第57話:連れて行きます。



「・・・・・・・・・・・・無理だ」

 俯いたまま、レディルはそう答えた。

 想像しただけでゾッとした。

 ここではない異世界で。

 ルーシェのいない世界で。

「生きられるはずがない」

 誰のために。

 何のために頑張れるというのか。

 愛那の立場になって考えて、ようやくレディルは自分の罪の重さを知る。

 勝手に期待して、想像と違ったからと期待外れだとも言った。

(何て身勝手で、傲慢な・・・・・・)

「・・・・・・」

 項垂れるレディルから、国王へと向き直るライツ。

「マナは、ルザハーツ領へ連れて行きます」 

「・・・・・・ライツ」

「俺も、そう長くこちらにはいられない。戻って、一匹でも多くの魔物を討伐しなくてはならない」

 それを聞いた国王の顔に、期待のようなものが浮かぶ。

 しかしそれを撥ね除ける言葉をライツが続けた。

「だからといって、救世主としての彼女に期待はしないで下さい。このサージェルタ王国で何が起こっているのか、全てを話した上で、どうするかは彼女が決めることです」

「そうか・・・・・・」

 沈んだ国王の声。

「影に報告はさせます。それと、異世界召喚が実施されたと知れば、黙っていない者達も出て来るでしょう。彼女の居場所について、絶対に知られることのないようにして下さい。もし、これ以上そちらの不手際で彼女を傷つけるようなことがあれば・・・・・・」

 それ以上は語らなかった。

 口を閉じたライツは背を向けハリアスと共に部屋を去って行く。

 それを見送った国王は、ライツに見放される未来を想像し、緩く首を横に振った。



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