第17話 コスモス
コスモスと名乗った少女は、どこからともなくソファーを出現させて、俺達に座れと視線でしめした。
隣にいたキャロが目を瞬かせながら、それに従う。
敵意というもには感じられなかったから、どこか安心してしまうのかもしれない。
「あなた一体だれなの? というかここ、どこなの? 私達、洞窟にいたはずでしょう?」
ゆっくりと周囲の様子を確かめながら、キャロが問いかける。
着席を促すようにソファーに近づくコスモス。
「まあまあ、長くなるから、少しおちつくいいよ。色々あったんだろう事は顔色を見れば分かる。体を休めなさい」
動揺するキャロを落ち着けるように、彼女の肩に手を置く。
「キャロ、とりあえず話を聞こうぜ。こうなった以上は元の場所にはそうそう戻れないだろうし」
「そう、ね」
同意したキャロンは、「でも」とクオンの方を見る。
彼女は、離れたところで所在なさげに立ちつくしていた。
「あの人はどうか分からないけど」
視線を向けられた彼女は、不安げに視線を揺らす。
「私は……」
次々と急転する状況についていけていないのか、クオンはどう行動するべきか決めかねているようだ。
そんなこちらを、コスモスがじっと見つめる。
「ふむ、君達は敵対する関係の者達だったのか」
俺達の関係性を推測したという風のコスモスは、クオンの方を向いてなだめる様な声音で話しかけた。
「へたな事は考えない方が良いよ。ここは貴重な知恵の箱庭。君らが目指している理想への足掛かりとなる知識も、ここにあるやもしれないからね」
その言葉を聞いて、クオンが顔色を変える。
「っ!! あなたは、どこまで我々クレストリアの計画を」
足早にコスモスにちかづいていく。
が、コスモスはその動きを手で制した。
「あれで秘匿してるつもり? 人々を精神体にして、この世界から脱出させる、なんて穴のある理論をほざいてる程度だから、笑っちゃうよ」
小さな少女が浮かべたのは、呆れるような笑みだ。
そんな態度で来られたクオンは肩を怒らせてさらに前に進むが、コスモスに腕を引っ張られて態勢を崩してしまう。
そのまま腹をおされて、うまく近くのソファーに座らされてしまった。
「なっ! ……いいでしょう。貴方が何者なのかしっかり話をきかせてもらおうではありませんか」
ケンカ腰ではあるけど、一応話を聞く事にはなったようだ。
………やっぱりただ者じゃなさそうだな。
こんなところにいるのだから運動方面は鈍そうに思えたが、そうでもないらしい。
クオンが座ったのを見て、俺もソファーへ腰を降ろす。
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