朗読のための~宇都宮釣り天井と本多正純の物語~

花より????

第1話:宇都宮釣り天井:前編(本多正純様失脚!)

 古い物はすたれ行く・・そんな時代だが、我が家伝来のお家芸は「薩摩琵琶」!ご存知なくても構わぬが‥これでわが娘もふくめれば「三代」続く。どうだ~~と言いたいけれど、この芸で食べてるわけではない。食べられるわけもない。

 世間から見れば「敷居の高い趣味・道楽」。これでも明治43年生まれの亡き父やその友人は、薩摩琵琶全盛期を体験した師匠に師事していた。父の話や私の師匠の話は、また後ほどにして、私こと花翠は、ひょんな縁から、東京のどまん中から北関東の栃木県にお嫁入り。あ~~~目出たやな~目出たいめでたい。

 そういうはずが「友達百人できるかな・・」どころか3年たってもゼロ。そこで自から動くが「薩摩琵琶の極意」というわけで、お金かからぬ「宇都宮市の講座」に参加して、そこで色々あったが友人作り。その道具というか手段というか「薩摩琵琶習得免許奥伝」が大活躍。

 それは良いけれど、「薩摩琵琶はどこの国の楽器ですか?」と、可愛いお顔とあどけない声で質問される大学生もおられる地域。友人第1号の友人の紹介で「お国のテーマの琵琶曲」作成となり、その第一作目は「秀吉の宇都宮仕置き」舞台は「飛山城」。でも栃木県でも、宇都宮市でも、あまり知られていない場所。で、第二作目は誰でもが知るものをどうか・・・というわけで「宇都宮釣り天井」をどうかでした。

 有名な話で観光客の方からも「釣り天井はどこですか?」という質問もあるらしい。ですが「実物はありません」。だから「伝説」。どうせなら「模型」でも作りお客様に見せてあげたらとも思いますが、そういう洒落は、学問的には無理のようで、お話しとしてしか再現てしできません。あしからず‥の世界です。

 それに「民話伝説」の形で「薩摩琵琶らしいか?」と言えば「琵琶らしくありません」。でも民話や朗読の友人には興味ある話でもあるようです。作るからには「薩摩琵琶らしくしたい」というのは作詞者としてはあたりまえ。でも薩摩琵琶は「琵琶の演奏と語り」で「独特」です。というわけで両者混合の作品となりました。


さてさて「御立合い」聞いてよし、読んでよしとなりますか「始まり始まり」


(琵琶伴奏少しありて後朗読)

「宇都宮釣り天井と本多正純の物語」


時は、1622年。この年は家康の七回忌にあたり、将軍秀忠は日光社参をします。行きは何事もなく、秀忠は宇都宮城に泊まり、そして帰り道。今市まで来た時事件は起こります。なんと、秀忠は宇都宮城を通過して、そのまま江戸に帰ってしまいます。ここ、宇都宮城での物語り。

(薩摩琵琶弾き語り)

鬼怒の流れのせせらぎや 男体おろしの風黒く 諸行無常 栄枯盛衰と 囁く如く吹きぬける。元和八年夏卯月。将軍秀忠日光東照宮に社参すと 聞きし本多正純 誠をこめて お成り御殿造営す。往路将軍泊まり来て 無事御出立。再度お泊り待ちて 待てど 待てど お成りなく はや夏の夜の月宿る 城内照らす篝火。おりしもあれや聞こゆる蹄の音

[朗読]

「将軍家、俄かに江戸に向かわれて候う」(注:伝令の武士のことば)

(琵琶語り)

忽ち興るどよめき騒ぐ声。正純立ち上がり

[朗読]

「うろたえな!将軍秀忠様のお考え、静まれ!しずまれ!追って直ぐにご使者が参ろう。」

(琵琶語り)

事の重大さ、正純なれば良く知るところ 胸に押さえて 静かに目を閉じる。ややありて 独り静かに 清明台に 登り遥か彼方の江戸見れば 雲か霞か涙の露か くもりて 宇都宮城照らす月影のみ。 


~つづく~

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