3-4

 クリスマスはまだまだ続く。


「ママ!」


 わたしは目覚めた。ママはいない。粗末なベッド。目の前には鉄格子。その向こうに立っているのは……


「天使長」わたしは言った。「わたしはどうしてここに」


「天使に運ばせた」天使長は言った。「言っただろう。われわれ天使も何もしていないわけではない」


 わたしは自分の体を見下ろした。制服ではなく、パジャマに着替えさせられていた。


「誰が着替えを」


「気にする必要はない。わたしはお前の事情を知っている」


 ママの他にも知っている者がいた……


「ここはいったいどこです」


「牢獄だ。貴様のような不信心者を閉じ込めるためのな」


「他の二人……いや、三人はどうしました」


「同じように牢に閉じ込めている。じきに、他の天使たちの尋問がはじまるだろう。他に関係者がいれば芋づる式に引き上げるつもりだ」


「そのあとはどうします? 彼女らはあまり聞き分けがいいようには思えませんが」


「余計な心配をせずともよい」天使長は言った。「ここを出ていく頃にはいくらか聞き分けがよくなっているはずだ。二人とも自らの過ちはすっきり忘れ、学生の本分を思い出すことだろう」


 わたしはその言葉からすべてを察した。


「アグネスの前にいなくなった学生がいましたね」わたしは唾を飲んだ。「彼女も天使長の特別更生プログラムを受けたんですか?」


「察しがいいな」


 天使長が鉄格子に歩み寄って来た。


「わたしも彼女らのようになるんですか」


 忘れたいのか忘れたくないのか自分でもわからない。


「どうかな」天使長の指が鉄格子に設けられたパネルを叩く。錠が外れる音がした。「安心しろ。お前をどうこうしようというつもりはない。少し脅かしただけだ」


 天使長が外に出るよう促す。わたしはその通りにした。まだ足がふらつく。思わず鉄格子に手を握った。


「どういうことか説明してもらう必要がありますね」


「いいだろう」天使長は背中を向けた。「ついてこい」


「どこへ行くんです」


「キャベツ畑に案内しよう」

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