私のこと大事にしてくれてるよ

「おりょ?」


ある日の夜。パパと一緒にお風呂に入ってさっぱりしてパンツを穿こうとしたら、すっごくゆるゆるなのに気付いた。


こりゃもうダメですな。


先に服着て部屋に戻ってたパパの後を追って、


「パパ~、このパンツ、もうヘロヘロだよ~」


って言ったら、その間にもパンツがずり下がっちゃってもうヒドイことに。


「ありゃ、なるほどもうダメだな。じゃあこっちのを穿いといて」


そう言ってパパは引出しからまだちゃんとしたパンツを出して渡してくれた。


パパにこんな格好見られても私は平気。だってパパだから。他の人には見せられないけど、パパだったら大丈夫。


だけどアキちゃんは、パパが家事とか苦手で家が綺麗に片付いてないこととか晩ごはんのおかずはいっつもスーパーの惣菜とか冷凍食品なのを「大人なのにおかしい! ダメ人間じゃん!」ってバカにしてきたんだ。


「どうしてそんなこと言うの? 私のパパはすっごく私のこと大事にしてくれてるよ!」


って言い返したら、


「大事にしてるんなら家のこともちゃんとするはずだよね? ぜんぜんちゃんとしてないじゃん!」


とか……


でも私、知ってるよ。アキちゃんのパパとママ、今、別居してるんだってね? それなのに私のパパのことそんな風に言うのおかしいよ。


けど私は、そのことは言わなかった。なのにアキちゃんはもっと言ってくる。


だから言っちゃったんだ。


「アキちゃんなんてキライ! もう顔も見たくない!!」


ってさ。


その時、先生が来て、「どうしたの?」って言ってくれて、クラスの他の子達がアキちゃんの言ってたこととかも説明してくれて、そしたら先生が、


山梔子くちなしさん。それぞれ家庭の事情というものがあるんですから、そういう言い方はよくないですよ。先生は甘伏あまふしさんのお父さんとも何度もお話しさせていただいてますけど、甘伏さんのことをとても大切にしてらっしゃいます。家事や料理が苦手っていう人はいるんです。それと、お子さんを大切にしてるかどうかっていうのは必ずしも関係しないんです」


って言ってくれた。アキちゃんはむくれた顔して黙ってたけど、先生はアキちゃんの家のことも知ってるから、あまりきつくは言わなかった。あとで、私のことも学年室に呼んで、


「山梔子さんのご家庭も今、いろいろ事情があるから、ちょっとしんどいんだと思う。先生もこれから気を付けて山梔子さんのことを見るから、甘伏さんもあまり気にしないであげてくださいね」


って。


私はママが死んじゃってもパパがいるから平気だよ。あんなこと他の子に言いたいとか思わないよ。なのにアキちゃんとこは、そうじゃないんだね……


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