第8話:異世界に来た少女



 里上さとうえ愛那まなは17歳の高校生だ。

 両親は離婚しており、母方の祖父母の家で生活している。

 この日、人通りの少ない学校の帰り道、愛那の足取りは軽かった。

 英語の抜き打ちテストの結果も上々だったし、今日は毎週楽しみにしているテレビ番組がある日なのだ。

(ふふっ。そう。桂木様~のお声は、私~の癒やし~なの~♪)

 ドン!!

 上機嫌で青信号の横断歩道を渡ろうとしていた愛那が足を止める。

 突然地面が大きく揺れ始め、恐怖で体が硬直する。

(やだ、地震!?)

 持っていた鞄を落とし、すぐそばにある道路標識へとしがみつく。

 揺れだけでなく強い風が吹き始めると、愛那の恐怖が倍増した。

「やだやだやだ! 恐い! 何? 何なの!?」

 道路標識に必死にすがりながら目をつむっていた愛那は、突如すがっていたはずのものが消えたことに驚いて目を開けた。

「え?」

 ありえない光景に愛那は腰を落とすように座り込んだ。

 白い建物の中。

 同じ服装のたくさんの人間がまわりを取り囲んでいる。

(・・・・・・ここ、どこ?)



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