れて、イラーノもリリンを撫でていた。

 そう言えばジーン、どうしているだろう?

 街の外に出て見るかな。


 「もういいかな?」


 「うん。ありがとう」


 「兎さん、またね」


 僕達は、二人に手を振りまた歩き出した。


 「ねえ、街の外に出てジーンに会いたいんだけどいいかな?」


 「あ、そうだね」


 そういう事で街の外へ出た。

 出る時は、門番が門を開けてくれたので、何もチェックなしですんなりと外へと出れた。

 出てすぐにジーンを呼んで変に思われても困るので、森まで足を運ぶ。


 「ジーン」


 呼ぶと直ぐにジーンは駆け寄って来た。


 「ごめん。待たせたね」


 『うむ。腹ごしらえをしていた』


 「何を食べてたの?」


 『キノコだ』


 本当に何でも食べるんだ。

 そうだ。ちょうどいいや。テキストもあるし、ジーンが食べる物を把握しよう。


 「ねえ、その場所って近い?」


 『うむ。こっちだ』


 「もしかして、魔力を帯びたキノコだったりしてね」


 イラーノがそう言った。

 かもしれない。だったらジーンには悪いけど、採取させてもらいます。

 僕達は、急ぐわけでもないので歩いてジーンの後を着いて行く。


 『これだ』


 真っ黒いキノコだ!

 これ見るからに毒キノコじゃない?

 僕は、買ったばかりのテキストを開く。

 分厚いけど、その分色々と書いてある。辞典の様な欄もあってキノコを探すとあった。


 魔毒ダケ。魔力が大量に含まれた土に繁殖。キノコは、毒なので食べれられないが、錬金術で魔力を抜く事が出来るので売れる事もあるが、採取するなら魔毒ダケが生えている土の方だろう。

 土は、調合で魔力を抽出する事が出来、土も再利用できる。


 と、書いてあった。

 ジーンは、毒を食べたのか……。平気なんだ。


 「うわぁ。ジーンって凄いね」


 イラーノも覗き込んで読んでいたみたいで、感心している。

 それよりもこの錬金術が知りたいな。

 後で調べてみよう。


 そういう事で、僕は土を採取。一応キノコも採取するも貰った保存袋には入れる気にはなれず、また普通に袋に入れた。

 まあ、売れなかったらジーンのごはんになるんだしいいよね。

 僕の横でジーンがごくんと唾を飲み込んだ音が聞こえた。

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