第8話 レストリア
普段ならキャロは、あんまり大きな事に首をつっこまない。
危険な事は極力やりたがらないし、俺にもやらせたがらない。
目の前で人が襲われてたら、そういうわけでもないけど。
ともかく、ちょっと不自然だったのだ。
最終的に依頼を受けるにしても、もっと反論したり、意見をいったりする事が多いのだが。
会議室を出た後、俺はキャロに聞いてみた。
「なあ、キャロ。今回の仕事って……」
「何か、嫌な予感がするのよね」
「嫌な予感」
しかし、離してみるとキャロもよく分かっていないようだ。
彼女は、何事かを考えながら言葉を紡いでいく。
「レストリアのある国の方から、なんだか最近嫌な予感がするのよ。毎日なんでだろうって思いながらもやもやしていたから、確かめたいと思ったの。オルタは、迷惑だった?」
けれど、彼女なりの理由があるようだ。
嫌な予感の内容については彼女自身よく分かっていないようだけど。
「キャロが行くなら、俺も行くよ。一人じゃきついだろ?」
「ん、ありがと。オルタってたまに優しいわよね」
「そんな事ねぇって。って、それ褒めてないよな」
「あたりまえでしょ」
それにしても他国での任務か。
レストリアは、どんな国だったかな。
帰りに本でも借りて、ちょっと勉強しとくか。
その日の夜。
調べ物をしてみたが、分かった事は少ない。
レストリアという国は、どうにも内情がよく分からない国だった。
閉鎖的な国なので、他の国とあまり交流していないという事情があるからだ。
そのため、今何が起こっていて、どういう状態になっているかなどの情報が一切はいってこない。
それもそのはず。
あの国は、自分以外の国には積極的に敵対して戦争をふっかけているからだ。
そいうわけで、
俺達は名のある情報屋の伝手で入手した偽造パスポートを使って不正に入国する事になった。
レストリア内
準備を済ませた俺達は、カルドネ本部長が用意してくれた書類を持って、レストリアへ赴いた。
「なあ、あんなんで本当に大丈夫なのか」
「大丈夫じゃないわよ。だから今日一日で何とか情報を掴んでさっさと出ていかなくちゃ」
「猶予はたったの一日だけか。ハードな仕事になりそうだな」
レストリアの国に入国した人間は、全て厳重にチェックされているらしい。
俺達の素性がばれるのは確実なので、潜入は一日だけとリミットが決められていたのだった。
「いい? くれぐれも目立つような行動はしないでよね、オルタ。分かった?」
「分かってるよ。キャロは心配症だなぁ」
「私は真剣に言ってるのよ! 本当に分かってるんでしょうね」
むっとした表情で大声をあげるキャロだが、ついさっきの言葉を自分で思い出してほしい。
「キャロンの方が騒がしいだろ。注目されたらどうすんだよ」
「――っ!」
今度は大声を出されなかったが、すごい勢いでにらみ付けられた。
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