◆059◆救出に来た三人

 「何立ち止まってるんだよ! 歩け!」


 「僕の友達だったんだ……」


 「は? 何言ってるんだお前」


 赤茶髪の男がそう返して来た。

 エジンと同じ反応……。彼も僕を殺そうとした!


 「もう! 何でほっといてくれないんだ!」


 「ぐわぁ!」


 僕は鞄からナイフを出し、振り回した! それが、身構えていなかった藍色の髪の腕をかすめる。


 「てめぇ!」


 「う……」


 藍色の髪の男に腹を蹴られ、僕は吹き飛ばされた!

 そして、二人して倒れた僕を蹴ってきた!


 「お前は、これから俺達の奴隷になるんだよ!」


 「モンスターを殺されて、泣いていたら仕事になんないだろうが!」


 どういう事? 奴隷? 仕事?

 殺すつもりはないみただけど、変な仕事させる気?


 「無駄な抵抗をしたらこうなるんだ! 覚えておけよ!」


 「おら、立てよ」


 グイッと腕を掴まれて、無理やり引っ張られる! 体中に激痛が走った!


 「痛い! 待って!」


 「つべこべ言わな……ぐわぁ!」


 赤茶髪の男がいきなり倒れ込んだ!

 僕を引っ張っていた藍色の髪の男が、ぐいっと僕を引っ張り辺りを見渡す。

 倒れた男を見ると、背中に矢が突き刺さっている!

 これってもしかして!!


 「クテュールを離せ!」


 森から現れたのは、ジェスロさん達だった!

 弓を構え叫んだのは、ギルドサブマスターのダイドさんだ! 助けに来てくれた!

 ギルドマスターのロドリゴさんもいる。報告じゃなくて二人を呼びに行ったの?


 「あきらめろ!」


 ロドリゴさんが叫ぶ。

 だけど僕を引きずり、藍色の髪の男は移動する。

 ダイドさんは、弓を構えながらジッと様子を伺っている。僕が盾になっているから撃てないんだと思う。


 ポトン。何かを落としたと思ったら、藍色の髪の男はそれを蹴った!

 丸いそれは、シューっと音を立てて白い煙を吐きながら転がる。


 「しまった!」


 そんな声が向こうから聞こえてくる。

 もう辺りは真っ白になって見えなくなっていた!

 僕は、突き飛ばされ地面に転がった!


 「大丈夫か?」


 ジェスロさんに抱き起された僕は、はいと頷く。

 辺りがクリアになっていく。見れば、中が真っ白になっている袋が地面にあった。きっと、あの丸い物を入れて煙を止めたんだ。

 いや、そんな分析をしてい場合じゃなかった!


 倒れている赤茶髪の男の側に立つ、ロドリゴさんとダイドさんを横目に僕は、倒れたジーンに駆け寄った。


 「ジーン! しっかりして!」


 ジーンは、ぴくりとも動かない。


 「ジーン?」


 恐る恐る手を伸ばしジーンに触れると暖かい。心臓もまだ動いている! 生きている!


 「お願いジーンを助けて!」


 懇願して僕は三人に叫んだ!

 でも、ロドリゴさんは首を横に振った。


 「あきらめろ」


 そして、無情な言葉をロドリゴさんは言ったのだった――。

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